【インタビュー】サバシスターが見せる、瑞々しく泳ぎ続けるためのオープンマインドな精神性

【インタビュー】サバシスターが見せる、瑞々しく泳ぎ続けるためのオープンマインドな精神性

2022年3月に爆誕した3人組ギターロック・バンド、サバシスター。フロントマン・なち(Vo. Gt.)が手掛ける楽曲は耳馴染みの良いギター・ポップがベースとなり、青春時代のときめきと焦燥が同居する等身大の歌詞を高らかに歌い上げ、そんなヴォーカルを追いかけるかの如くるみなす(Gt. Cho.)とごうけ(Dr. Cho.)の気迫漲る演奏が乗り合わせてく。

〈可愛かった君とあのジャージは知らん誰か大事にしろ 嘘つきはどっかで死ぬから君は特に気をつけろ!〉(「ジャージ」)

ネット掲示板「ジモティー」で知り合った彼女たちは未だ結成から1年にも満たない「新米」バンド。しかし、TikTokで楽曲がバズったことを機に10代のフォロワーが比重を占めるようになったことや、SUMMER SONIC2022の新人発掘枠『出れんの!?サマソニ!?』での出場権獲得、04 Limited Sazabysとのツーマン企画…と撒いた種が順調に芽を生やし、瞬く間にチケット争奪戦の人気バンドへと急成長を遂げた。

そんな新鮮で今最も勢いのある気鋭のガールズバンドへ、昨年12月に公開した『musitTV Vol.4』の公開を前にメールインタビューを実施。既に今年の春には3/8(サバの日)に合わせて小林私、健やかなる子らを招いた自主企画や大型フェスへの出演も決まっている彼女たちだが、改めてサバシスターが描く楽曲が纏う親しみやすさの所以や音楽的なバックグラウンド、またメンバー個人の恋愛観まで、その瑞々しく泳ぎ続けるオープンマインドな精神性とフィジカル面の強さに迫った。

取材/文=星野
写真=井上恵美梨

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1. バンドの結成時期と経緯を教えてください。

なち(Vo. Gt.):去年の9月頃ですかね? 専門学校に通うために上京してきたのですが、ある時何もかも嫌になってしまった時があったんですね。その時にバンドでもやるか〜と思ってネットでメンバー募集のサイトを見てたらごうけちゃんと出会いました。自分の歌ってる動画を送ったけど、好みじゃなかったら全然いいので!とりあえず聴いてみてください〜!って感じでした。笑 そしたら次の日会いましょうってなって、バンドやりましょうってなって、慌てて曲を作った気がします。笑 ちゃんとメンバーが揃ってしっかりやり始めたのは2022年が始まってからで、初ライブはその年の3月でした。

2. サバシスターの楽曲はどこか懐かしいメロディが特徴的で、その親しみやすさがサバシスターの人気を不動のものにしたように感じます。曲作りにおいて心掛けていること、あるいは全体に共通するコンセプトのようなものがあれば教えてください。

なち:私はコードや小節などの音楽的な知識がほぼなくて、今でも何も分からないまま作っています。笑 自分の中でのコンセプトは特にないのですが、聴いてくれた人の感想を聞いていると、今まで自分の側にあった音楽が自然と自分の音楽にも現れている部分はあるのかなぁと思います。最近はライブハウスで新しい音楽に出会った時に、こういうのやってみたい!!と思うようになってきて自分にも表現者側の視点があるのだな!と感じました。笑

3. 2.の質問に付随しますが、作詞面では〈思い立ったらすぐに髪を切れるような そんな僕でいれることが今はとても大切さ〉(アイリー)、〈君がそばにいてくれなくても ギターは弾けるもの〉(生活)など、「どんな風が吹こうとも常に自然体でいること」を表した等身大の歌詞が特徴的です。実際にこれらはご自身の性格や心情を反映させたものなのでしょうか?

なち:そうですね。特別意識している訳ではないですが、今の自分を好きでいれるように、なるべく肯定しようとしているだけかもしれないです。笑 前向きと言われたら聞こえが良いですが、ただの言い訳とも言えますね!!

4. サバシスターはコロナ禍以降に生まれたバンドですが、既にサーキットフェスでは入場規制も経験するなどライブハウス・バンドとして若い世代を中心に注目を集めています。そういったオープンマインドな活動展開はリスナーとの距離感を意識したものなのでしょうか? また、なちさんにとって「ライブハウス」とはどのような場所だと考えますか?

なち:あえてオープンマインドで!というよりは、自分にはそれしかできないからできることを一生懸命やってます!という感じです。笑 私にとってライブハウスは、バンドを観に行く場所です。お酒を飲んだり踊ったり、ライブハウスの使われ方は様々あると思うけど、やっぱり私はバンドが大好きで、バンドが一番輝いて見える場所はライブハウスだと思うので!

「ライブを演る側」になった実感はまだあんまりなくて、いつまでもライブハウスはライブを見に行く場所だなぁと思います! 当たり前か! 長々と喋りましたが当たりすぎて笑えてきました! ライブハウスはライブを観るハウス!

5. 皆さんのバックグラウンド(楽器を始めたきっかけや過去に所属していたバンドなど)を教えてください。

なち:中2の時にHi-STANDARDにハマって、そこからバンドを聴き始めました。そのタイミングでギターも始めて、高2になってどうしてもバンドがやりたくて、仲間を集めてコピーバンドを少しだけやってました。文化祭か地元の収穫祭みたいなのしか出てないですが。笑

ごうけ(Dr. Cho.):3歳からピアノやヴァイオリンをやっており、クラシックをしていてバンドを聴いて育ってはなかったのですが、小学生の時父とゲーセンに行くのが好きで、そこで太鼓の達人をよくやっていて、「おに」がでたので、ドラムできるかもと思いバンドを聴き始めてBUMP OF CHICKINが好きになり、よりドラムやりたい!となって中学生の時に親にお願いして習わせてもらったのがきっかけです。

るみなす(Gt. Cho.):アニメ『けいおん!』に影響されエレキギターを始めました。あずにゃんというキャラクターが大好きで、初めて持ったギターはあずにゃんが使用していたムスタングというギターでした!

6. サバシスターに加入しようと思った、またはメンバーを確定した一番の決め手は?

ごうけ:私がガールズバンドをやりたくて始めたバンドなので、なちをヴォーカルにしようと思った決め手は、「ジモティー」でメンバー募集をしていてその時になちが応募してくれて、送ってくれた動画が高校の文化祭だかでなちがコピーバンドで歌っている動画で、その時曲は作ったことないと言われたのですが、声がすごく良いなと思いすぐに会おうとなって、話した感じも合いそうだなと思いヴォーカルに決めました。

るみなす:サバシスター創設者のごうけちゃんから電話が来て、直感で加入を決めました。笑 後日改めてデモを聴いたりなちに会って、直感は間違いではなかったと再確認しました!

7. 皆さんそれぞれの音楽的な部分におけるルーツを教えてください。また、それらの音楽は自身のプレイヤーとしてのスタイルにどのような影響を与えていると感じますか?

なち:バンドは色々好きですが、ハイスタ(Hi-STANDARD)やTheピーズなどをよく聴きます。良い意味で単純で分かりやすく、カッコよくて楽しい音楽が大好きです。私の曲は、懐かしいメロディーと言われることがたまにありますが自分ではそんな意識はなくて、でも普段聴く音楽が自分とは違う世代のものが多いのでそういうものが自然と自分の曲にも現れているのかなぁと思います。

ごうけ:ルーツとかあんまり分からないのですが、ずっと好きなのはamazarashiで、amazarashiのライブってすごい心を動かされるのでそういう演奏はしたいなと思っています。


るみなす:私のルーツはKEYTALKの小野武正さんです。フレーズやプレイスタイル等、沢山感銘を受けています! 音に表情が見えるような演奏がとっても好きで、ライブの前は楽曲を聴いて自分を奮い立たせています!

8. 今年はバンド結成の年にして同時に『出れんの!?サマソニ!?』出場、04 limited Sazabysとの2マン、1st EP『鯖の壱』リリースツアーではソールドアウトも経験…と様々な場所で大きな飛躍を遂げた年でした。3月の結成からこれまでの活動を振り返ってみて、特に印象深かった出来事を教えてください。

なち:うーん、ここまで何も分からず駆け抜けてきた感が強いので思い返すと色々ありますね。笑 強いて言えば、仙台でライブした時に泊まったごうけ宅が快適すぎて引きました。

ごうけ:3月からずっと印象深いんですけど、やっぱりサマソニのステージは今でも鮮明に覚えています。まさかこんな大舞台に出れるとは…って感じで本番まで実感はあまりなかったんですけど、音が始まったら続々と人が集まってきて、ステージから見える景色が本当に今まで見たことのない景色でまた立ちたいなと思ったし、もっと頑張らなきゃなと思えるライブでした。

るみなす:印象深かったことはやはりサマソニの舞台です。色々な出来事があった中で皮切りとなったのがサマソニでした。私たちにとって初めてのフェス、大舞台で、今後の未来や頑張るぞって気持ちがどんどん湧きました!

9. アーティスト写真やステージ衣装では、ビッグシルエットやパンツスタイル、曲名にもある「ジャージ」などカジュアルな服装が共通していますが、これらはやはりご自身の楽曲を投影している等意識的なものなのでしょうか?また、「ファッション」と「音楽」にはどのような関係があると思いますか?

なち:私は服大好きで、週2ペースで古着屋に通ってますね! 自分らしさを表現する1つがファッションだと思います。音楽も同じです。ステージ衣装については、私は横山健さんの大ファンなので、Tシャツに短パン!みたいなラフな格好で爆イケプレイをする人に憧れを持ってます。爆イケプレイはできないのでラフな格好だけ意識してます!笑

ごうけ:服は好きですが特に何も意識はしていないです。ライブではただドラムを叩きやすい格好で短パンにTシャツとかです。笑 あとはルーズソックス、レッグウォーマーとかアームウォーマーとかつけてます! 叩く時には外すのでSEの時だけですが。笑

るみなす:ファッション! なんとなく好きな系統はありますが、それと音楽が直結しているかは分かりません…。笑 でも普段は暗い色の服装が多いのですがサバシスターの時は明るい色のお洋服が着たくなります!

10. 今年8月には1st demoEP『鯖ノ壱』をリリースし、ヴィレッジヴァンガードや各地のCDショップでもプッシュされソールドアウトが相次ぎました。この作品を一言で表すとしたらどのように説明しますか?

なち:『鯖ノ壱』というタイトルに全て込められていると思います。サバシスターの第一歩目、今の自分たちを詰め込んだ1枚です!

ごうけ:壱!って感じです。私たちが今できる最大限が詰まっています。

るみなす:ズバリ「初漁」です! 初めて皆様に音源を届けられたので! 実はサバはバンド名の由来ではないのですが、店舗でもお魚にまつわる言葉を使ってくださってとっても嬉しいです。笑

11. 楽曲の中では「何が起きても後ろ髪を引かれない」どちらかというと切り替え上手な主人公の像が顕著ですが、実際に皆さんそれぞれの恋愛観(追いかけたい、惚れっぽい、迷わずアタックする…など)の傾向を教えてください。

なち:恋愛観! むずい! うーーん、空手で言えば基本待ち拳で、カウンターを狙うといった所でしょうか。

ごうけ:惚れやすいですが奥手で自分に自信はないので自分からはアタックしないです。熱しやすく冷めやすいタイプではあるので恋愛は難しいなと思います…。

るみなす:インタビューで恋愛観を聞かれるのは初めてで自分のことなのになかなか思いつきませんでした。笑 自分から行動することはほぼないですね。自分のことが好きな人が好きという典型的なタイプだと思います。笑 恥ずかしい質問だなぁこれ…。

12. 『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまでの音楽人生で特に忘れられないライブ、または共演者を当時のエピソードを添えて教えてください。ライブの場合はプレイヤーとしてでも、観客としてでも構いません。

なち:中3の時に観に行ったHi-STANDARDのライブです! 『THE GIFT』というアルバムのツアーで、当時は中学生でファミリー席にしか入れなかったので一番後ろの椅子に座って、タオルを握りしめて、涙を流しました。

ごうけ:amazarashi、Age Factoryです! 本当にかっこいいです。

るみなす:9/29に下北沢SHELTERで開催したサバシスターのツアー・ファイナルは忘れられないライブになりました! ここにいる皆が私たちのことを知っているんだってだけで泣きそうでした。

13. 運営母体の『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら広く展開していく音楽メディアですが、あなたが音楽以外で今最もハマっているカルチャー(または趣味)はなんですか?

なち:グラフィックデザインの専門学校に通っているので、デザインの世界には興味があります。1人で美術館に行くこともたまにありますね。あと、服は結構ずっと好きです! 無限に欲しくて困ります。

ごうけ:多趣味なのですが、最近だとレッグウォーマー作りです! いつもライブでルーズソックス風レッグウォーマーを履いているのですが、私の手作りで十数個持っていて、その日のライブの衣装に合わせて履いています。あとは珈琲を挽くこととか、ガチャガチャとか、アニオタなのでアニメを見ること(ヒロアカが大好きです!)、1人旅行とか、音楽も勿論好きなのでギター弾き語りも趣味でやっています。 

るみなす:ゲームとかアニメとか好きなものは沢山あるのですが、今はお酒です! 音楽に合うお酒、逆にお酒に合う音楽とかやってみたいです。やらせてください!笑(編注:るみなすは今回、『musitTV』本編後に流れるアフタートークへも出演! MC2人とほのぼのとした空気感の中で日本酒レビューに挑戦しています。)

14. 最後に、今後の活動展開について教えてください。

ごうけ:今後はまだ未定な部分が多いのですが、今と変わらず沢山ライブをしたいです! 2023年の春にはリリースや遠征、企画などしたいなと思っております! 各SNSをチェックして見てください!

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RELEASE

サバシスター『鯖ノ壱』

リリース:2022/09/14
レーベル:Self Released

トラックリスト:
01. ジャージ
02. アイリー
03. 生活
04. ナイスなガール

*配信リンク:https://linkco.re/NYAgffUS

サバシスター

〈L→R〉
るみなす(Gt. Cho.)
なち(Vo. Gt.)
ごうけ(Dr.Cho.)

Twitter:@saba_sister
information:https://lit.link/sabasister

musit編集部