短編映画『ウワキな現場』にアユニ・D(PEDRO)のロックが響く

短編映画『ウワキな現場』にアユニ・D(PEDRO)のロックが響く

2021年11月の朗報だった。テレビ朝日で放送中の深夜番組『トゲアリトゲナシトゲトゲ』内の企画から短編映画が制作され、TELASAで配信されることとなった。そして、その主題歌にPEDRO「人」が決定したのである。

「楽器を持たないパンクバンド」と呼ばれるガールズグループ、BiSH。彼女らの魅力は既に広く渡っており多数の有名人がファンを公言している。そんな中、BiSHのメンバーの1人、アユニ・Dがバンド形態のソロ・プロジェクトとして活動を始めた。それがPEDRO(ペドロ)だ。

同プロジェクトは絶大な人気を誇る中、来たる12月22日の横浜アリーナ公演をもって無期限活動休止となることが発表され、多方から惜しむ声が上がっている。

一方『トゲアリトゲナシトゲトゲ』(以降『トゲトゲ』)も今注目のバラエティ番組。3時のヒロイン・福田 、Aマッソ・加納、ラランド・サーヤという今勢いのあるお笑いコンビ(トリオ)のブレーンが集結している。

今回、番組内から誕生した短編映画『ウワキな現場』は、2017年に公開され、一世を風靡した『カメラを止めるな!』でお馴染みの上田慎一郎が監督を務めた。「恋愛サイコホラー」なる一風変わったショートムービーには、上田監督らしいアッと驚く展開が存分に盛り込まれている。

PEDROを背負うアユニ・Dの音楽的魅力

BiSHで魅せるエネルギッシュなライブ・パフォーマンスも魅力的だが、その姿のアユニ・Dしか知らないのであれば実にもったいない。

PEDROの魅力は何といってもアユニ・Dが持つ表現力の幅広さだろう。ハイトーンヴォイスを自在に操り、パワフルな印象から気怠げな雰囲気まで様々な声色でリスナーの耳に訴える。

彼女はヴォーカルに留まらず作詞/作曲を担当することもあり、前述した映画の主題歌「人」もそのうちの1曲だ。特に作詞においては、少ない言葉数でストレートな感情をぶつける歌詞が目立ち、それが彼女の歌声と非常に相性が良い。

また、PEDROがサポートメンバーにも恵まれているのは有名な話。ナンバーガールで長年ギターを務める田渕ひさ子やSCRAMBLES MUSIC COLLEGE出身のドラマー・毛利匠太を迎え、演奏技術はハイレベルで確実なものとなっている。

アユニ・Dを見ていると「女性ヴォーカリストの良さ」をしみじみ思う。というのも、アユニ・Dの歌声には「突き抜けるような真っすぐさ」と「若さゆえの勢いによる不安定さ」という相反するものが共存しているからだ。そこに見える少女性や危うさが結果的に魅力となっている。これは男性ヴォーカリストが真似しようとも難しい部分である。

ニッチなもの同士だからこそ生まれる親和性

冒頭で紹介した短編映画『ウワキな現場』にてエンドロールと共に流れたPEDROの「人」は、本編の雰囲気にぴったりとはまっていた。
映画を元に書き下ろした曲ではないはずなのに、どうしてこんなにも親和性が高いのだろうか。

おそらくそれは、今作を生み出した番組『トゲトゲ』とPEDROの「メジャーではないが強く支持するコアなファンがいる」という共通点によるものだろう。

自らを「ド深夜番組」と自虐する『トゲトゲ』は、出演者と製作側のやりたいことが存分に発揮されている。今回の映画制作企画のほかにも、一風変わったシステムの大喜利や行き当たりばったりの即席コントなど、毎回「確実に成功するか分からない雰囲気」を含めて楽しんでいるようだ。
そしてそのニッチな魅力の虜になった視聴者がじわじわと増え、番組の評判が広がっている。

PEDROも同じく、アユニ・Dが自分の新しい表現方法を追求して生まれたものだ。BiSHがいくらメジャーになろうとも、それに左右されることなくアユニ・D個人の音楽を模索していく──。その「メジャーに固執しないスタンス」がトゲトゲとPEDROとの親和性を生み、異なるジャンル同士で上手く共鳴し合えたのだろう。

PEDROの主題歌で映画の魅力増!

「お笑い」と「芝居」の交差点に、「ホラー」のエッセンスで調和が崩れ、そこに「音楽」という新たな表現が重なる。
そして、それらのエンタメのコラボが出演者・歌い手ともに女性中心で行われていることに、筆者も同じ女性として感動と心強さを感じた。

何より、『ウワキな現場』という映画タイトルが秀逸だ。この「ウワキ」、映画内で提示される恋愛の「ウワキ」だけではない。

多才なお笑い芸人達が本来の相方ではない相手と組む「ウワキ」。普段の本業とは違う役者の仕事に取り組んでいるのも「ウワキ」。アユニ・DがBiSHという大切な居場所を離れ、ソロ・プロジェクトで才能を爆発させているのも「ウワキ」。今回の短編映画『ウワキな現場』とPEDRO「人」の共演は、そんな数々の「ウワキ」を感じてしまうニクいコラボレーションなのである。

みくりや佐代子