私を構成する9枚【寄稿/諦念編】

私を構成する9枚【寄稿/諦念編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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hide with Spread Beaver『Ja,Zoo』(1998)

出会いは中1。同級生の友達におすすめされたのがhideだった。初めて「ROCKET DIVE」を聴いた時、なんだか分からないが良い曲だとすぐに察知した。当時テレビで流れている音楽しか知らなかった私に、初めて音楽、ロック・ミュージックを意識させた。それは自意識の池に一雫の異物として、今まで体験したことのない「音楽」が垂れた瞬間だった。以降、様々な音楽を湯水のようにドボドボと自意識に足していく訳だが、最初の一滴は間違いなくhideだった。V系の枠に囚われない音楽性、ダミ声と芯のある太い声を巧みに使い分ける歌唱、そして何より根底に貫かれたポップの美学。私の耳は依然としてhideの美学に取り憑かれている。今もなお「ポップであるか」を判断材料とし、中1の耳を持ったままなのだから。

Mogwai『Mr. Beast』(2018)

私のモグワイ初体験が本作である。高校時代、近所のTSUTAYAに通い詰めており、5枚1000円の割引サービスで毎週のようにアルバムを借り漁っていた。その際「Aから順に気になるアーティストのアルバムを借りようキャンペーン」を実施していた私は、「M」にぶち当たった時、何気なく本作を借りてみた。当時はポストロックというジャンルをよく知らずにいたが、不思議と本作の魅力に取り憑かれ、毎晩寝る前に必ず聴いていた。それぞれの楽曲に大地を揺さ振るような力強さと淀みない美麗な旋律が奏でられている。このアルバムとの出会いを機に、ポストロックやシューゲイザーの扉が開かれ、それらに分類されるサウンドを聴き漁ることになる。

転校生『転校生』(2012)

刹那の思い出と密接にリンクしている本作。それは車の免許合宿に行っていた時のこと。私はすこぶる運転が苦手で、毎日が憂鬱で仕方がなかった。朝、教習所へ向かうバスの中、そして授業が終わりホテルに帰るバスの中で、なぜか本作ばかり聴いていた。1曲目から自殺を想起させる詩で始まり、息を吐くように生々しく語りかけてくる儚げな少女の歌声、《みんなのうた》に通ずる超ポップなメロディ。最終曲は「きみにまほうをかけました」で終わる完璧なエンドロール。バスの窓から眺める外の景色と、なぜか妙に調和していたのを覚えている。「転校生」こと水本夏絵は今では本当に転校してしまい、魔法をかけたまま活動休止してしまった。免許だけは何とか取得したが、解けない魔法の亡霊となった私は未だにハンドルを握れずにいる。

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◯執筆=諦念
Twitter:@QPzrq

musit編集部