東京発の4人組オルタナバンド、ルサンチマンによる2ndフルアルバムは、彼らの自然体が表出した作品と相成った。
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まず特筆すべきはその曲順。前作『ひと声の化石 / rebury』はボーカル曲を収めたDISK1とインスト曲をパッケージングしたDISK2の2枚組だったが、今作ではボーカル曲とインスト曲がシームレスに接続していく。<a href="https://lp.p.pia.jp/article/news/286175/index.html?detail=true&page=2" target="_blank" rel="noopener">北（Vo. Gt.）は鉄風東京の大黒崚吾（Vo. Gt.）との対談にて1stフルアルバムを振り返り、「変わったことを意識的にやってるというか、周りと違うことをやらないと埋もれちゃうんで」と語っている</a>けれど、前作の類を見ない構成は「ルサンチマンとはどんなバンドか？」という問いに対して明瞭に回答するための、ひとつの見せ方だったのだろう。
一方、今作では、グランジーに暴れるリフと高速で紡がれるスラップが印象的な「yeah yeah yeah yeah (Prelude)」から「いやいやいやいや」へ結ばれていくブロック然り、ジャジーに爪弾かれる音色とヘビーなビートが織り交ぜられた「IAI」から「忘れそう」へ突入するブロック然り、楽曲同士のバトンパスが極めてスムーズ。これまで彼らのライブで顕著だった、肉声を楽器の一種として捉えながら、あるいは技巧的なフレーズをぶつけ合いながら、強固なアンサンブルを築き上げていくルサンチマンのスタイルが、本音源においてものびのびと表現されている。
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こうした等身大を袋詰めした質感はリリックにも反映されており、たっぷりと尺を確保したストロングなイントロから一気にまくしたてる「BUT STRAIGHT」にて、彼らは＜嘲笑 ニヒリズムはもう終い＞と断言し、＜パッとしない旅よ BUT STRAIGHT＞と口にしてみせる。穿った視線で物事を眺め、手放しに投げ出すのではなく、繰り返される凡庸な日々の中で美しきものを、鮮やかなメロディーを追求していくのだと誓う。＜こんな気持ちを探してた やっと見つけたメロディ ずっと 歌っていよう＞と歌う「ずっと、メロディ」からも読み取れる、腹を括った4人の表情。その背景には、彼らの同世代が社会へ旅立ち、学舎に守られていたこれまで以上に自己決定を迫られるようになっていくタイミングだったことも影響しているようだ。
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<a href="https://rockinon.com/interview/detail/213586?page=2" target="_blank" rel="noopener">今作のリリースインタビュー</a>にて「僕は今年就職の年なんで、新社会人とか同世代に向けての応援ソング的な意味合いもある」と明かされている「きっとそう」のみならず、カードゲームで遊びふけった日々を思い返しながら「やってみたい」と「遊びたい」だけで成立していた毎日の先で再会しようと口ずさむ「約束は午後四時に赤い屋根の公園で」も、＜救ってやろうだなんて 嘘はつけないよ＞とルサンチマンのリアルを開けっ広げにし、＜恥ずかしくたっていい ひとりの君は 誰も遮れはしない＞と力強く告げる「光」も、全てが4人からのささやかなエールである。
しかし、彼らは孤独を分かち合おうとも、手を強引にとろうともしない。ただ、「お前はお前のままでいい」と言いきり、同時に「俺らはこのままでいいよな？」と問い続ける。同じ道を肩を組んで歩むのではなく、各々が横並びの独立したルートを踏みしめ、ときに目配せをしつつ無事を確かめる。身を削り、その削りカスを燃やすように絶唱してきた4人が、＜僕は君を誇るよ＞＜そう、だって君は 間違ってないような気がする 間違ってないよ きっとそう＞（「きっとそう」）なんて温もりに満ちた一節を綴ったこと。このアルバムでようやく、私はルサンチマンの本心を知れた気がする。
<h2>【INFORMATION】</h2>
ルサンチマン
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『一生モノの陽射し』
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RELEASE 2025年11月5日 
LABEL Blue echo records
視聴リンク： 
<a href="https://pcim.lnk.to/issyo_monono_hizashi" target="_blank" rel="noopener">https://pcim.lnk.to/issyo_monono_hizashi</a>
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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

星野

ルサンチマン『一生モノの陽射し』──日々の疑問と懐疑に注ぐ4人の温かな本心

2003年埼玉県生まれの魚座。2021年より音楽学研究室に所属し、ライブハウスやロックフェスティバルのコミュニティについて研究。SPICE、BARKS、リアルサウンドなどに寄稿。

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ルサンチマン『一生モノの陽射し』──日々の疑問と懐疑に注ぐ4人の温かな本心

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