私を構成する9枚【寄稿/Yudai編】

私を構成する9枚【寄稿/Yudai編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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John Lennon 『Walls And Bridges』(1974)

大学3年生の冬。私にビートルズを教えた父と軽井沢へ旅に出た。目的は1つ、ジョン・レノンのルーツを辿ること。ヨーコ(正確には小野家)の別荘があった軽井沢は、音楽離れしたジョンが家族との時間を過ごした場所でもあった。彼が弾いたピアノやショーン君との写真などを見て、感動というよりむしろ少し暗い気持ちになったのを覚えている。その後ニューヨークに帰った彼に、何が起きたか知ってるからだ。正直に言う。私はジョンの思想に心酔できるほど、彼のフォロワーではない。しかし彼の生んだ音楽が、実際旅に駆り立てるほど親子の絆を強めたのは事実だ。軽井沢の寒空を見上げ、私は思った。「帰ったら親父を1杯誘ってみよう。『心の壁、愛の橋』でも聴きながら」。

Curtis Mayfield『Live!』(1970)

モータウンやフリー・ソウルを聴き漁っていた私に、カーティスは激しさや明るさを伴わない質素なファンクの在り方を教えてくれた。このアルバムは現場の空気感を含めて、カーティス本人の魅力が最も伝わる1枚だと思う。私は『There’s No Place Like America Today』(1975)のような、タイトかつ重い音にこそカーティスの真骨頂を感じるのだが、本ライブもホーン抜きの5人編成で臨んでいるため、同じようなミニマムさのファンクを楽しめる。録音されたニューヨークにある《The Bitter End》は、収容人数200人ほどの小さな箱だ。そのため観客との距離が近く、拍手や歓声の音もでかい。これがより生感を深め、ライブ盤としての完成度を高めている。

Herbie Hancock『Sunlight』(1978)

「ジャズってのはブルーで小綺麗でなくちゃいけない」。このステレオタイプから私を解放してくれたのがハービーだった。従来のジャズに固執せずファンクとエレクトリックを追求した結果、彼はより美しくリズムのある音楽として、ジャズを進化させた。そこからはよりジャズ・ファンクを突きつめた作品を発表し続けるのだが、特にこのアルバムは秘めるエネルギー量が凄まじい。ファンキーで洗練されたリズム・セクションに酔いしれながらも、エレクトリック・ピアノやヴォコーダーが生み出す美しさの解放を体験できる。輝く宝石のような音の融合体はまさに太陽のようで、「ただのジャズ」しか知らなかった私を照らし解き放ってくれたのだ。

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◯執筆=Yudai
Instagram:@xiongda574

musit編集部