私を構成する9枚【寄稿/レガスピ編】

私を構成する9枚【寄稿/レガスピ編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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Nick Drake『Pink Moon』(1972)

ニック・ドレイクの死の間際に録音された、デモテープのようなアルバム。高校1年生の春に出会って以来、時宜を選ばず何度も聴いてきた。11曲29分と小品ながら無人島にはこれ1枚持っていけば事足りる気がする。変則チューニングのアコギによって爪弾かれる旋律と呟くような歌唱に、私は何度も救われてきた。絶えず死の匂いをまとわりつかせながらも、そこにはっきり示されるか細い希望に勇気付けられてきた。あらゆるものをはるかに凌駕する<なにか>を見てしまった人の短い遺言のような音楽。若い頃には決して気が付かなかった、扉から垂れ下がった「真実(Place to Be)」とは一体何だったのだろうか。私もいつかそこに達しえるのだろうか?

Slint『Spiderland』(1991)

同年リリースされたニルヴァーナの『Nevermind』と共に、その後のロックに比類なき影響を与えてしまった作品であり、私の嗜好を決定づけ評価軸の1つにもなった作品である。高校時代、鬱屈とした気分をこのアルバムに代弁してもらっていた。クリーントーンと轟音を行き来するギター、最小限しか鳴らさないベース、か細いヴォーカル、それらをとりまとめるドラムによるキワキワの緊張感に満ちたバンド・アンサンブルに度肝を抜かれ、うっとりし、半ば狂気すら覚えた。この衝撃から私はポストハードコアやマスロックを漁る日々に没頭し、貴重な高校生活を音源のディグへと捧げてしまうことになるのだが…。この世で1番かっこいい音楽は何か?と聞かれたら、私はすぐに「Washer」を挙げる。

Modest Mouse『Building Nothing Out of Something』(2015)

既発のシングル、EPの音源を集めた編集盤だが、これも何度も聴いた。3ピース体制の頃のアイザック・ブロックが書く、諦念と焦燥がないまぜになった歌詞とヤケクソじみた歌唱法に感化されて、私はいつも泣いていた。正解のない会話、ぐるぐる同じ所を巡り続けるだけの人生、終わりのない苦しみ…。生活の中のありとあらゆる感情が詰まった曲群と、西海岸の塩辛い空気を思わせる乾いた録音が、擦過傷的な痛みを聴く者に感じさせる。演奏はお世辞にも上手いとは言えないが、それ以上に鬼気迫る生の感情が乗っている。創作のインスピレーション元として大いに影響を受けた。このアルバムを聴く度、私は生きねばならない、と思う。

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◯執筆=レガスピ
Twitter:@mimilegazpi
BLOG:legazpionmusic

musit編集部