私を構成する9枚【寄稿/dora_e_m編】

私を構成する9枚【寄稿/dora_e_m編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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X JAPAN『Jealousy』(1991)

X JAPANが、まだXと名乗っていた頃。当時小学生だった自分にとって、このアルバムの第一印象は「怖い」というものだった。母が夢中になっていた本作から流れる音はとにかく攻撃的で、速く、またヴィジュアルも衝撃的。そして結局のところ、当時受けたその衝撃が今も自分の中に息づいている。美旋律と激情が交錯する「Silent Jealousy」、速すぎてもはやスピード違反な「Stab Me In The Back」、不気味な「Love Replica」、珠玉のバラード「Say Anything」。様々な音楽を聴くようになってから改めて聴くと、なんてグチャグチャなアルバムだろうと思う。そしてグチャグチャだからこそ美しく、魅惑的で、30年経った今も自分の心を捉えて離さない。

The Who『Who’s Next』(1971)

「あのザ・フーが来日するらしい」--。2004年のことだった。当時大学3年生、オアシスやレディオヘッドなどのUKロックを起点に音楽マップを広げていた自分がフーにたどり着くのは時間の問題だったが、この<初来日>という大事件がその時期を早めたのは間違いない。せっかくだから聴いてみるか、と手に取ったのがこの作品。1曲目からぶっ飛ばされる。不可思議な電子音のループとダイナミックなサウンド、雄大な歌声に暴れ回るドラム。これがビートルズと同時代のバンドなのか、と腰を抜かした。9曲全てが名曲、キメのフレーズが満載のロックの金字塔は、「無法の世界」でのロジャー・ダルトリーの「イエーーー!!」の雄叫びと共に脳裏に刻み込まれ、生涯忘れられないものとなった。

井上陽水『LION & PELICAN』(1982)

初めて聴いたのがいつだったか思い出せないくらい深く記憶に刻まれた作品。祖母が好きだった井上陽水のことをよく覚えているという事実は、小さい頃に祖母の家に預けられていた時間が長かったことを示している。この上なく美しいメロディに乗せられる不条理な歌詞は、あまりにも原体験すぎて不条理であると気づくまで20年ほどかかった。あなたがライオンで私はペリカン、幼かった私にはそんな世界が自然と受け入れられたのだ。浮遊感溢れるシンセを始めとして、80年代然とした音。浮ついた時代と井上陽水の歌は、実にマッチしていたのだろう。そしてそんな歌を幼少の頃から、ソラで歌えるくらいに聴かされて育った私が浮ついた人間であることは無関係ではない。いいんですよ、ワカンナイものはワカンナイで。

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◯執筆=dora_e_m
Twitter:@dora_e_m

musit編集部