正体不明のアーティストが灯すあたたかな光--常夜橙/PEOPLE 1

正体不明のアーティストが灯すあたたかな光--常夜橙/PEOPLE 1

‘‘天国に学校はあるかしら’’

そのフレーズを最初に聴いたとき、コロナ禍で路頭に迷っていた春のことを思い出した。
以前勤めていた会社の籍を余儀なく外され、日々どう生き抜いてやるかだけを考えつつも、本心では今までに感じたことのない虚無感が募っていたからだ。
社会の歯車から外され、人と会うことを憚られ、無味乾燥とした毎日にただ鬱屈とした感情に陥るばかり。

SNSでは素性の知らない人間同士がいがみ合い、答えのない問題を持ち出して不毛な争いで傷つけ合っている。社会にもインターネットにも身を置く場所がなかったあの頃、私は心のどこかで‘‘天国に学校はあるかしら’’などと、憂う感情を天に嘆いていたのかもしれない。

* * *

顔や名前を隠して活動するアーティストは、今や珍しいことではない。しかし、PEOPLE 1に関しては今現在、本当に僅かな情報しか明かされていないのだ。バンドなのか個人なのか、また活動拠点はどこであるかも分からないまま、我々は彼らが名刺代わりに差し出した楽曲を順に聴いている状況、ということだ。

2019年から活動を開始したという彼らは、現時点で数曲のMVをYouTube上にアップしている。既に早耳のリスナーを中心に高く評価されている段階だ。心地良く弾むようなテンポで奏でられるピアノサウンドと、フランクさを感じる親しみやすいヴォーカル。社会そのものを一歩引いて見ているような歌詞に加えて、遊び心をふんだんに散りばめたメロディラインが痛快である。

‘‘才能って一体何だろうね’’‘‘そんな些細な妄想で 胸の爆弾は軽くなるの 先延ばしの朝を迎えて’’

物書きになったのは、「それ以外に秀でた才能に恵まれていないから」だった。もちろん、文才と言えるほどの実力も、未だ持ち合わせていないのだけど。

幼少の頃から文章が好きだから、親の反対を押し切ってこの道を選んだ。今となっては至極ありふれた理由である。私はそんな<ありふれた>有象無象の1人に過ぎない存在だが、心の奥底で日の目を浴びたいと思っているのも、また事実だ。
恥ずかしい、と自分でも思うが仕方がない。自分の原動力は、いつか爆発するかもしれない‘‘胸の爆弾’’を鎮めるには、今はまだ手が届かないとて、夢を見続けること以外にほかならないのだ。

‘‘この世界では 人をだましたり モノを盗んではいけないというの’’
‘‘臆病な自尊心に 匿われて目覚めたのは あの頃の僕らだ’’

おそらく私は、この先も同じように日の目を見る時を待ちながら文章を書き続けるだろう。時には心ない言葉を浴びたり、また例え故意であっても、その逆だって起こり得ないことではない。その度に過ちを認め、また繰り返し、つまりは自尊心を振りかざしながら、今後も書き手としての生活を続けていく。

我々は--少なからず私は臆病な人間だ、と思う。自尊心を守るべく様々なものを犠牲にしているから。完璧主義でありたくとも、やはり本質を覗いてしまえば不完全なのだ。コロナ禍から、沢山の人々の欠落してしまった部分を見た。しかしそれは、私においても欠けていた部分だったのだ。

‘‘それならば 欲しいものなど君にあげるよ 例えばこんな胸の常夜燈も’’

だが、そんな私にもPEOPLE 1は優しく宥めるように声をかける。
この先どれほど道に迷おうとも、正しい道へと誘導する穏やかな光を、彼らはそっと照らしてくれる。

葛藤と煩慮が交錯する混沌とした日々の中で、私は今、PEOPLE 1という1つの灯に出会ったことを、今日はここに記しておこうと思う。

RELEASE

PEOPLE 1「常夜橙」

PROFILE

 

◯公式Twitter:https://twitter.com/PPP_PEOPLE1

翳目