私を構成する9枚【寄稿/三代目齋藤飛鳥涼編】

私を構成する9枚【寄稿/三代目齋藤飛鳥涼編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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Radiohead『Kid A』(2000)

学校1のイケメンが「なぁレディオヘッドってめっちゃかっこよくね?」って俺に話しかけてきた。何を隠そう当時の俺にとってレディオヘッドは大の天敵、まさかそんな天敵の名前がシーブリーズのCMで広瀬すずとイチャコラしてそうなイケメンの口から出るなんて思わなかった。素直にそんな好きじゃないと言えばいいものの、負けじと「おぉ、最高だよな」という負けず嫌いの俺。いかんこれでは話を合わせられんと、急いで近所のTSUTAYAでこのアルバムを借りて帰ったのを覚えてる。汗だくになりながらプレーヤーの再生ボタンを押した瞬間、そのあまりにも冷たいイントロに俺の汗が一瞬で引いた。世界が変わったんだ。俺は本当の意味で音を楽しむ=音楽の歓びを知った。

Prefab Sprout『Steve Mcqueen』(1985)

高校時代、彼女と別れると決まってプリファブ・スプラウトに逃げ込んでいた。1度目はメンヘラ気質な彼女から電子辞書越しに「死ね」と言われた時、2度目は円満に別れたと思った次の日帰国子女のバスケ部の長身塩顔イケメンと浮気してるという話を聞いてしまった時。どれも今となっては飲み会でヤヤウケぐらいの笑い話に消化できたけど、当時はガチでメンタルをエグられまくった訳で、そういう時はこのアルバムに逃げ込んでどうにかしようとした。いつ聴いてもこのアルバムは冷たい木枯らしが吹いていて、肌がヒリヒリするようなメロディとウェンディ・スミスのコーラスが傷を舐め合うように俺を包み込んでくれる。ああそうさ、俺はいつだってこのアルバムで色んなこと乗り越えてきたんだ。

The 1975『Notes on a Conditional Form』(2020)

2019年8月16日、サマソニで衝撃的なライブを目の当たりにしたあの日から俺と『NOACF』の歴史は始まったと言っても過言ではない。中2の時に彼らを知って以来ずっと追っかけてきたが、「People」を皮切りに過去1の期待感を持ってこの作品の動向を逐一チェックしてきた。そして来たる2020年5月22日0時、再生ボタンを押した瞬間無限の音楽の冒険に繰り出した。まとめる気が一切ないバラエティ溢れる楽曲は、カテゴライズされることを嫌う現代の若者を象徴する内容だ。そして何よりもコラボ曲を導入したり、最後に「Guys」など人との繋がりの重要性を歌ったことに大きな意味があると思った。今は賛否両論ではあるが、多くの人に愛される名盤として評価を確立する日はそう遠くない。

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◯執筆=三代目齋藤飛鳥涼
Twitter:@askaryohukkatsu
note:https://note.com/askaryo3

musit編集部