【インタビュー】音楽を離れ、絵画の道へ--かわいわか(ex.sheeplore)が今、新たな舵を切る理由

【インタビュー】音楽を離れ、絵画の道へ--かわいわか(ex.sheeplore)が今、新たな舵を切る理由

作品毎にコンセプトを掲げながら多面的な美しさを見せるバンド、sheeploreのかわいわかが10月初旬、約7年間所属したバンドを離れ、今後は画家の道へ進むことを発表した。

なぜ今、彼がミュージシャンという肩書きから画家へ転身するに至ったのか。幼少期の頃から彼の生活の一部だったという絵画作品との切り離せない関係、そして11月7日から開催されるグループ展《新鮮な肉声 VRAIE VOIX FRAÎCHE》について、詳しく話を聞いた。

取材/文=翳目
写真=藤川彩澄

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sheeploreだからこそ決断できた

--10月初旬にsheeploreでの演奏をやめると発表して、約2週間が経ちました。実際にはいつ頃から決めていたんですか?

考える動機になったのは緊急事態宣言が出た頃かな。それまではライブや楽曲制作が常にある状態でバンド活動をしてたんですけど、コロナの影響で徐々にライブやリハができなくなって、家に篭もる時間が増えていって。そんな中でふと、自分の今後の人生や時間の遣い方について改めて考えるようになったんですね。今までもバンド活動の傍らでアートワークはこなしてきたけど、自分を見つめ直すことで絵を描くことへの欲求が強くなっていったというか…。環境を変えるなら今しかないんじゃないかと思って、一旦楽器は置いて絵の道に専念しようと決断しました。

--決断に至るまで迷いはなかった?

ちろん決めるまでは色々考えたし、とても苦しかったですね…。一緒に活動してきたメンバーや応援してくれているお客さんへの申し訳なさもあって。だけど最終的に「自分が生きたいように生きた方がいい」という言葉が背中を押してくれたので、決めてからは全く躊躇しなかったです。

--メンバーに打ち明けたときの反応はどうでした?

それぞれに色んなことを言われたし、たくさん話し合いました。でも元々sheeploreって、各々の感覚を確認しながら擦り合わせを重ねて1つの作品を生み出すバンドなんですよ。だからそういう点では皆ちゃんと俺のことを理解して、芯の部分で受け入れてくれたんだと思います。あとケンタ(k.kawauchi)も映像制作をしてたり、自分以外にも音楽に付随する形で創作活動をしてるメンバーがいるのも、この先また良い形でバンドと関われる理由なんじゃないかなと思いますね。

--私も以前から、sheeploreは1つの集団形態に囚われないバンドだなと感じていました。あくまで個を大事にしているというか。

そうですね。今後もジャケットデザインだったりInstagramの投稿だったり、sheeploreのアートワーク部門の人として活動していきたいなと。これまでギターやシンセを選んでいた分、より絵に集中していく、というイメージを持っていただければ。笑 優先順位が変わっただけです。俺を含めてsheeploreのメンバー全員、想像性や創作意欲をとても大切にしていて、既存のフォーマットに囚われることが好きじゃないんですよ。だから公式サイトでの発表も俺のコメントだけを載せる形になって。でも、そういうメンバーだからこそ心地良い環境だったし、今後も関わっていきたいと心から思えるんです。

描くのは「目に見えない精神世界」

--絵はいつ頃から描いていたんですか?

絵は自分の人生の中で1番最初の記憶っていうぐらい幼い頃から描いてましたね。母親が絵本をたくさん持ってたので、その影響かな? 7歳の頃から東中野の《無寸草》(※現在は下北沢に移転)というギャラリーで展示をさせてもらっていて、高校時代は軽音楽部と美術部を兼部していました。それほど絵と生活が密接した環境で育ったからこそ、学生時代は音楽をやりたい気持ちの方が強かったんです。思春期特有の反抗心というか。笑 でもそれから約7年間sheeploreというバンドにいられたので、今は全く後悔してないですよ。

--幼少期から絵を描き続けてきた中で、特に影響を受けた画家を教えてください。

絵描きではないですが…ホドロフスキーの映画が大好きです。実際に絵を描くきっかけになったのは、絵本作家の荒井良二さんとスズキコージさん。2とも自由な感性で表現してるところがすごく魅力的で。10代の後半ぐらいからコラージュも作り始めたんですけど、それも荒井さんの影響が大きかったんです。

--かわいさんは絵とコラージュで全く対照的な世界を表現してますよね。コラージュは人の顔を切り貼りしていて抽象的なものを示す一方で、絵はかわいさん自身の混沌とした世界を描いているような気がします。

コラージュで人の写真をよく使うのは、単純に人が好きだからでしょうね。コラージュは絵で描いた世界や写真の世界、それぞれ異なる2つの世界を1つのフレームに収められる自由さが好きです。絵を描く時はまさに混沌とした、目に見えない精神世界そのものを描くことが多いかな。

昨年行われたイベント《Ferrière》開催時のフライヤー/作・かわいわか

--そういった構想はどういう時に思い浮かぶんでしょうか?テーマを決めたうえで描くのか、それとも手を動かしながらなのか。

どちらもあります。テーマを決める時はいつも、その時感じていることから着想を得ています。普通に生きているだけで楽しい誘惑は十分あるので…決まったやり方に囚われず、日々の生活の営みやその中で感じている自分の気持ちをヒントに制作しています。

《新鮮な肉声》は、来た人が生の声を受け取れる空間にしたい

--11月7日から開催されるグループ展《新鮮な肉声 VRAIE VOIX FRAÎCHE》はどのような経緯で決まったんですか?

以前、高円寺Highでザ・キュアーのコピーをやった時に、コバルトさん(自主制作レーベル《PoetPortraits》主宰)がたまたまライブを観に来てくれてたんですよ。それを機に交流が始まって、俺がバンドの傍らでアートワークも手掛けていることに興味を持ってもらって。コバルトさんも空想画やデザインを描かれている方なので「一緒にやろうよ」と。《新鮮な肉声》というタイトルは、当初参加する予定だったYURI IWATAさんとコバルトさんと3人で顔合わせをした時に、YURIさんが《叫びとささやき》というスウェーデン映画の話をしていて。俺は俺で前日に「ボイス」をテーマにした作品を制作してたから、その2つからまず「声」というワードが浮かんできたんですね。

話を進めていくうえで「コロナ禍を経て、誰しもが閉鎖的な社会環境になったと感じているはず」というのが3人の中に共通していて、その中で自分たちはやれることから少しずつ声を紡いでいく必要があるなと。だから今回のグループ展が、それぞれ異なる色の作品を展示する新しい遊び場となり、その場に集まる人には今だからこそ聞こえる生の声を受け取る空間であってほしいという思いを込めて《新鮮な肉声》と名付けました。

--今はまさにイベントに向けて準備を進めている最中だと思うのですが、やっぱり以前と今とでは制作に対する姿勢は変わりましたか?

物の見え方はすごく変わったと思います。以前は生活する中で見えていたものをそのまま投影していたけど、今はもう制作する一つひとつが全く新しいものというか…、新曲を作っているような感覚です。でも、少なからず良い方向に向かっているような気はします。あと、俺の作品に対してsheeploreで音を当ててくれたものもあるんですけど、その曲を今回の展示で作品と一緒に流そうと考えているので、それも是非楽しみにしてもらえたらなと。

--かわいさんの新たな側面を見ることができそうで期待が高まりますね。この先の展望を教えてください。

新鮮な肉声》以降もどんどん自分の作品を見てもらう機会は増やしていきたいですね。sheeploreともアートワークの枠を超えた、自分の作品と楽曲が融合したコンテンツを発信したいと考えています。今までsheeploreの自分を見てくれていた人も、作品から入ってきてくれた人も楽しみにしててほしいです。

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《新鮮な肉声 VRAIE VOIX FRAÎCHE》


◯場所:バッカスギャラリー ブン(〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-20-14-森川コロニー402)
◯開催期間:2020年11月7日(土)〜23日(月)(18:00〜24:00)
◯出展:かわいわか、コバルト、石井ルミ

PROFILE

Twitter:@_wkkn
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musit編集部