THE NOVEMBERS「天使のピクニック」〜『picnic』と『ANGELS』を繋いだ夜

THE NOVEMBERS「天使のピクニック」〜『picnic』と『ANGELS』を繋いだ夜

2019816日、17日の2日間に渡り、THE NOVEMBERSによるワンマンライブが新代田FEVERで行われた(16日は追加公演)。その名も「天使のピクニック」。本公演は、2008年にリリースした1stフルアルバム『picnic』のリリースから「11年」経ったことを機に開催されたものだった。

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そもそも『picnic』とはどういう作品だったのか。デビュー作である1stミニアルバム『THE NOVEMBERS』では「僕」と「君」という二項対立の物語が歌われていたが、『picnic』ではそこに「外の世界」が加わり、視野が広がっている。歌詞は小林祐介の体験や感情が反映されていると思われるが、具体性はあくまで省かれ、その行間の多さから私小説的な文学性が感じられる。

サウンドはいわゆるギター・ロックの範疇ではあるが、当時から随所にUK〜USオルタナティヴ・ロックのエッセンスが息づいているのを十分に感じることができ、彼らの早熟さを改めて認識させられるばかりだ。

興味深いのは、『picnic』リリース時のインタビュー(CINRAより)。この中で小林は当時の心境として、伝えたいというよりもただ「言いたい」だけだ、といった旨のことを語っている。このフレーズが当時の彼らをよく表していることは、記事の中でも指摘されている通り。

『picnic』というタイトルも秀逸だ。一見して「ピクニック」という牧歌的なワードとは真逆のようなアルバムだと感じるかもしれないが、これは閉塞感のある日常/世界から抜け出してピクニックに出かけたい、という切実な思いが込められているのではないだろうか。

このアルバムの主人公は「picnic」の最後でこう歌う。

“ここは楽園じゃなくて そして地獄でもない
望まれているはずはないさ
そして幸せになろう
ここで ”

結局、自らが願うように閉塞する世界から抜け出すことはできないが、今いる「この場所」で幸せになる覚悟をする。こんな場所でも自分は生きていける。そんな強い意志とともにアルバムは幕を下ろす。

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さて、それから11年。最新作『ANGELS』は、『picnic』とは全く違ったアプローチで作られたアルバムだ。私小説的な感触はなくなり、かつてないほどに強いメッセージが伝わってくる。それは、結婚し子供を授かり、「愛」について考えながら日々生活していく中で自然と生まれたものであり、それ故にリアリティがあり、心臓を抉るようにリスナーに迫ってくるのだ(このあたりの話は『音楽と人』20194月号のインタビューで詳しく読むことができる)。

「ANGELS」で歌われるメッセージには、現在の小林だからこそ言えた、深い慈愛にも似た貫禄がある。相手を受け入れ、愛するということ。それが、とても自然な形で発せられているのだ。

“リズムに合わせて
呼吸を合わせて
やっぱ合わないなってところを
愛すのさ ”

サウンド面でも、ニューウェイヴやゴシック・ロック、インダストリアル的なアプローチが色濃くなり、THE NOVEMBERSの「美学」がより強固なものとなっている印象を受ける。

そんな彼らが敢行した「天使のピクニック」。セットリストは両方のアルバムから全曲披露されたが、曲順は上手く混ぜ合わされていた。11年前と今を、あえて並列に置いて見せたのだ。『ANGELS』が現時点での最高傑作であることを示しながらも、『picnic』の楽曲を「今」のTHE NOVEMBERSが完全再現することで、自分たちの過去もしっかりと肯定する。その光景を目の当たりにし、思わず胸が熱くなった。

何より、サウンド的にも背景的にも全く異なるアルバムの楽曲を同時に披露しても、ほとんど違和感がなかったことに驚いた。それは、どれだけアプローチが違っていても、実は収束する部分はこの11年間変わっていないことを示しているようにも感じられる。このことは、小林がMC「『picnic』が懐かしいという感覚はない」と語ったことにも繋がる。そう、つまり『picnic』も『ANGELS』も、最終的に歌われる内容は「現実を受け入れ、この場所で生きていく」というところに行き着くのではないだろうか。

THE NOVEMBERSの根底にあるものは変わっていない、そのことを改めて示したのが「天使のピクニック」という夜だったのだ。

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THE NOVEMBERS「天使のピクニック」セットリスト
2019年8月16日・17日 @新代田FEVER

1. ガムシロップ
2. アイラブユー
3. アマレット
4. plastic
5. Everything
6. ewe
7. 僕らの悲鳴
8. Arlequin
9. Ghost Rider
10. chernobyl
11. Close To Me
12. TOKYO
13. Zoning
14. 白痴
15. こわれる
16. DOWN TO HEAVEN
17. BAD DREAM
18. picnic
19. ANGELS

對馬拓