RADIO DAYS

RADIO DAYS

今年から僕はとあるレコ屋で働いており、邦楽の入荷業務に関わることがしばしばありました。そのため、邦楽の新譜を例年よりもかなり聴いた感触があります。今年も新進気鋭のアーティストが数多く活躍する日本の音楽シーンですが、やはりベテラン勢の新作にも心を踊らされました。

その中でも個人的に良かったのは、スピッツの『見っけ』と土岐麻子の『PASSION BLUE』でした。この2作品には、とある共通項があります。そう、いずれも「ラジオ」について歌った曲が収録されているのです。

“ラジオデイズ”(スピッツ)と”RADIO”(土岐麻子)は、どちらもかつてラジオを聴いていた自身を回顧するかのような楽曲になっています。これに気づいた時、思わずはっとしました。

なぜか。僕はラジオの存在を忘れてしまっていたからです。

思えば、高校生の頃は毎晩『SCHOOL OF LOCK!』を聴いていました。番組自体を学校になぞらえミュージシャンが先生として登場するこの番組に、僕と同年代であればお世話になった方も多いだろうし、現在10代の学生であれば良く聴いている方もいるはずです。サカナクションやGalileo Galileiなどはこの番組がきっかけで聴くようになったし、抽選で当たった番組のライブイベントが人生最初のライブだったりもしました。言わば、僕にとって「ロック・ミュージックの原体験」の一つと言ってもいいでしょう。

数年前、金融機関で営業の仕事をしていた頃は、移動中の車で聴くラジオ番組が癒しでした。さユりやCommunionsなどはローカル放送のパワープレイがきっかけで好きになりました。The Japanese Houseを知ったのも、とある番組で新人アーティストとして紹介されていたからだったと記憶しています。あの衝撃たるや。

しかし、転職して営業職でなくなった途端、ラジオを聴く時間もなくなってしまい、それから気づけば数年の月日が経っていました。今となっては音楽の出会いの場の大半がサブスクリプションになり、もはやラジオのことなど頭の片隅にすらありませんでした。こうして記事に曲を貼るという点においてもサブスクは非常に優秀で、きっともう手放すことはできないでしょう。

そんな時、僕は突然音楽の中にラジオを見つけたのです。

ラジオというのは、僕にとって言わば「音楽との邂逅の場」でした。周波数を合わせて、ふと耳に飛び込んでくる知らない音楽に感動する。あの瞬間は紛れもなく「奇跡」でした。そして、そうやって「ハプニング的」に出会った音楽は自発的に聴いたものより強く印象に残っていることも少なくなく、僕はそういう貴重な機会をなんとも思わず失ってしまった自分を、とても恨めしく思ってしまったのです。

いつの間にか時代は変わっていて、なんだかんだで普通にそれに順応している自分がいて。意外と器用だなと思う一方で、寂しくもあり、思い出したかのように懐古趣味に浸る。それでいいんだと思います。

別に、どうやって音楽を聴くかなんていうのは人それぞれのスタイルがあって然るべきで、しっかり対価を払えばその先は自由です。たまには自分の意見として何か言いたくなることもありますが、自分の価値観を押し付けるようなことは、やはりしたくありません。

もうすぐ2019年が終わります。急速に移り変わる時代で周りに流されず、自分にとって本当に最良な音楽の楽しみ方を見つけたいものです。そのヒントがラジオにあるのではないか? 僕はそう思って、久しぶりに周波数を合わせます。

おすしたべいこ