私を構成する9枚【寄稿/駒澤零編】

私を構成する9枚【寄稿/駒澤零編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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livetune feat.初音ミク『Re:Package』(2008)

初めて買ったボーカロイドのCDであり、初音ミクの名を冠した初の全国流通CDでもある。今や多くのアニソンを手掛け、Google×初音ミクのCMソング「Tell Your World」で全世界にその名を馳せたlivetune。本作では「Packaged」「ファインダー」とボカロ黎明期のリスナーを震撼とさせた名曲群に加え、オートチューンを駆使したコーラスワークが光る。2012年のTOY’S FACTORY移籍後はEDMを取り入れダンサブルな曲調に発展していくが、この頃の作品はlivetuneの持ち味である重層的でキラキラしたテクノポップに歌心あるヴォーカルがすっと馴染んでいる。当時前衛的な存在であったミクの使い方を確立したという意味でもまさしく色褪せない、歴史的名盤と言えよう。

Yellow Magic Orchestra『Solid State Survivor』(1979)

小4で携帯電話を買ってもらい、父親に大好きな嵐や初音ミクの曲を入れてもらっていると、見覚えのないアーティストがいた。「有名だから絶対知ってる」と豪語する親をよそに半信半疑で「Rydeen」を再生すると、確かに聴いたことがある。すっかり気に入り、「Cosmic Surfin’」を着メロにしていると中学の同級生に誰の曲か尋ねられた。親と同じフリをするが、返ってきたのは「えー、知らないよー。れんちゃんおかしいんじゃないの?」--帰宅後クレームの嵐になったのは言うまでもない。

女子校時代は隠れキリシタンのように音楽を聴いていたが、大学に入って状況は一変。YMOが一般常識の世界線に来たのだ。父は間違ってなかった。…みんな中期派でしたが。個人的には誰もが頷く1番の名作。

長谷川白紙『アイフォーン・シックス・プラス』(2017)

2017年にドロップされた意欲作。長谷川は高校在学時もコンピ「FOGPAK」などで楽曲を発表していたが、これが自身の名を冠する初の作品。

本作がリリースされた《Maltine Records》はtofubeatsをはじめ、Tomgggやパソコン音楽クラブなど素晴らしいトラックメイカーを輩出し続ける一大レーベル。初期はlivetuneの変名「RE:NDZ」も参加するなど、VOCALOID文化の成長と同時代的に、日本における「ネットレーベル」を確立した存在でもある。自分は中学時代、Yoshino Yoshikawaやfu_mouを愛聴していたり、クラブ・ミュージックでもかなり歌ものが好きなこともあって、本作のリリースは本当に嬉しかったし、ポスト・インターネットの機運を感じた。近年はKID FRESINO、スカパラのタイアップ、Google PixelのCMソングを書き下ろすなど列挙できないほど快進撃を続ける彼だが、本作収録「横顔S」を聴いた時の衝撃は今も忘れることができない

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◯執筆=駒澤零
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musit編集部