【ライブレポ】the scentedが焼き付けた光──秘めるポテンシャルを垣間見せた夜

【ライブレポ】the scentedが焼き付けた光──秘めるポテンシャルを垣間見せた夜

季節外れの暑さがくれた音楽へのいざない。息を吹き返した夏の残り香を胸に駅の改札を抜け、ライブハウスの入り口をくぐった。ようやく緊急事態宣言が解除され、感染者も減少傾向へ転じ始めていた10月7日。その夜に地震が首都圏を襲うなどつゆ知らず、今思えば束の間のバカンスだったのかもしれない。

この日は、抽象的な言葉と特徴的な声で「記憶に残る」をコンセプトに活動するthe scented(ザ・センテッド)が、西永福JAM主催の企画「MAX NIGHT!!」に出演。トップバッターを飾った。筆者が彼女たちのライブを観るのは今回が初めてで、今年3月に出会って以来、個人的にも念願叶ってのことだった。本稿では、そんな当日の模様を写真と共に振り返る。

文=對馬拓
写真=エドソウタ

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ライブは、the scentedの始動を告げた1stシングル「明滅」からスタート。冒頭から身体全体を使った勢いのあるプレイを見せ、熱のこもったエモーショナルなパフォーマンスを展開する。ミヤ(Vo. Gt.)の伸びやかなヴォーカルが心地良い。

続けて間髪入れずに「海」を披露。佐々木理久(Gt.)によるイントロのギター・リフが印象的なこの楽曲は、11月にリリースされる2nd EP『scene』のリード・ナンバーだ。ステージは仄暗い海の底のような青い光に包まれ、4人の演奏はさらに加速。キメでアクセントをつけた間奏を経てリズム隊も躍動、激しくも安定感のある鴨下支音(Ba.)のプレイが目を引く。

そのままシームレスに始まったのは、こちらも2nd EP収録の「残像」。ミヤによるポエトリーパートの切実さが胸に迫るナンバーだ。あべゆうま(Dr.)のふとした瞬間の優しいドラムのニュアンスにも惹き込まれる。

MCを挟んだ後、ミヤの弾き語りから「moon down」を披露。ステージ後方には月をイメージした丸い光が浮かび上がった。ラストに向かっていく展開は音源で聴くよりもずっとダイナミックだ。

the scentedのライブは、光を効果的に使用している。ステージ後方からの眩しい逆光、足元を照らす演出、繰り返される明滅。演者たちの輪郭はシルエットとなり、ミヤの表情は最前列でもはっきりと確認することはできない。それは、顔の表情よりも純粋に音楽を届ける──つまり、サウンドや言葉の機微を伝えようとする気概の現れではないだろうか。

ステージよりもむしろ観客を照らし出す逆光も、観客は傍観者などではなく、当事者でもあることを示しているのではないか、というのはさすがに深読みが過ぎるやもしれないが、つまり筆者が言いたいのは、the scentedが志向する音楽は視覚的/物理的な演出によって完成する、ということだ。

セットリストも終盤を迎え、2nd EPから続けて2曲を披露。まずはミュートの効いた軽やかなギターから始まった「過ぎる」。前半はミドルテンポで歌い上げられるが、中盤以降は一転、ドラスティックに展開されていく。照明の激しい点滅が跳躍を切り取っていく様が鮮烈だ。

ラストはイントロからノイジーなシューゲイズ・サウンドを放つ「終焉」で、クライマックス向けてさらに畳み掛けていく。アウトロでは佐々木が弦にスティックを擦り付けてプレイするなど、この日最もアグレッシヴな瞬間を迎えた。最後は深く頭を下げた4人を拍手が包み込み、ライブは終了した。

全6曲ながらも、誠実に音楽と向き合うライブだったと感じた。MCでミヤは「自分以外はサポートメンバー」だと紹介しており、それは事実ではあるのだが、そう言い切ってしまうのはもったいないほど、メンバー間の繋がりがどこか伝わってくるようだった。サポートであっても、彼らはミヤが紡ぐ音楽を最大限に拡張する存在であることは明白だ。

今回のアクトは、4人が放つアンサンブルと空間的演出によって、ふとしたタイミングでステージが「別次元」だと感じる瞬間が何度か訪れた。そこにいるはずの自分が、どこか別の場所に飛ばされてしまうような錯覚。これは良いライブの条件にほかならないだろう。その場にいた誰しもの記憶に、少なからず焼きついたパフォーマンスだったように思う。

活動歴としてはまだ日が浅いthe scentedだが、かなりのポテンシャルを秘めているのではないかと期待せずにはいられない。まだまだ化けそうだ。

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2021/10/07
NISHIEIFUKU JAM pre’「MAX NIGHT!!」
-SHINJYUKU JAM↔︎NISHIEIFUKU JAM 41th ANIVERSARY-

Setlist:
1. 明滅
2. 海
3. 残像
4. moon down
5. 過ぎる
6. 終焉

RELEASE

the scented『scene』

Label – Self Released
Release – 2021/11/21
CD:¥1,500(tax in)

Song List:
1. 海
2. 残像
3. 過ぎる
4. 終焉

對馬拓