私を構成する9枚【寄稿/ヤバいアジフライ編】
#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。
アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。
* * *
・school food punishment『amp-reflection』(2010)
・BOOM BOOM SATELLITES『SHINE LIKE A BILLION SUNS』(2015)
・岡部啓一(MONACA)『NieR Gestalt & Replicant Original Soundtrack』(2010)
・小林太郎『Orkonpood』(2010)
・MOROHA『MOROHAⅢ』(2016)
・the band apart『K.AND HIS BIKE』(2003)
・amazarashi『爆弾の作り方』(2010)
・David Nevue『In the Soft Light of Grace』(2019)
小林太郎『orkonpood』(2010)

彼を知ったのは私が高校1年生の終わり頃。当時一緒にバンドを組んでいた先輩がTSUTAYAで借りてきたCDを、そのまま聴かせてもらったのが始まりだった。デビュー当時はまさかの18歳。業界から和製カート・コバーンと注目される歌声に、オルタナやグランジのテイストを取り入れながらも、聴き応えのある骨太なロック・サウンドをフライングVで掻き鳴らす孤高の姿に徐々にハマっていき、大学生~社会人になってもその音楽を追い続けた。彼のライブきっかけで知り合った女性に4年近く片思いし続けたことは私の人生の中で淡い青春として記憶に残っている。彼を知ってもう10年近く経つ。今はインディーズで活動しているので、今後の活躍も期待したい。
MOROHA『MOROHAⅢ』(2016)

彼らはここ5年ほどで一番ハマったアーティストかもしれない。それまではいわゆるギターやベース、ドラムといった構成の邦楽バンドを好んで聴いていた自分が、まさか1アコースティック・ギター、1マイクロフォンのヒップホップにのめり込んでいくとは、人生とは不思議なものだ。先述した通り至ってシンプルな構成のはずが、ギター担当UKのテクニックが控えめに言ってエグすぎるため、文句なしの良曲揃い。そこにラップ担当アフロが放つ、熱情や慈しみを含んだ優しさをリリックに乗せて歌う姿に、すっかり心を射抜かれてしまったのだ。それ以来、辛いことがあった時はMOROHAの曲にすがるようになった。恐らくこれからもそうだろう。
BOOM BOOM SATELLITES『SHINE LIKE A BILLION SUNS』(2015)

BBSとは生き様である。活動初期から常について回ったヴォーカル・川島道行の脳腫瘍との闘い。それを相方として支え続けた中野雅之。私自身、学生時代に「それが原因で死ぬことはないが一生抱えなければならない難病」を患ったことから、彼らの音楽に対する姿勢、生き様に感銘を受けたのだ。
この作品を知ってから彼らの他のアルバムを聴き漁ったのが2015年冬。その1年後、川島は47歳という若さでこの世を去るが、アーティストの訃報で涙を流したのは生まれて初めてだった。それ以降、秋になるとこのアルバムを聴き返すことが恒例となっている。300文字では到底言い表せない彼らの生き様と魂の楽曲群を是非聴いてみてほしい。
* * *
◯執筆=ヤバいアジフライ
Twitter:@yurickowen
musit編集部




