七転び八起きの3年間を鮮やかに彩る集大成。渡辺樹莉(ルルネージュ)卒業公演の模様をレポート

七転び八起きの3年間を鮮やかに彩る集大成。渡辺樹莉(ルルネージュ)卒業公演の模様をレポート

アイドルグループ・ルルネージュの第1期生、渡辺樹莉が11月30日、渋谷RUIDO K2にて行われた公演を以て、約3年間所属したグループを卒業した。

卒業公演当日、会場前には渡辺のファン(=通称:きり中)有志から贈呈された赤いスタンドフラワーが。この赤色は、渡辺がルルネージュでの3年間、アイドルと歌手活動の両方に尽力した情熱の赤のようにも思える。この日のチケットはソールドアウト。ルルネージュとして最後の舞台に立つ渡辺の姿を見納めるべく、関係者席にも多くの観客が足を運んでいた。

開演を待つファンはどこか心ここにあらずといった面持ちでステージを見つめる。19時30分。現体制最後となる、4人でのステージが幕を開けた---。

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1曲目は「青春の下で」。

‘‘胸の奥の痛みに耐えながら それでもなんで だけどどうして 頼まれてないのに歩きつづける?’’というフレーズが、どんな状況下でも決して臆さずストイックに進み続ける渡辺と、そんな渡辺に手を引かれるようにして各々のスキルを伸ばし続けたメンバーの姿を表しているように感じられる。
次ぐ2曲目は「ひと夏のダイアリー」。サビの‘‘騒げ!’’と同時に腰をしなやかに反らせてジャンプするパワフルな姿が、会場全体に更なる熱気を生み出していく。12月を目前にした冷え込む冬の東京でこの空間だけが今、壮大なエネルギーを持って花火のように輝くのを感じた。

「みなさんこんにちは!ルルネージュです。今日は渡辺樹莉の卒業ライブに来てくださって、本当にありがとうございます!」

2曲分のパフォーマンスを終えてステージライトに照らされたメンバーの表情は4人とも明るく、今日が渡辺ラストのステージだという実感をまるで感じさせない。短いMCの後は「妄想ジェット」「JumpUp !」「白い結晶」「卍ファーストラブ」「ROCK YOU ! ROCK YOU !」と間髪入れずに披露されたが、どの曲もパフォーマンスにブレがなく、グループの確実な成長を感じる。

「ROCK YOU ! ROCK YOU !」の後、渡辺は衣装チェンジのため一旦ステージ裏へ。
その間は清水、住久、時田の3人が渡辺とのエピソードトークで場を繋ぐ。渡辺と家族以上の時間を過ごしたという清水は、「実は最初の頃、樹莉とは全然仲良くなくて!笑 でもある時に一緒に帰ったことがあって、電車の中でお互いのアイドル活動に対する考え方を話していたら『この子、すごく真面目で良い子なんだな』っていうのが分かって、それから一気に仲良くなったんだよね」という彼女との馴れ初めを懐しみ、清水と同じく1期生として渡辺に出会った住久は「樹莉はオーディションの時から放つオーラが違ってた。なんというか、『私、シンガーソングライターなので歌えます!』みたいな…。とにかく自信に溢れていてカッコ良かった!」と渡辺へのリスペクトが込められたエピソードを語る。

そして、現メンバーで最も渡辺と過ごす期間が短かった2期生の時田は「樹莉は普段すごく真面目で頼れる存在だけど、この前シェアハウスで樹莉の配信を聴いてたら、すっっごいアニメ声で喋ってて!笑 樹莉じゃないみたいでびっくりしちゃったけど、そのギャップも含めて可愛いなと思ったんだよね」と、共同生活を経験したメンバーならではの思い出を口にした。

ほどなくして衣装チェンジを終えた渡辺が、MCを繋いでいた3人とバトンタッチをしてステージへ登場。先程までのステージ衣装とは打って変わり、淡いバイオレットのフィッシュテールドレスに身を纏った渡辺は、いつもより幾分大人びて見え、華美な印象がある。ソロステージで披露されたのは、渡辺自身のアイドル活動における葛藤と成長を描いた「7↓8↑」。

‘‘白線から少しでもはみ出れば不適合者扱いか
せーので始まったわけでもないのに’’

今でこそ万全のコンディションでグループを離れる決意をした渡辺。しかし過去の取材で自身の口から語っていたように、元は渡辺も周囲の圧に押し負かされそうになりながら、芯にある自分の夢を死守してきたうちの1人だ。そして活動を続ける中で、何度高い壁が彼女の行く道を憚ろうとも‘‘我に返っても諦める理由がないんだよ’’‘‘立ちあがる理由があんだろ’’と自身を奮い立たせ、決して怯むことなく果敢に挑戦し続けてきた。

‘‘私の未来は私が決めるいつだって七転び八起きできる
また夢に一歩近づけるまだここじゃ終われないだろう
最後に笑えるのはどっちだ’’

「七転び八起き」。紆余曲折を経て卒業を迎える今の渡辺の姿を象徴するのに最も相応しく、また力強い言葉だ。最後のサビに向かう手前、突然曲がストップしてしまうという予期せぬアクシデントも。しかし渡辺は「止まっちゃった…!」と笑うだけで、瞬時にアカペラへと切り替えたのはさすが、路上ライブ時代からSSWとしての鍛錬を地道に重ねてきただけある。会場全体に響く伸びやかで美しい歌声に会場全体が包まれ、暖かく心地良い空間に染め上げられていく。

ソロでのパフォーマンスを終え、渡辺は「私はとにかく話が長いから、言うことを事前にまとめておかないといけないなと思って…。」と、これまで自身を応援してくれたファンへの手紙を取り出す。そして、渡辺が読み始めるより先に堪え切れず涙を溢す最前列の観客に「早いよ〜!」と茶化してみせ、自身と出会ったすべてのファンへ感謝の思いを伝えた。
涙ながらに全文を読み上げると、再び渡辺以外のメンバーが登場。渡辺はドレス姿のまま、清水・住久・時田の3人は渡辺が以前デザインした、通称《チェキが盛れるTシャツ》に着替えて、現体制・ルルネージュのラストスパートを彼女たちらしく華やかに彩った。

の輝く空に」を歌い上げ、今度はメンバーを代表して清水が渡辺に宛てた手紙を読む番が来る。
震え声で手紙を読む清水の背中を渡辺が優しくさすりながら、最後は「本当にありがとう。大好きです」と伝えて抱擁を交わし、本編は終了した。

アンコールは2018年のデビューライブで1曲目に披露された「君レター」。
ルルネージュが始まり、同時に<ルルネージュ・渡辺樹莉>としての日々が紡がれるきっかけとなった、ファンとメンバーの双方にとってかけがえのない楽曲だ。

ラストは通常であれば住久が「大好き!」と叫ぶところを、「ずっとずっと大好き!」にアレンジしており、本来はストレートなラブソングでありながら、この日に限ってはグループを離れる渡辺への率直な感情であるように感じられた。

「ありがとうございました!私たち、ルルネージュでした!」

11月30日をもって、渡辺樹莉はグループを卒業した。そして12月1日より、渡辺は新たな人生の舵を切り、ルルネージュは新メンバー・百瀬芽衣と池田杏菜を迎え<新生・ルルネージュ>として異なる道を歩んでいく。両者の踏み出す方向は違えど、前を向く姿勢に相違はない。アイドルと歌手という2足の草鞋を履き、七転八倒を繰り返しながら一瞬たりとも足を止めずに奮闘し続けた渡辺と、渡辺樹莉という存在に幾多の可能性を見出してくれたグループの両方に待っているのは、どうか明るい未来だけであってほしい。

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(執筆:翳目)

翳目