私を構成する9枚【寄稿/St.Yoshiharu編】

私を構成する9枚【寄稿/St.Yoshiharu編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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槇原敬之『SMILING〜THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(1997)

小学6年生の時、家族で北海道旅行へ行き現地でレンタカーを借りたのだが、車内で聴くCDは父親が持ってきていたこのベスト1枚のみで、移動中延々と繰り返していた。おかげで収録曲は全て歌えるほどに家族みんな槇原敬之が好きになった。ベストアルバムなので、発売当時までのヒット曲が目白押し。その中でも1曲目の「No.1」に当時12歳の僕は虜になっていた。非の打ちどころのないサビの美しさは子供でも口ずさみやすく楽しい。歌うことが楽しいと感じ始めたのもこの時からであったと思い返す。そして大人になった今でも、ドライブ中によくこの曲を流し歌っては家族4人で歌を楽しんでいたあの北海道旅行を、クラーク像や札幌の風景を、思い出すのだ。

ナンバーガール『NUM-HEAVYMETALLIC』(2002)

高校1年生。いじめっこしかいない軽音部には入れず、悔し涙を流しながら1人家でギターを弾いていた僕がアジカン経由で知ったのがナンバーガールで、初めて聴いた感想は「歌下手!」だった。しかし何度も聴き直すうちに歌もの至上主義の価値観は崩壊し、以降爆音オルタナティヴに傾倒していく。僕は彼らに変態にさせられた1人だ。その中でもこの1枚はサウンドの騒音性は控えめだが、その代わりタイトで重い。そしてヴォーカルが今までよりも立っていて、より向井秀徳の内面性、変態性が輪郭を持った1枚だ。血の匂いを放つ生々しい性の気配に高校生の僕は心酔していたし、華やかな高校生活の影にいた僕の妄想を暴走させるのにはぴったりだった。正真正銘、僕はナンバーガールに変態にさせられたのだ。

嘘つきバービー『問題のセカンド』(2008)

大学受験期。YouTubeでバンドを漁るのが勉強の息抜きだったのだが、その時に見つけたのが嘘つきバービーだった。変態性の中に1本通ったストレートなガレージ・サウンドに惹かれ、僕は予備校近くのタワレコに駆け込みこの1枚を購入した。まるでギャグ漫画を音楽にしたような世界観。ギター・サウンドがパンク性を持ちながら飛び道具のようなリフを放ち続け、歌メロ、歌詞にも振り回されるがどこかキャッチー。気付けば嘘つきバービーを聴くことが僕の受験を支えるささやかな楽しみになっていた。今は解散し、ヴォーカルの岩下氏はニガミ17才で大活躍しているが、未だに僕は受験期を支えてくれた嘘つきバービーばかりを聴いている。音楽で大笑いしたあの日々は間違いなく僕の救いだった。

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◯執筆=St.Yoshiharu
Twitter:@SUGARSWEETNGSZB
Instagram:@st_yoshiharu

musit編集部