【インタビュー】レトロな少女、歯痒くもほろ甘い楽曲が詰まった1st AL『一限目モダン』発売。成山が描く「理想の女の子像」とは

【インタビュー】レトロな少女、歯痒くもほろ甘い楽曲が詰まった1st AL『一限目モダン』発売。成山が描く「理想の女の子像」とは

ヴォーカルを務める佐藤餓死と、DTMを主軸にした作曲/作詞を手掛ける成山まことからなる男女ユニット、レトロな少女。
2019年2月に活動を開始し、YouTube上で楽曲を発表。「真部脩一的」とも評される音楽性がネット上で瞬く間に話題を呼び、今年8月にタワレコ限定ミニAL『タワレ娘』を発売。さらに9月9日には満を辞して1st ALとなる『一限目モダン』をリリース。まさに今、音楽シーンに新たな風を吹かせる期待のニューカマーだ。

今回musit編集部では、そんな2人を紐解くインタビューを敢行。レトロな少女の結成秘話や、佐藤と成山間の忖度しないナチュラルな関係性、そして哲学的なフレーズを節々に散りばめながら、繊細な女性心を緻密に捉えた歌詞が印象的な楽曲群について、詳しく話を聞いた。

インタビュー/文=翳目
写真=musit編集部

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集団行動のライブを観て、封印してた「音楽をやりたい」気持ちが芽生えた

ーーまず、レトロな少女の結成の経緯について教えてください。

成山:元々高校時代から趣味で曲を作ってたんです。でも、大学生になった時に「このまま音楽を続けていたら、人生がダメになる…」と思って。笑 それからしばらく音楽は封印してたんですよ。大学時代はきちんと部活に所属して、4年の9月に引退して。でもその頃、たまたま集団行動のライブに行ったんですよね。相対性理論も含めて真部脩一さんの音楽は以前から好きだったんですけど、初めてライブを観て「なんだこれは!?」と衝撃を受けて。笑 ライブを観終えてから、それまで封印してた「音楽をやりたい」っていう気持ちがまた芽生えてきて。時期も時期だったから就職する前に何曲かデモを作って、ヴォーカルを募集し始めたのが最初のきっかけですね。

--ヴォーカルの募集はどうやって行っていたんですか?

成山:『OURSOUNDS』(メンバー募集専門のサイト)を使っていました。あとは、当時YouTubeをメインに曲を上げていたので、キャプションのところに「デモでヴォーカル募集してます!」って書いたりとか…。でも結局どこも空振りで。笑

--そんな中で、佐藤さんとはどうして出会ったのでしょう。

成山:『nana』っていうカラオケアプリで作った曲を投稿してたら、餓死ちゃんがたまたま僕の曲を歌ってくれてたんですよ。で、「これは良い!」と思ってTwitterでシェアしたら、餓死ちゃん本人から「それ私です」って直接リプライが来て。笑

--自己申告! 笑

成山:餓死ちゃんから連絡もらった時はもうヴォーカルが決まってたので、その時は特に何も進展はなかったんです。でもある日、当時のヴォーカルの子が急に「すみません、辞めたいです」って言い出して。笑 それを聞いてすぐに「あ、これはもう現時点で最高の歌声を持ったあの子にお願いしよう!」と思って、改めて餓死ちゃんにオファーのDMを送ったっていう感じでしたね。

--成山さんからオファーを受けて、佐藤さんはどう思いましたか。

佐藤:当時私は19歳で大学生だったんですけど、全然学校に行ってなかったんです。本当毎日寝てばっかりで。笑 だから「なんか面白そうだからやってみよっかな」って軽いノリでOKしました。それが2019年の2月末ぐらいでしたね。

(成山の第一印象は)「とんでもないのが来た」って

--お互いの第一印象を教えてください。

成山:僕はもう、餓死ちゃんの当時のTwitterのアイコンがピカチュウだったので、その印象しか記憶にないですね…。

佐藤:成山さんと初めて顔合わせをした時、成山さんがスーツ姿に丸眼鏡で来てたんですよ。だから「ザ・サブカル大学生みたいな人だな…」って思いました。

成山:
こういうやつね(胸ポケットから丸眼鏡を取り出す)。


佐藤:そうそう。笑 成山さんって、普段から結構かっちりめの格好をするんですよ。だから最初「佐藤餓死さんですか?」って聞かれた時は…。

成山:「とんでもないのが来た」って感じだったよね。

佐藤:そうですね。

--なるほど。笑 それぞれの音楽のルーツについて聞かせてください。

佐藤:相対性理論は2人とも好きでした。あと共通している好きなアーティストで言えばsympathyとか、ラブリーサマーちゃん、泉まくら、禁断の多数決…あれ、Syrup16gもだっけ?

成山:それは君に教えてもらったんだよ。笑

佐藤:そっか。でも女性ボーカルが多いですよね、それも可愛らしい系のサウンドの。当時、成山さんはTwitterのプロフィール欄に好きなアーティストをいくつか書いていたんですけど、そこにあったアーティストは私も全部好きでした。

--そういう部分で意気投合した、と。

成山:そうですね。ベン図で言うところのちょうど真ん中の部分みたいに、お互いがストライクゾーンだったので上手くマッチングしたのかもしれないです。

佐藤の声は「間違いなく理想のボーカル」

--成山さんは今福岡にお住まいですよね。楽曲制作はどのように進めているんですか?

佐藤:成山さんにまず楽曲のデータを送ってもらって、そこに私がヴォーカルを入れて送り返してミックスしてもらって…っていう流れが今のところは定着していますね。でも成山さんは結構頻繁に東京に来るから、その時は成山さんが泊まっているホテルでヴォーカル録りをしたりとか。

成山:ビジネスホテルって便利なんですよ、お昼もすごく静かだし。

佐藤:「ホテルで録ってる」っていうと疑われそうなので言いますけど、成山さんは本当に信頼あるビジネスパートナーですからね!笑 チャッと録ってパッと飲んで、サッと帰るだけです。

--疑ってないです。笑 制作ペースについてはどうですか?

成山:それこそ餓死ちゃんと出会ったばかりの頃は怒涛だったよね。毎日レコーディングみたいな。

佐藤:本当にそうですね。っていうのも、成山さんの曲を書くペースがすごく早いんですよ。

成山:確かに。毎週曲を書くぐらいの勢いですね。20曲以上はあるんじゃないかな?笑 発表する機会さえあれば出したいんですけどね。

--佐藤さんも追い着くのが大変そうですね。

成山:やっぱり遠隔でのやりとりだと限界を感じる部分もあって…。例えば、直接なら50回でも100回でも録り直しをお願いできるんですけど、遠隔だとギガファイル便でいちいち送らなくちゃいけない手間もあって頼みにくいんですよ。

佐藤:なんだかんだ大変な部分もありますよね。だから、成山さんが曲のストックを増やしてくれていても、実際に歌入れまではしてないっていうのも結構多くて。それもあって今は一緒にいる時になるべく多く録っておくようにしてます。

成山:「もっと突き詰めたい!」って思った時に、結局なあなあで終わってしまうのが今は少しネックですね。

--普段の歌録りで、成山さんから佐藤さんへ何か要望を伝えることは多いんですか?

成山:基本は最初に全部叶えてくれるんですよ、餓死ちゃんが。だから85%ぐらいはOKなんですよね。

--理想のヴォーカルですね。

成山:本当に「こういう感じのヴォーカルが欲しい」っていうのを忠実に汲み取って再現してくれるんですよ。笑 初めて餓死ちゃんの歌声を聴いた時から「間違いなくこの人だ!」と思ってはいたんですけど。

佐藤:恥ずかしい…。笑

--「85%がOK」の中で、残りの15%というのは?

成山:基本的に「僕の曲は感情を込めないで歌ってほしい」って餓死ちゃんにはお願いしているんですけど、曲によっては「ここの大サビの部分は(感情を)込めてほしい」っていうところもあって、それぐらいですね。

佐藤:「新宿経由で三千回」はまさにそうです。最後の‘‘新宿経由で三千回は’’って何回も繰り返すところがあるんですけど、成山さんに「あそこは感情を込めて」って言われて。その時はもうグワーッ! ってめいっぱい感情を込めて歌いました。笑

成山:そういう注文も最初に伝えておけば楽になると思うんですけど、1回はとりあえず何も言わずにもらうもんね。それから僕が1人で考える、みたいな。

佐藤:あと私はハモるのが苦手なので、コーラスの部分は成山さんに丸投げしてますね。

レトロな少女の曲の主人公は、古着と音楽が好きで、ヴィレヴァンに通ってるような子

--活動開始からまだ約1年半という中で、非常に多くの楽曲を発表されてると思うんですが、今回の『一限目モダン』に収録されている楽曲の基準はどういったものだったんでしょうか?

成山:『一限目モダン』は学校をテーマにしたアルバムを作ろう、と思って楽曲を選びました。レトロな少女っていう名前が何となく「学校」と結び付くようなイメージが自分の中にはあって。タイトルを決める前に、いくつかアルバムに入れたい楽曲が決まってたっていうのもあるんですけどね。「教頭戦線異状なし」とか「いつかのマキシマイザー」とか。今まで発表した楽曲の中で入れたい楽曲を掻き集めていったら「あ、このアルバムの曲の共通項は『学校』なんだ」って気が付いたんですよね。そのイメージをタイトルにも反映させたいなと思って『一限目モダン』というタイトルにしました。

--‘‘ニーチェやドゥーチェ’’‘‘アンデルセン’’といったフレーズから、文学にも造詣が深い方なのかなと思ったんですが、作詞をするうえでのこだわりはありますか?

成山:元々歌詞を書くってなった時に、大学生活の総括的な感じで書きたいと思ってたんですよ。音楽性は真部脩一チックだけど、歌詞は哲学とか法学に関するものを取り込みたいなと。だから「あの子がヒロイン」に出てくる‘‘ヘミングウェイ’’は僕が大好きな小説家だったりもして。

--ご自身が好きなものだったり、学んできたことが歌詞の中に散りばめられている、と。

成山:そうですね。知識ひけらかしいです。笑

佐藤:鼻につく…。笑 でも、私も知識ひけらかしてるなあ〜と思いながらも調べちゃうんですよね。「へえ、こういう意味だったんだ」って。笑

--歌詞を辿りながら成山さんの内面を捉えられるのも、レトロな少女の楽曲を聴く楽しみ方の1つかもしれないですよね。そういうフレーズを散りばめたうえで、恋愛系の楽曲が強い印象なんですが、それもご自身の経験が結びついているんでしょうか?

成山:うーん…。なかなか恥ずかしい質問ですね。笑

佐藤:成山さん自身が経験したこともあるし、成山さんの周りで起きた出来事とかが多いですよね。

成山:ある種、僕の中の「理想的な女の子」をレトロな少女の楽曲の主人公にしたいという気持ちがあって。どういう女の子像かっていうと、まあ古着が好きで、音楽が好きで、ヴィレヴァンに通っていたりするような子、というか。

--サブカルチックな。

成山:サブカルチックな。笑 でも、そういう自分の理想の女の子が僕の過去の中に登場していたら、きっとこんな感じなんだろうなっていうのを歌詞に書き出していますね。

--「新宿経由で三千回」なんかは特にラブソング色が濃い楽曲ですよね。

佐藤:成山さんのすごいところって、男性なのに女の子目線の歌詞が書けるところなんですよね。新宿を経由して元彼の家に行ったりとか、女の子ならあるあるじゃないですか? 成山さんの歌詞を見てると「なんでこんなに女の子の感情に寄り添えるんだろう?」っていつも不思議に思います。

成山:いやいや…ありがとうございます。笑

--最後に、レトロな少女で今後達成したい目標を教えてください。

佐藤:やっぱりライブがしたいです、今は。人前で自分たちの曲を歌いたい。あとは、NHKが昔からすごく好きなので、いつか『みんなのうた』の曲をレトロな少女でやりたいです。

成山:集団行動と対バンがしたいですね! 真部脩一の顔をステージの脇から見たいです。あとはもっと良い曲を作って、世に出し続けたい。その2点ですね。

佐藤:今は実験的に色々とチャレンジしている途中で。例えば、基本は打ち込みなんですけど、最近の曲はわりと生音のギターを入れることも多くて。2人でギターの音を入れてみたりとか。そうやって2人で試行錯誤しながら新しいものを生み出しながらどんどん進化していくと思うので、是非期待していてほしいです。

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RELEASE

【レトロな少女】本日発売のAL『一限目モダン』より、「西八行き最終バス」MV解禁!

レトロな少女『一限目モダン』

1.さんすうのこたえ
2.教頭戦線異状なし
3.恋の及第点
4.いつかのマキシマイザー
5.西八行き最終バス
6.私の大統領
7.教えてオサム

各種サブスクへのリンクはこちら
https://retro-na-syoujo.fanlink.to/1genme

PROFILE

レトロな少女

「のすたるでぃっくであたらしい。レトロでポップでかわいらしい。」をモットーに掲げて活動を行う、男女2人組ユニット。actwise所属。

Twitter

レトロな少女:https://twitter.com/RETRO_NA_SYOUJO
佐藤餓死:https://twitter.com/ICE_PlLLOW
成山まこと:https://twitter.com/Nariyama_Makoto

musit編集部