【インタビュー】Ringo Deathstarrが2年ぶりの来日で明かしたそれぞれの現在地

【インタビュー】Ringo Deathstarrが2年ぶりの来日で明かしたそれぞれの現在地

2022年11月、アメリカはオースティンの3人組、Ringo Deathstarrが2年以上ぶりの来日を果たした。ビザの発給が間に合わず、予定されていた名古屋と大阪の公演は無念の中止となったものの、東京ではcruyff in the bedroomやA Place To Bury Strangersらと共演(特にAPTBSとのツーマンは世界初だったとか)。さらには北海道へと渡り、si,ireneと共に旭川〜札幌を巡業。ツアーは大盛況のうちに幕を下ろした。

気が付けば、新境地を開いたアルバム『Ringo Deathstarr』のリリースも2020年のパンデミック直前、既に遥か昔のようにも感じる。というわけで、バンドの現在地を知るべくエリオット、ダニエル、アレックスのメンバー全員にインタビューを実施。それぞれの課外活動やプライベートな話まで、ざっくばらんに語ってくれた。<musit編集部>

インタビュー/翻訳=鈴木レイヤ
写真=井上恵美梨
編集=對馬拓

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「この中から好きなだけ曲を選んで、好きなようにコーラスを乗せて」って曲が送られてきた

──なんと、今回で11度目の来日です。前回の来日から2年、世界では様々なことが起こっていますが、日本の印象は変わりないですか?

ダニエル・コボーン(Dr.):特に変化はないかな。(今回の来日では)ライブ自体はまだ今日(11月10日)が1回目だから、これから何か感じるかもしれないけど。

エリオット・フレイザー(Vo. Gt.):そうか、前回来た時は色々なことが起こる前だったね。

──Ringo Deathstarrにとって、この2年はどういうものでしたか? 新しい音楽も制作しているのでしょうか?

エリオット:音楽に関しては正直、ノーだね。デモはいっぱいできてるけどね。実は赤ちゃんができたんだ。あと、コミュニティー・カレッジのプロフェッサーを始めた。オーディオ・エンジニアリングを教えてるんだよ。

──お子さんが産まれたんですね。おめでとうございます。プロフェッサーというとPh.D(博士号)的な?

エリオット:いや、Ph.D的なやつではないよ。ただの先生だよ。

──『Ringo Deathstarr』(2020)のリリースの際にも、赤ちゃんが生まれたことで生活が変わったこと、音楽へのアプローチが変わったことを話されてましたよね。

エリオット:そうだね、アルバムの前に最初の子が生まれて、今度は2人目なんだ。2020年の2月24日生まれで、ちょうど前回の日本ツアーから帰ってすぐに生まれたんだよ。で、9月にはダニエルにも子供ができたよね。

▲『Ringo Deathstarr』収録曲「Cotton Candy Clouds」のMVは東京で撮影されている。cruyff in the bedroomのハタユウスケやRAYも登場。

──アレックスはどうでしたか?

アレックス・ゲーリング(Ba. Vo.):別のバンドで主に活動してた。あとは、不動産の免許を取ったし婚約もしたから、結構忙しかった。パンデミックのおかげで自分の時間をたっぷり使っても全然大丈夫だったし、むしろ充実するって分かった。

──充実の2年間だったと聞けて良かったです。そういえば、僕はOvlov(米コネチカット州のインディー・ロック・バンド)の大ファンで、彼らの久しぶりのアルバム『Buds』(2021)にアレックスが歌を入れてましたよね。確か、そのレコーディングにエリオットも関わっていると聞きました。どのような経緯でコラボレーションが実現したんですか?

▲『Buds』収録曲「Feel the Pain」では、アレックスの幻想的なコーラスを聴くことができる。

アレックス: 私もあのバンドが大好きで、実は今回は私からOvlovに提案したわけ。昔一緒にライブしたこともある仲で、ちょくちょく連絡も取ってたのね。「もし女性ヴォーカルのコーラスを入れたい曲とかあったら、やりたいんだけど」って連絡したら、すぐにヴォーカルのスティーヴから返信が来て。「ちょうどアルバムのレコーディングが終わったところだから、この中から好きなだけ曲を選んで、好きなようにコーラスを乗せて」って曲が送られてきたの。だから3曲選んで、コーラスのデモを作って送り返したら、好評だった。「最高!」って。だからエリオットに手伝ってもらって、ヴォーカルをレコーディングしたって感じ。

エリオット:そう。アレックスがうちに来て、俺は本当にただ彼女の声をレコーディングしただけ。

──あのアルバム、マジで良かったですよね。

アレックス:私もマジで好き。

──アレックスはOvlovのアルバムへの参加に加えて、先ほども他のバンドに参加していると話していましたが、今はそちらの方で精力的に活動しているんですか?

アレックス:まだRingo Deathstarrが私のメイン・プロジェクトと言うべきかな。もう1つはNuclear Daisiesってバンドなんだけど、そっちはもっと好きなこと、やりたいことをやってる感じ。言ったら課外活動。実はダニエルも同じバンドにいる。

──ダニエルはそこでもドラムを?

ダニエル:ドラムだよ。ていうか、オースティン中のいろんなバンドでドラムを叩いてる。

──エリオットは別のバンドでは活動していないんでしょうか?

エリオット:バンドはやってないけど、レコードのプロデュースとかミキシングとか、さっきも言ったけど学校でオーディオ・エンジニアを教えてるし、Ringo Deathstarrの新作を作ってない時もずっと音楽に関わってる。パンデミック中だと、オースティンのPleasure Venom、Blushing、ロサンゼルスのA Reminderの曲のエンジニアリングをやったよ。

▲同郷オースティンのガレージ・パンク〜ポストパンク・バンド、Pleasure Venom。2021年リリースのアルバム『We Get What You Deserve』で、エリオットはエンジニアリングと共同プロデューサーとして参加。

▲こちらもオースティン。ドリームポップ/シューゲイザー・バンド、Blushingが今年リリースしたアルバム『Possessions』は、プロデュースからレコーディング、ミックスまで全てエリオットが担当。

▲ロサンゼルスのオルタナティヴ・ロック・バンド、A Reminderのシングル「Another Day」。エリオットはミックスを手掛けた。

「メロディが聴き手をどんな気持ちにさせるか?」ってところを極めたい

──来週(11月16日)、A Place To Bury Strangers(以下APTBS)との対バンがありますが、彼らとの馴れ初めというか関係性というか、そういったことを聞かせてもらえますか?

アレックス:端的に言うと古い友達って感じで、長い付き合いになる。

ダニエル:僕がRingo Deathstarに参加して最初のライブは、APTBSのオープニング・アクトだった。2008年だね。僕自身にとっての最初のライブでもあったよ。

エリオット:確かAPTBSと知り合ったのは、初めてNYに行った2008年の2月だね。

アレックス:NYに行ったら、いつも彼らのところに泊まらせてもらってて。彼の工場っていうか倉庫っていうのかな。組み立て中のエフェクターに囲まれて寝ることになるんだけど。

──彼らにもインタビューをするから同様の質問を投げかける予定ですが、「自分たちにないAPTBSの一番の魅力」ってなんだと思いますか?

エリオット:聴いて分かる通り、音楽は似ているところの方が少ないからね、なかなか比較ってなると難しいな。プリミティヴで心臓に来るようなドラム・ビートに高周波数のノイズ、低音のヴォーカルがひとまとまりになってるのはマジでかっこいいよね。ハーモニーとメロディの音楽を頑張ろうとしている俺らから見れば、全然違うね。

アレックス:私が思う違いは、ステージ・パフォーマンスかな。スモークを焚きまくって、バチバチのストロボと、プロジェクターでの映像アートでしょ。あれが音楽と一緒になって1つの体験に変わる。ライブ体験として頭一つ抜けてるんじゃないかな。目と耳と匂い全部に訴えてくる感じ。

エリオット:APTBSのステージのあれは真似できないね。俺らのライブを観るより断然、体験として面白いんじゃないかな。オリヴァー(・アッカーマン、APTBSのフロントマンにしてDeath By Audioの創設者)はギターを上にぶん投げて、壊して、マジでクレイジーにやるんだよ? そりゃ最高だよね。それで壊すたびにギターをボンドで直すんだから。チューニングがズレまくっても、関係ない。それも体験の一部で、何もまとまってる必要なんかないんだ。前に彼らのライブのPAをやったことがあるんだけど、本当に面白い経験だった。

※APTBSのインタビュー、及びライブレポートは近日公開予定。

──前回の日本ツアーで、「シューゲイズ・モンスター」と名乗るTシャツを売っていたのが印象に残っています。そんなRingo Deathstarにとって、シューゲイザーとはずばりなんですか?

エリオット:ごめん、よく分からないね。笑 Tシャツの件は任せてるから自称というより客観的な称号になるかな。人はそう呼ぶのかもしれない。「シューゲイズ」と呼ばれることは嫌いじゃないけど、確かなのは、俺らはただシューゲイズをやりたいバンドじゃないよってことだね。「シューゲイズのアルバム」って感じの作品を作りたいとは思わないね。ディストーションとかいろんなエフェクターを使うのは見ての通り大好きだけど、どっちかというと「メロディが聴き手をどんな気持ちにさせるか?」ってところを極めたい。だからリストみたいなのを作って「リヴァーブOK!」「十分にシューゲイズしてる?」「ヴォーカルのディレイが足りないヤバイぞ!」みたいなことは好きじゃないね。笑

──最近の音楽でハマっているアーティストや作品はありますか?

ダニエル:僕が聴いてハマったのはblack midiだね。聴く?

──聴きますね。好きですよ。日本でも人気で、活動歴の割に来日してる印象がありますね。

アレックス:私はさっきも話題に上がったけど、やっぱりOvlovが大好き。あとは彼がやってるもう1つのバンドのStove。

──Stoveはスティーブのメロディアスな側面が出ていますよね。どちらのバンドもたまりません。

エリオット:俺は自分の関わってる音楽しか聴かないね。自分がレコーディングしてるバンドのアルバムばっかりだ。今も自分がミキシング中のバンドの音楽を毎日聴いてるよ。

──ラジオとかそういうのも全然聴かない?

エリオット:こういう音楽は絶対やっちゃダメだって戒めのためにラジオを聴くことは結構あるよ。笑 そういえば前にレストランで流れてた音楽が引っかかって、思わずSiriに尋ねたよ。Young Leanの「Lazy Summer Day」って曲だった。サイケなビーチ・ボーイズっていうか最悪なビーチ・ボーイズっていうか、そういう感じで始まってヒップホップになっていくんだよね。ちょっとレストランのスピーカーだったから良く聴けてないからもう一回聴きたいよ。あれは興味深かった。

次の日に覚えてなかったら、そのアイディアは大したことない

──創作的ルーティンなどがあればティップスとして教えてほしいです。私はちょっと飲み物にこだわりがある人間で、他人が飲んでいるものにも興味があります。あとは、アイディアを思いつくシチュエーションや場所など。

エリオット:ほんとに色々って感じで全然決まってないな。「さあやるぞ!」って感じでギターを構えて曲を書くタイプじゃないからな。大体は適当にギターを弾いてる時にポッと思いついて曲にする感じだね。飲み物も時々だね。

アレックス:音楽制作に関して言うと、まずはその日がクリエイティヴな日かどうかってところが重要。気持ちが高まってないと、なかなかね。「やるぞ!」って時以外はやらない。椅子に座って悩みに悩んで、何も生まれないってことになると嫌だからね。まずは起きた時にその気分かどうかっていうのが一番大事かな。ギターで作曲するときもあるけど正直そんなに上手くないから、基本は歌のハーモニーからスタートする。ちょっとしたギターのラインとヴォーカルのメロディを作ってみて、それでみんなに投げる感じ。そしたらみんな足してくれるから。飲み物の話だと、私は主にコーヒーかな。

エリオット:俺は前まで、みんなとは逆に一日中座って音楽を作ることが多かったけど、子供やら何やらで色々変わったし、最近はないね。今はみんなの持ってきたデモから完成させていくことの方が多いな。そうやってデモと睨めっこしてると新しいアイデアが浮かんで、何か試してみようかって気になる。だから、そこから明らかなビジョンを持って作曲に取り掛かるケースも多いかも。そのビジョンに合うものができるまでいろんなものをトライし続けて形にするタイプ。あとは、これまでにやったのと同じすぎると思って悩み続けることもある。そういう時は何か面白いコード・チェンジがないかなって試してみたり。

エリオット:でも、色々試したもの全部を録っておいたりするのは嫌いなんだよね。次の日に覚えてなかったら、そのアイディアは大したことないってことだと思うから。このやり方だとアウトプットは少なくなるだろうし、時間もかかるけど、さっきも言ったように2人が送ってくれるアイデアがヴォーカルとギターだけとかそういうのが多いから、やらないといけないことは大量にあって退屈しないよ。笑

──それぞれタイプが違って、ちょうどバランスが取れてる感じですね。ちなみに飲み物は?

エリオット:ワインとかビールとかを夕食の席で飲んで、子供を寝かせて、それから音楽を作るから、特に何も飲まないね。もちろん昼間だったらシラフだよ。ほんとは早起きしてコーヒーを飲んで、1時間ばかり瞑想なんかをして、頭を空っぽにして音楽に取り掛かりたいものなんだけど、今じゃそれは叶わない。子供ができるとやっぱり生活は変わるね。前はやってたよ。瞑想は冗談だけど犬の散歩とかね。今は自由時間はほとんどないよ。笑

──みなさんが音楽以外でハマってることはありますか?

アレックス:食べること!

ダニエル:食べることと、あとは卓球。最近ちょっとだけやるよ。

エリオット:レゴかな。子供のために集め始めたんだけど、気付いたら自分が熱中してた。あと、料理もやるよ。俺も食べることには情熱があると思う。

アレックス:私たち、食には熱いのよ。

──日本をツアーしてる間も食べまくり?

アレックス:寿司。

エリオット:寿司。ラーメン。

ダニエル:あと「いきなりステーキ」!

アレックス:北海道に行ったらジンギスカンとかも食べたいね。

──最後に、新作の予定について聞きたいです。気になってるファンは多いと思います。

エリオット:今回のライブも新曲はまだ演奏できないね。全然リハーサルができてなくて荒削りだし。実は、指の怪我もあったしね。今は大丈夫なんだけど、指先がちょっと無くなっちゃって。半年の期間が消し飛んだ感じだった。ギターなんか当然弾けなかったしね。

──(傷跡を見て)うわあ……。

エリオット:ドアに挟んだんだ。骨まで行かれたよ。子供のお風呂の時間にね。子供はマジでクレイジーだよ。本当は4月に時間を取ってスタジオに入るつもりだったんだけどね。怪我のせいでできなくて、指が良くなってきたら今度はライブだ、学校で先生だ、って感じで色々忙しくなってね。

──無事に治って、またライブができて、本当に良かったです。

アレックス:でも、さっきちょうどみんなで新作の話をしてたところで。まだ制作は始まってなくて、1月にレコーディングしようかなって話。けど、デモは大量にある。私は他のバンドでも忙しくやってるし、みんな自分の大事なことに打ち込んでる状況だったから、色々これからって感じ。誰もRingo Deathstarに音源をリリースするようにプレッシャーかけてこないのは良いことよね。

<2022年11月10日 吉祥寺CLUB SEATAの楽屋にて>

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Sleep like a pillowでは11月10日のライブレポートを公開。盟友でもあるcruyff in the bedroom、そしてオープニング・アクトとして京都のMoritaSaki in the poolを迎えた本公演を、写真と共に振り返る。

鈴木レイヤ