私を構成する9枚【寄稿/工藤祐次郎編】

私を構成する9枚【寄稿/工藤祐次郎編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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Hi-STANDARD『MAKING THE ROAD』(1999)

楽器を始めたきっかけは中学生の頃、高校の先輩達の影響で聴き始めたHi-STANDARDだった。ハイスタだけでなく、当時擦り切れるほど観た《AIR JAM 2000》のVHSに出ていたバンドを聴き漁っていた。それまで流行りのJ-POPしか知らなかった僕にとって、彼らの音は刺激的で反抗的で、何よりとても格好良かった。そうして「おれもギター弾くぞ!」と思った訳だが僕より少し早くギターを始めた友人がおり、「まずい、今からでは彼に勝てない」と考えた僕は、対等な関係を築くため「じゃあおれがベース弾いてやるよ」とベースを弾くことにした。とはいえベースなんて田舎の山奥の中学生にとって簡単に買える代物ではなく、音楽室にあるクラシックギターの下4本の弦でボボ〜ボボボ〜ボとルート音だけ弾いてた。

The Band『The Band』(1969)

本格的な音楽への目覚めは10代の終わり頃、音楽好きの先輩から借りた『ラスト・ワルツ』のDVDだった。ザ・バンドなんて知らない、出演者の名前を見てもボブ・ディランやエリック・クラプトンくらいしか聞いたことない知識の僕である。そんな僕が、ぼたぼたと涙を流しながらザ・バンドの解散コンサート映画を観ていた。何にそんなに感動したのか分からない、泣きの演出なんて一切ない、けど、画面に映るミュージシャンたちの音楽への愛が、情熱が、音を鳴らす喜びが、これでもかと僕の全身を打ち貫く。「僕も音楽をやりたい」と強く思った。流行やファッションの全く関係ない、ただ純粋に「良いなぁ」と思える音楽をやりたいと思った。

魚座『メルヒェン地獄』(2007)

大学生の頃、サークル内で熱心にコピーバンドに打ち込んでいた僕は、ある日先輩に誘われ近所の小さなライブバーに連れて行かれた。そこに出演していたのが魚座である。聞けば同じ大学の先輩たちだという。『メルヒェン地獄』はそんな魚座のお手製CD-R。これまでの人生でもう何度聴いたことだろう。こんなに身近にいる人がこんなに良い曲を書けるのなら、自分にもきっとできるはず、と僕が創作を始めるきっかけになってくれた。ここに収録されている「おとぎの国」は、いつか超えたいと思いながらずっと超えられない、あまりにも大きな1曲。

“騙しおおせても明日は今日のつづき 今度目が覚めるその時までの夢”

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◯執筆=工藤祐次郎
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musit編集部