【フィジカル放浪記 Vol.3】「3000円タワーヴァイナル」やってみた in 渋谷タワレコ

【フィジカル放浪記 Vol.3】「3000円タワーヴァイナル」やってみた in 渋谷タワレコ

2021年9月23日、タワーレコード渋谷店の6階に「TOWER VINYL SHIBUYA」がオープンした。クラシックを除くオールジャンルの新品/中古レコードを取り揃え、在庫数は約7万枚、うち中古レコードは約3.5万枚という気合いの入りようだ。レコード周辺機器やカセット、Tシャツなども取り扱い、中古の店頭買取もスタート。ここ最近では10月1日にディスクユニオン名古屋店がオープンしたりなど、巣ごもり需要でレコード業界も潤っているのか?と、思いきや──。

SAYONARA SHINJUKU NOSTALGIA

あまり大々的に告知されていなかったが、正確に言うと「TOWER VINYL SHIBUYA」はタワーレコード新宿店の10階にあった「TOWER VINYL SHINJUKU」が移転したものだ。新宿にも多少の在庫は残されたようだが、ほとんどは渋谷に移された、というのが実情。「TOWER VINYL SHINJUKU」はタワーレコードがアナログからCDに移行して以来初めてのアナログ専門店で、2019年3月のオープン時は大きな話題となっていた。筆者も何度かお世話になった場所だ。

そんな新宿店は今回の移転に伴い改装されたが、レコードだけでなく店舗自体の規模が縮小し、4フロアから2フロアでの営業になってしまったようだ。あの大きな窓が付いた開放的な空間でディグれなくなったのは非常に残念でならないが、それ以上に、やはりコロナ禍の影響もあって業界はジリ貧なのだろうか……などと勘繰ってしまう。他人事ではない。筆者もディスクユニオンの元スタッフである。

それなら、レコード好きの端くれとして少しでも応援しようじゃないか! いや、でもそんなに財力もない。そう考えた結果、今回実行したのが「3000円タワーヴァイナル」だ。

3000円タワーヴァイナル

あたかも自分で思いついた企画かのような言い方をしてしまったが、「3000円タワーヴァイナル」は「3000円ブックオフ」の完全なる「あやかり」である。

そもそも「3000円ブックオフ」とは、自分の声にオートチューンをかけてゲーム実況をするVtuberとして活動したり、架空の2名による対話形式で展開される奇怪なブログなどを運営する温泉マーク(@ngo750750750)さんが提唱した遊び(情報量が多い)。ルールは至ってシンプル、ブックオフ1店舗で3,000円ピッタリになるように買い物をする、というものだ。

しかし、これがまた面白い。3,000円という価格設定が絶妙で、アルバムのCD1枚分くらいの値段で中古品を買うと考えればなかなかちょうど良い。適当に選べばすぐに上限を超えてしまうが吟味すれば色々買える、あれやこれやと手に取り選ぶ時間が楽しい、ウームこれは奥が深いねえ──こんな具合だ。

じゃあもう、この遊びをタワレコで、しかもレコードでやってみよう!というのが今回の記事である。そんな訳で10月初旬、会社が原宿にあるのを良いことに、季節外れの酷暑で背中をビチョビチョに濡らしながら出社前に「TOWER VINYL SHIBUYA」へ立ち寄ってあーでもないこーでもないと色々ディグって、ちょっとしたドラマなんかもあったりしたので、そんな感じでお送りしたい。

出社前ディグの成果

タワーレコード渋谷店の6階に到着し、いざ足を踏み入れるとやっぱりテンションが上がる。平日の開店直後ということもあり、客の入りもまばらだ(なお、火曜日=入荷日ということもあってか、開店直前は1階の入口付近に開店を待つ人々の列ができていた)。

壁面に陳列された高額盤に、買えもしないのについつい目が行ってしまい、うわー、チャプターハウスのオリジナル盤って高いのねえ、マイブラの『Glider』はいつか絶対レコードで欲しいよねえ、などと心の中でブツクサ言いながら、目の前の什器に視線を落とす。結局合計6枚(全て中古)を選び上げ、意気揚々とレジへ向かった。

今回は、価格とコンディションも明記する。後者については、タワーレコードで採用されている表記をそのまま引用した。「Media」は盤の状態、「Sleeve」はジャケットの状態をそれぞれ示している。なお、詳しい表記は下記を参照されたい。

コンディション表記|中古レコードのハイファイ・レコード・ストア

Depeche Mode『Aquestion of Time(Extended Remix)』(1991)

Label – Mute Records
Release – 1986/08/11

Media / Sleeve – EX / EX
Price – ¥880

デペッシュ・モードが1986年にリリースし、全英3位に輝いた5thアルバム『Black Celebration』に収録された「Aquestion of Time」のリミックス12インチ。

原曲は4分ほどだがリミックス版は6分を超え、強烈なキックとハンマービートで爆踊りさせる仕上がり。B面はライブ音源が収録され、めちゃめちゃに黄色い声援が飛び交うなど、当時の彼らがいよいよ勢いづいていたことが窺える。

これはもう、完全にジャケ買いである。ガラスの破片に映り込んだ少女の絶妙な表情──買わない方が難しい。特に後追いのアーティストであればあるほど、シングルのジャケットを把握していない場合も多い(リミックスとなればなおさら)。レコードがパンパンに詰められた什器を片っ端から掘り進め、知っているアーティストの仕切りの中で知らないジャケットがふと出てくる瞬間の感動は、店舗でのディグならではの醍醐味かもしれない。

Primal Scream『Don’t Fight It, Feel It』(1991)

Label – Creation Records
Release – 1991/??/??

Media / Sleeve – VG / VG ※UK Original
Price – ¥880

ちょうど30年前、狂乱の1991年に《Creation Records》からリリースされたプライマル・スクリームの大名盤『Screamadelica』より、同作収録の「Don’t Fight It, Feel It」の12インチシングル。アナログは7インチも存在し、同じ12インチでもGraham Masseyによるリミックス盤が存在するなど、バージョンが複数に渡る。

本作も「12” Version」であり、アルバムに収録されているものと異なるというややこしさだ。B面には同曲の「Scat Mix」を収録、一層トリッピーでフロア向けの仕上がりとなり、『Screamadelica』のプロデュースを手掛けたアンドリュー・ウェザオールの面目躍如といったところだろうか(2020年に亡くなってしまったのが惜しいばかりだ)。さらに、B面のアウトロが終わり針が止まるまでの間にレコードの回転速度が落ちるような音が入っている、という細かいこだわりも。

なお、これらのバージョン違いは『The Screamadelica 12″ Singles』に完全収録されている。ストリーミングでの配信は既に始まっているが、10枚組のボックスセットは今月末にリリース予定。これを機に聴き比べてみるのも一興だろう。

Ultra Vivid Scene『She Screamed』(1988)

Label – 4AD
Release – 1988/??/??

Media / Sleeve – VG / VG+ ※UK Original
Price – ¥990

80年代後期から90年代初頭に活動し、《4AD》から3枚のアルバムをリリースしたウルトラ・ヴィヴィッド・シーンの2ndシングル。

当時はNY出身のアーティスト、カート・ラルスケによるソロ・プロジェクトで(2ndアルバムからバンド編成)、全ての楽器をカートが演奏する宅録スタイルだった。そのためザ・ジーザス・アンド・メリー・チェインを思わせるノイジーでポップなサウンドながら、全体的に(良い意味で)音作りがかなりチープである。話題沸騰の韓国産ソロ・シューゲイザー、Parannoulの源流はここにあると捉えて聴いてみるのも面白い。

こちらは「裏ジャケ買い」。表もパッと見ただけで4ADと分かる素晴らしいデザインなのだが、裏を見ると……めっちゃ日本語! しかも野球!?!? これは嬉しい誤算である。

このアートワークは、4AD所属アーティストのアートワークを数多く手掛けたヴォーン・オリヴァーによるもの。枚挙にいとまがないが、ピクシーズ、ラッシュ、コクトー・ツインズ、レッド・ハウス・ペインターズと、手掛けたアーティストはとにかく錚々たる顔ぶれ。それだけに、2019年の訃報はやりきれないものだった。

田原俊彦『夏一番』(1982)

Label – キャニオン・レコード
Release – 1982/03/27

Media / Sleeve – EX / VG ※帯付
Price – ¥220

田原俊彦の4thアルバム。ストリーミングでは近年のシングルしか配信されておらず、しかもレコードであれば安価で手に入りやすく、昭和ジャニーズのアナログ入門としては申し分ない。

「刺激的サンバ」「サマーポーションNo.1」「誘惑ミー」など時代を感じる曲名が並ぶが、何よりジャケットを見てほしい。田原俊彦が二人も、しかも異なるサイズで同じ場所に収まる謎デザイン。しかも『夏一番』というタイトルなのに、何やら毛糸のモコモコを身に纏う季節錯誤感。面白すぎる。なお、このモコモコの正体は帯を見ると分かる。以下引用。

♡手作りセーターのプレゼントありがとう
君がプレゼントしてくれたセーターを着た
トシちゃんが載っている

編集者からすれば推敲したくなるようなコメント文だが、ライナーをパラパラめくると「Toshi」(※Xの方ではない)の文字が入ったセーターを着こなし様々なポーズを決めるトシちゃんの笑顔、笑顔、笑顔。そして、このコメントである。

どうもありがとう!
ここで着ているセーターは
全部君たちからのプレゼントです。

(事務所的にOKかどうか非常に怪しいのでこれ以上の写真掲載は控えておくが)冷静に考えて、自分が編んだセーターを「推し」が着てくれた──となれば、これはもう卒倒モンである。すげえ企画だ。すげえよトシちゃん。ちなみに長女の田原可南子はタレントでめっちゃ美人。すげえよトシちゃん。

藤圭子『新宿の女』(1970)

Label – RCA/日本ビクター
Release – 1970/03/05

Media / Sleeve – VG / G ※ジャケット天抜け
Price – ¥100

「宇多田ヒカルの母ちゃん」「伝説的な演歌(怨歌)歌手」という情報くらいしか知らず、実はしっかり聴いたことがなかった藤圭子の1stアルバム。

邦楽の100円コーナーにて発見し、即購入を決めた。ジャケットの状態はすこぶる悪いが、ストリーミングではほぼ聴けないのもあり、100円なら良いかと判断。当時の藤圭子は人気絶頂で、本作はオリコンLPチャートの1位を20週連続で獲得したという。それもあってレコードが出回っている数自体もおそらく多く、状態を選ばなければ比較的安価で手に入るのだろう。

90年代以降は娘(=宇多田ヒカル)を歌手にするべく尽力するが、その後の藤圭子を想いながらこのレコードを聴くと、ふとした瞬間にプチプチと聴こえてくるノイズが寂寥感を醸し出し、胸がいっぱいになってくる。

極め付きは、ジャケットを開くと目に飛び込んでくる社判。

元の所有者は北海道苫小牧市の建設会社だったらしい。社長が好きだったのだろうか? もしかしたらレコードが流れる事務所で、藤圭子の歌声が従業員を癒し、士気を高めていた──なんて考えると味わい深い。

水越けいこ、再び

購入はしなかったが、邦楽の100円コーナーを漁っていた時、見覚えのあるジャケットが出てきた。「フィジカル放浪記 Vol.1」で購入した水越けいこ『LOVE TIME』である。おっ、なんという偶然!

……って、おおおおーーーーーーい!!!!!!
100円で売っとるやないかい!!!!!!

コンディション的には、おそらく筆者がAmazonのとある出品者から1,000円ちょっとで購入したものと同程度と思われる(むしろそれよりも良さそうに見えたが信じたくはない)。相場を知らないとこういうことが起こるのだ。

結果発表

という訳で、今回の合計金額は──

3,070円!

ピッタリとはいかなかったが、かなり良い感じで買い物ができたと思う。

3,000円という制限があると、欲しいと思ったレコードを全て購入できないかもしれない。しかし、それはレコードに注ぎ込みすぎて破産する人生を回避する、重要なストッパーとして役立っているのではないだろうか。我々パンピーがほどほどにディグを楽しむためにも、是非「3000円タワーヴァイナル」をやってみてほしい。

……ん? そういや、6枚購入したのでは? あと1枚は……?

Boards of Canada『Hi Scores』(1996)

Label – Skam Records
Release – 1996/??/??

Media / Sleeve – VG / VG ※点字ステッカー/インサート付
Price – ¥3,300

エレクトロニカの巨匠、ボーズ・オブ・カナダが1996年にリリースしたEP作品。彼らのサウンドがオウテカの耳に止まったことで《Skam》からのリリースに至ったとか。収録曲「Turquoise Hexagon Sun」は2年後の1stアルバム『Music Has the Right to Children』でも聴ける。

謎インサート(フライヤー?)

個人的に「Nlogax」が好きすぎて「いつかアナログをお迎えしたい…」と思慕していた作品だったため、見つけた瞬間もう即抱きしめた、否、実際に抱きしめてしまうと破損するので概念的に抱きしめた。

という訳で状態をあまり気にせず購入したが、じっくり見るとそれなりに汚い。B面にもうっすら傷がついており音飛びする始末だ。

若干見づらいが、写真中央の白い線(傷)が原因で音飛びすると思われる。そもそも盤が汚いな……。

しかし、もっと状態の良いものが見つかればそれを購入し、今あるものを手放せば良い。中古レコードはそうやって楽しむものと割り切るのも大事かもしれない。

って、あれ? なんか良い感じに締めようとしてますけど……。

いや、1枚で3,000円超えとるやないかい!!!!!!

【改】今回の合計金額は──

6,370円!

對馬拓