推し俳優への思いを18回にわたり語ってきた『<a href="https://musit.net/feature/my-favorite-actor" target="_blank" rel="noopener">スクリーンで君が観たい</a>』に続き、新連載となる『シーンで君を切り取りたい』では、映画ファンなら誰しもが心躍らせたあの映画やこの映画の名シーンにフォーカスを当て、私、安藤エヌが心をときめかせた理由を思いのままに綴っていく。
前回の連載から引き続き「映画が好きで好きでしかたない」という感情をコアに据え、私と同じく映画を愛する読者の皆様に楽しんでもらえるようなコンテンツをお届けしたいと思っているので、改めてお付き合いいただけたら幸いだ。
記念すべきオープニングに選んだのは、幼少期からその世界観の虜になり、今も愛し続けている『ハリー・ポッター』シリーズより『ハリー・ポッターと賢者の石』。2001年に公開され、熱狂的なムーヴメントを起こし日本中を魔法にかけた正真正銘の名シリーズの堂々第1作目である。
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当時9歳だった私はちょうど主人公のハリーと同じくらいの歳だったのもあって、彼のようにいつかホグワーツ魔法魔術学校からの入学証が届くと思っていたし、9と3/4番線からホグワーツ特急に乗れると信じていた。本作が子どもたちに与えた夢はとてつもなく大きなもので、魔法、という非科学的なものに対して綿密なバックボーンとリアリティを帯びたアプローチをし、本当に自分たちも魔法が使えるのではないか、と思わせる魅力に心酔したものである。
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いつになっても醒めない夢のような作品である本作。当然、人々を魅了してやまない名シーンのオンパレードで、最初から最後まで長時間語ってしまいそうな勢いの作品なのだが、なかでも私がここは、と思うシーンがある。仲間のロン、ハーマイオニーと共に闇の魔法使いヴォルデモートに対峙するまでのシーンで、様々な困難が彼らを襲うのだが、その一つに「人間チェス」がある。その名の通りで、人間が駒となって戦う巨大なチェスのことだ。自分たちのいる場所が巨大なフィールドになっていることに気付いたハリーたちは行く手を阻む敵を突破するためにチェスを始めるのだが、そこで活躍するのがハリーではなく、チェスの得意なロン・ウィーズリーなのである。
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私はこのシーンでの彼を見て、以降ずっと彼のことを「勇敢で仲間想いのすばらしい級友」として愛することになる。ロンは赤毛のウィーズリー一家の末息子で、それゆえに少し甘えん坊で反抗的な部分がありつつ、家族から譲り受けた生粋のグリフィンドール（ホグワーツの4つある寮の1つ、勇敢で度胸があり大胆な生徒が選ばれる）の気質を持っている。その気質はシリーズ最終章に至るまで描かれ、この『賢者の石』のワンシーンはそうしたロンの勇ましさを最初に描いたシーンと言える。
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もう、本当にこのシーンのロンが半端なくカッコいいのだ。ハリーを先に行かせるため（勝負に勝つため）、自分が捨て駒となって犠牲となり、敵の駒に薙ぎ払われ気を失い、その隙にハリーがチェックメイトをする──これほどまでに「グリフィンドール」の気高き黄金の精神で繋がった友情があるだろうか。改めて彼らの友情の素晴らしさに感じ入ると共に、ロンという1人の男の子がいかに獅子のごとき心を抱いているかに心を動かされるのである。
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このシーンはシリーズ中でも特に忘れられないが、他にも観客の心をぐっと掴んで離さない「魔法」のような場面がたくさんあるので、小さい頃に観ていた人も、大人になってから初めて観る人も、ぜひ『ハリー・ポッター』シリーズの奥ゆかしい魔法使いたちが織りなすドラマを楽しんでみてはいかがだろうか。きっと私のように、この世界のどこかにそびえる荘厳かつ優しさをたたえたホグワーツ城とそこで学ぶ小さき魔法使いたちに思いを馳せてしまうことだろう。
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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

星野

【シーンで君を切り取りたい vol.1】魔法使いの友情ドラマに祝福を──『ハリー・ポッターと賢者の石』

日芸卒フリーライター。「生きづらさと愛を書く」をモットーに音楽、映画、マンガなどの分野で執筆活動中。主な掲載先はrockin’on、リアルサウンドなど。

安藤エヌ

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