この曲のコード進行がすごい!

この曲のコード進行がすごい!

「こういう曲調好きだな」という曲があなたの中にもあるのではないでしょうか?
もしかすると、あなたの好きな楽曲には、コードに特徴や共通点があるかもしれません。

そこで今回は、僕がこれまで聴いてきた曲の中で、「コード進行がすごい!」と感じた曲やアーティストを紹介していきます。

この曲のコード進行がすごい

まずは、僕がコード進行がすごいなと感じた楽曲を紹介していきます。

MISIA「Everything」

超有名なバラードですよね。
しかし20年前の楽曲なのが驚き! 良い楽曲はいつの時代になっても色褪せません。

「Everything」はメロディが単調な代わりに、コード進行がこだわり抜かれています!
これは、編曲者である冨田恵一の卓越した音楽センスによるもの(ヒャダイン氏曰く、コードの化け物だそう)。

所々経過和音(コードとコードをスムーズにつなぐためのコード)としてdimを入れたり、G♭m7・AM7のようなノンダイアニック・コードなどを入れることで、シンプルなメロディを引き立たせているのが特徴的です。

米津玄師「Lemon」

「Lemon」は、米津玄師の人気を不動のものにしたバラードナンバー。
おしゃれだなと感じたのは、2番のサビからCメロへと移行する際に行われる同主調転調です。

同種調転調とは、A♭m→A♭のように主音が同じ音へ転調することです。
転調ながらもどこか共通点を感じ、「Lemon」の幻想的でエモい雰囲気作りに貢献しています。

さらに転調する際に繋ぎのコードとしてE♭が使われています。
E♭はA♭mとA♭どちらでも共通で使われるコードであるため、唐突感がなくなりスムーズな転調できます。

スピッツ「チェリー」

「チェリー」は、スピッツの代表曲の1つ。
使用されているコードがシンプルなため、この曲でギターを覚えた人も多いのではないでしょうか?

素晴らしいのはサビにかけての流れ。

Aメロ、Bメロでは「C→G→Am→Em〜」のカノンコードで始まる王道で明るいコード進行ですが、サビでは「Am→Em→F→C」と若干暗めのコード進行となり、切なさを感じます。
そこでメロとサビを違和感なく繋げるために、サビで「C→G/B→Am〜」を挟んでいる点がシンプルながら素晴らしいと感じました。

コード進行にこだわるアーティスト

次に、楽曲のコード進行にこだわりが感じられるアーティストをご紹介します。

スキマスイッチ

スキマスイッチの楽曲は、王道のコード進行に加えて難解なコードを多々入れており、アコギパートも歌も難易度が高くなっています。

2004年に発売された名曲「奏」では、Cメロからの大サビにかけての壮大さが秀逸!
大サビはB♭からD♭まで3回も転調するうえに、Cメロのコードもその後の転調を匂わすようなG♭M7やA♭が使われており、激しく揺れ動く気持ちを完璧に表現していると感じました。

また、スキマスイッチが子供向け番組のために制作した楽曲「あしたわらおう!」(Eテレ『いないいないばぁ』で流れているあれです)は、子供向けの楽曲であるにも関わらず、聴き手に恐怖を与える(はずの)コード「dim」をふんだんに使用しています。

dimは、ダイアトニック・コードの経過和音として使われることが多いのですが、この曲では前後のコードの影響を受けて怖い印象がほぼなくなります。

このようにスキマスイッチは、音楽理論を熟知したうえで楽曲を制作している、まさに音のプロフェッショナルなのです。

コブクロ

コブクロは、スキマスイッチとは対照的に楽曲で使用されているコードは簡単なものばかりです。
これは作曲をしている小渕が「簡単なコードしか使わない」というこだわりを持っているため。

でもちょっと考えてみてください。

散々色んなアーティストが使い古してきたコード進行で、あれだけの名曲を生み出せるのって凄まじいと思いませんか?
コブクロの曲は誰が聴いてもコブクロと分かります。
2人の歌声や歌詞の影響もあると思いますが、簡単なコード進行で名曲を量産できるのは、圧巻ですね。

僕のお気に入りは「風」のイントロ。
「Cadd9→C→Cadd9→C〜」の流れはなんで誰も今まで思い付かなかったの? と言いたくなるくらい簡単かつ印象的です。

Mr.children

Mr.childrenは、もはや説明不要の日本を代表する4人組バンドです。
ミスチルといえば小林武史によるプロデュースが有名ですが、近年はセルフプロデュースに移行しています。

ミスチルの中で最もコード進行が秀逸と感じるのは「終わりなき旅」です。この曲、曲内で9回も転調します。
しかもイントロのキーはF#メジャーですが、AメロですぐにEメジャーへ、1サビでCメジャーに転調し、イントロ以外でF#メジャーが出てくる機会がありません。

そして大サビでは、もともとCメジャーだったサビがDメジャー→Eメジャーへと転調に転調を重ねます。
まるで紆余曲折ある人生そのものを表しているみたいで、とても好きです。

また、セルフプロデュースに移行してから発表された「here comes my love」のコード進行も特徴的。
特にイントロとBメロは「なんでそんなに暗くしたの?」と思わせるほどダークなコード進行です。

しかしその分、サビにおける明るめのコード進行が引き立っており、暗闇の中に希望の光が差してきたような雰囲気を演出しているのだと感じます。

Official髭男dism

2019年No.1ブレイクアーティストと言っても過言ではないOfficial髭男dism。
楽曲の随所にこだわりが見られ、いちいちおしゃれです(褒め言葉)。

特にヒット曲「Pretender」のコード進行は、豪快にコードを動かしながらもベース音だけ半音ずつ下げてバランスを取ったり、ジャズで用いられるようなツー・ファイブ・ワン進行(例:E♭m7→A♭→D♭M7)を取り入れたりといった特徴があります。

バンドや製作者のこだわりを守りつつ、ヒット曲を制作できるのは本当にすごいですね。

椎名林檎

説明不要の林檎姉さん。
独自の世界観で日本各地に熱狂的なファンを抱える、日本屈指のアーティストです。

楽曲の特徴としては、曲のここぞという場面で用いられるテンションコードでしょう。
テンションコードとは、和音に9、11、13度いずれかの音を足したコードのことで、ジャズなどでよく利用されるコードです。

詞や歌唱法だけでなく、楽曲そのものにもこだわり抜いて、唯一無二の世界観を作り上げている点が素晴らしいと感じます。

星野源

俳優やミュージシャンとマルチに活躍する星野源。
楽曲を聴けば聴くほど音楽に精通した人物であることが分かります。
特にブラック・ミュージックに見られるようなコード進行を多く取り入れているのが特徴的。

ヒット曲も多いですが、サビでは王道のコードながらも、イントロやA,Bではマニアックな試みをしていることが多いのです。
そのマニアックさが良い意味で聴く人にとって違和感となることで、キャッチーなサビがぐっと入ってくるのだと思います。

まとめ

普段何気なく聴いている曲の中にも、製作者のこだわりが詰まっており、何かしらの意図が隠されているかもしれません。

日頃からコード進行について興味を持ち、「この曲はどんなコード進行なんだろう?」と考えて調べることで、音楽はさらに楽しくなるのではないでしょうか。

小林だいさく