RADIO DAYS

RADIO DAYS

筆者は今年からとあるレコ屋で働いており、邦楽の入荷業務に関わることがしばしばあった。そのため、邦楽の新譜を例年よりもかなり聴いた感触がある。2019年も新進気鋭のアーティストが数多く活躍する日本の音楽シーンだが、ベテラン勢の新作にも心を踊らされたものだ。

その中でも個人的に良かったのは、スピッツの『見っけ』と土岐麻子の『PASSION BLUE』。この2作品には、とある共通項がある--いずれも「ラジオ」について歌った曲が収録されている点だ。

スピッツの「ラジオデイズ」と土岐麻子の「RADIO」は、どちらもラジオを聴いていたかつての自分を回顧するかのような楽曲になっている。これに気づいた時、思わずはっとした。

なぜか。筆者は、ラジオの存在をすっかり忘れてしまっていたからだ。

思えば、高校生の頃は毎晩『SCHOOL OF LOCK!』を聴いていた。番組自体を学校になぞらえ、ミュージシャンが先生として登場する名物番組。かつてお世話になった大人や、リアルタイムで聴いている学生の方もきっと多いだろう。筆者個人としても、サカナクションやGalileo Galileiなどはこの番組がきっかけで聴くようになった。抽選で当たった番組のイベントが人生最初のライブだったりもした。いわば、『SCHOOL OF LOCK!』は僕にとって「ロック・ミュージックの原体験」の1つと表現しても良い。

数年前、北海道の金融機関で営業の仕事をしていた頃は、移動中の車で聴くラジオ番組が唯一の癒しだった。さユりやコミュニオンズはローカル放送のパワープレイがきっかけで好きになった。ザ・ジャパニーズ・ハウスを知ったのも、とある番組で新人アーティストとして紹介されていたからだったと記憶している。あの衝撃たるや。

しかし、転職して営業職から離れた途端、車を運転する機会も激減し、ラジオを聴く時間も失われ、気づけば数年の月日が経過していた。今となっては音楽の出会いの場の多くがサブスクリプションになり、もはやラジオのことなど頭の片隅にすらなかった。誰かに勧めるという点でも、こうして記事に曲を貼るという場合においても、サブスクは非常に優秀だ。きっともう手放すことはできないだろう。

そんな時、筆者は偶然にも、音楽の中にラジオを見つけたのだ。

ラジオというのは、かつての僕にとって「音楽との邂逅の場」だった。周波数を合わせて、ふと耳に飛び込んでくる知らない音楽に感動する。そうして「ハプニング的」に出会った音楽は自発的に聴いたものより強く印象に残っていることも少なくない。そういった貴重な機会を、何とも思わず失ってしまった自分。恨めしく思う。

いつの間にか時代は変わっていくが、意外と普通に順応している自分がいる。器用だと思う一方で、寂しくもあり、思い出したかのように懐古趣味に浸る。

別に、「どうやって音楽を聴くか」なんていうのは、人それぞれのスタイルがあって然るべきで、しっかり対価を払えばその先は自由だろう。自分の意見としてSNSで何か言いたくなることもあるが、自分の価値観を押し付けるようなことは、やはりしたくない。

急速に移り変わる時代で周りに流されず、自分にとって本当に最良な音楽の楽しみ方を見つけたいものだ。そのヒントがラジオにあるのではないか…? たまには周波数を合わせてみるのも一興かもしれない。

對馬拓