私を構成する9枚【寄稿/tak編】

私を構成する9枚【寄稿/tak編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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X JAPAN『Jealousy』(1991)

ほぼ全裸の男が暗い部屋で吊るされながら無数の手に掴まれている意味不明なジャケット。歌詞カードには統一感ゼロの衣装のメンバーに金髪を逆立てたヴォーカル。当時、流行の歌しか聴いていなかった地方のいち中学生の脳裏には疑問符ばかりが浮かんだが、カオスに彩られたピアノソロ序曲から、劇的にも程があるメロディックな疾走曲を聴いた頃にはその得体の知れない魅力に取り憑かれ、結果的に夜中にこっそりアイシャドウを塗るところまで精神侵食された罪深い1枚。音楽性云々を超えた「説明不要の八方破れなパワー」こそがこの作品の肝であり、この時の刺激を求めて僕は音楽ジャンキーになった。

七尾旅人『雨に撃たえば…! disc2』(1999)

大学時代、ガチガチのメタル野郎だった僕に多様な価値観を教えてくれた1枚。音楽も歌詞も何1つ類型的でなく今まで聴いたことのない音や言葉ばかりが詰まっているのに、ずっと昔から側にいるかのような親近感があり、とても不思議な感覚を覚えた。「自分は他者と違うはみ出し者である」という思春期特有の拗らせを、否定も肯定もせずにただ静かに聞いてくれたこの音は、自分の生き方に大きな影響を与えてくれた。あらゆる柵を超え、五感に直接訴えかけてくる七尾旅人の歌声は国宝認定するべき。

溶けない名前『制服甘露倶楽部』(2017)

仕事もプライベートも上手くいかず、混乱を極めていた時期に転機を与えてくれた作品。「ノイズと儚い歌」というステレオタイプで陰鬱なシューゲイザーに食傷気味だった僕に、ナンバーガール由来の荒れ狂う突進ベースと全く遠慮のないドラム、それと対峙する強すぎる歌メロは、「枠に捕らわれないことの素晴らしさ」を称えながらどこまでも希望を持って響いた。1stアルバムより前からSoundCloud上にアップされていた「制服甘露倶楽部」「恋をするウイルス」が白眉。

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◯執筆=tak
Twitter:@takmetalonmetal
BLOG:tak METAL ON METAL

musit編集部