長年音楽を聴いていると、音楽への新鮮さを感じられなくなってくることを実感する。しかし、稀に自分の琴線に触れる作品に出会える瞬間がある。テクノ狂として90年代から現在のシーンまで追いかけているが、そんな1枚に出会うことができた。
彼の名前はRiley Crane。2003年3月15日生まれの21歳、アメリカ・ペンシルベニア州出身。彼は約4年間、Gargoyleとして活動している。彼とオンライン上でコミュニケーションを取りながら、1stアルバム『Analog Kid』について話を聞いたので紹介したい。
レイヴで演奏するGargoyle(本人提供)
2024年から始動したテクノ/エレクトロニカのレーベル、Gimmedangerの第1作目としてリリースされたのが、Gargoyleの『Analog Kid』である。レーベル・オーナーのKingsrhymeはSoundCloudで世界中のひたすらにクールな電子音楽をディグり、彼をヘッドハンティングしたという。筆者もGargoyleの楽曲を聴いた時のインパクトを確かに憶えている。
「Aphex Twinの再来だ……」
マッドなリズム・パターン、上ネタのメロディー、ハードウェアであるベース・マシンのTB-303、リズム・マシーンのTR-909とTR-606、これらの使い方は間違いなくAphex Twinの影響であることを一瞬で理解した。彼は正真正銘のAphex Twinのフォロワーであり、その上でKid 606やMachine Girl、Venetian Snaresをミックスさせたかのような新しいサウンドを作り上げた。無機質な音の連続。その上で生身の人間が作り上げる有機的メロディー。この塩梅が正しくAphex Twinの特徴であると筆者は考えるが、Gargoyleはこれを見事に受け継いでいる。そして彼自身もこう語っている。
I think at the time I began to realize the magic in the last side of Syro. Such a strange blend of modular and perfectly selected classic drum machines. And there’s always a weeping pad with a melody you can hum.
『Syro』(2014)の後半で彼の魔法に気付き始めた。モジュラー・シンセとドラム・マシンの奇妙なブレンド。そして鼻歌で歌えるメロディー。
さすがRiley……と会話をしていて嬉しくなってしまった。
今作は18曲にも及ぶ長尺であるが、全く飽きを感じさせることのない様々な工夫や展開に溢れている。そして、最終曲「Primatic VB 159」を聴くと彼のテクノへの愛を感じる。ミョンミョンとうねるTB-303のアシッド・ベース。跳ねるリズムに自然と身体を揺らしてしまう。シンセの上ネタが終盤でプリペアド・ピアノのようなサウンドに変化すると、Aphex Twinの『Drukqs』(2001)を思い出さずにはいられず興奮した。そして最後はベース・ソロが流れ、3秒の余白を残しこのアルバムは終わる。ひたすらに激しい音のラッシュが続くこのアルバムで、最後は叙情的に終焉する。意図したものか分からないが、なぜかこの3秒の余白が筆者にとっては非常に感動的であった。
21歳にしてこの才能は天才という言葉に値するのではないか。新作EPも制作中とのことで、今後の作品にも期待したいアーティストだ。
Gargoyle『Analog Kid』
仕様:Digital / Cassette
レーベル:Gimmedanger
リリース日:2024/01/11
トラックリスト:
1. Dbt Tek
2. 15 Keystepper
3. Repentance
4. Expression 191
5. Balldelay
6. Spoon Gore
7. Jester
8. Circuit Circus
9. Phalpro Analog
10. Point A Click
11. Uteye
12. Koral Kicker
13. Dark Dice
14. Acid Master Goyle
15. Cabfunk 153.90
16. 16
17. Gargoyle Theme 1
18. Prismatic VB 159
*Bandcamp:
https://gimmedanger.bandcamp.com/album/analog-kid