【衣食住 plus 音 Vol.4】『CURIOUSER and curiouser!』──西荻窪に突如生まれた不思議なカフェ&バー

【衣食住 plus 音 Vol.4】『CURIOUSER and curiouser!』──西荻窪に突如生まれた不思議なカフェ&バー

着たい服を着て出掛ける時、今日の昼食を拵える時間、1日の終わりを自分に告げる間際で、聴きたい音楽がある。そんな「衣食住」と音楽の濃厚な関係に迫る連載コラム。第4回目は、今月22日に開店したカフェ&バー『CURIOUSER and curiouser!』(キュリオサー・アンド・キュリオサー)。

* * *

‘‘CURIOUSER and curiouser!’’(「ますます奇怪だわ、不思議だわ!」)

と、『不思議の国のアリス』の名台詞がそのまま喉を突いて出てしまいそうな空間のカフェ&バーが、西荻窪に誕生した。

各地から観光やショッピング、グルメ散策に映画観賞…と様々な目的で人が集まる中央線屈指の人気エリア・吉祥寺(武蔵野市)と、ファミリー層が居住率の多くを占める荻窪(杉並区)。両隣のベッドタウンに挟まれた西荻窪は、中央線に馴染みのない区域に住む人からしてみれば、少々雲がかった不透明なエリアに思われるかもしれない。

だが、蓋を開ければ西荻窪がカルチャーに富んだ味わい深い街、であるということに気づけるはずだ。南口を降りればまず進んで入りたくなる好奇心を沸かせる飲み屋街、通称「柳小路」が見えてくるし、北口は打って変わって閑静な住宅街、しかし老舗の書店や趣のあるレトロ喫茶が所々でその表情をこちらに向ける。そしてその一角にあるのが、今回紹介する『CURIOUSER and curiouser!』だ。

線路沿いを右手に歩を進めると、5分と経たずにどっしりとした縦看板が視界に飛び込んでくる。白と黒のシンプルな色合いながら、アルファベットの正式表記の真下に‘‘キュリオサー アンド キュリオサー’’とカタカナで書かれている遊び心に思わず足を止めたくなる。無意識に兎の後を追い掛けていく少女の姿よろしく、吸い込まれるようにして不思議の国へと続く階段を昇っていく。

2階入口には扉がなく、階段を昇り切る前に店の内部が顕になるファンタジーな構造も独特だ。8席ほどのカウンター席にテーブルが2卓。決して広々とした空間ではないが、訪れる人誰もが一息つけるような、安らぎを与える癒しの場であることは確かと言えよう。

『CURIOUSER and curiouser!』のマスターを務めるのは、musitでも2年前にソロ・インタビューを行ったかわいわか(画家/コラージュ作家、ex.sheeplore)。内装は隅々に至るまで彼のこだわりが見られ、カウンター脇には中原中也やつげ義春、ボリス・ヴィアンらの著書が並ぶほか、カウンターを背にして入ってきた階段の方へ目を遣ると、日毎ランダムで映し出されるVJ、その隣にはアートワークと手書きの店名文字。どこをとっても写真と記憶の両方に収めたくなる。

随所に作品が飾られた飲食エリアは禁煙。しかし、テーブル右奥にはカーテンで仕切られた「喫煙室」がある。オーナーのかわい曰く「話が盛り上がっている時に一服したくなっても、その人が落ち着いて過ごせるように」と設計された喫煙室は、古い映画のポスターやアンティークな美術品らに見守られながら西荻窪の街を見下ろせる。

昼間はカフェ、夜はバーと二業態で展開予定の『CURIOUSER and curiouser!』。筆者が訪れた時はバータイムの時間帯(※カフェ営業は現在準備中)だったため、本記事では後者に絞っての紹介となるが、レギュラーメニューに記載されているカクテルの数々のほか、友人との会話に花を添えるパスタやアヒージョといった華やかなフードメニューも展開。誰もが目的を選ばず、気軽に訪れることができる形態は、様々なカルチャーと融合を成し遂げながら独自のパブリック・イメージを志向していった「西荻窪」という街の在り方とよく似ている。

筆者はこの日、一杯目を生ビール、二杯目には未知の体験となる「アハルソーダ」なるものを注文。「アハル」とはメスカル(メキシコの伝統酒)の一種で、乳製品のようなまろやかさとスモーキーな香りが特徴の酒だそう。一口目こそ若干の抵抗はあったものの、以降はその芳香の虜になってしまった。

「バー」に通うことの最大の意義とは、全く接点のない他者同士が(例えば隣同士に座ったり、店主が話を受け渡して振ってくれたりといった)至極自然な流れで繋がりを持てるハブ的な役割を担っている点にあると考える。筆者自身、この場で過ごす時間と会話の中で多くの思想に触れたり、自分の肩書に賛同して手を貸してくれる人々との出会いがあった、というのが何よりの証拠であろう。

西荻窪の線路沿いに開店した『CURIOUSER and curiouser!』。そこは視覚や味覚に多幸感を付与するだけでなく、微睡みにも似た空間の中で生まれる感動を提供してくれる、全く新たな憩いの場となり得るように思えた。

* * *

CURIOUSER and curiouser!

【住所】〒167-0042 東京都杉並区西荻北3丁目16-2 2F
【TEL】03-6767-5917
【営業時間】CAFE:現在準備中/BAR:19:00-25:00
※喫煙目的店

Twitter:@__CURIcuri
Instagram:@__curicuri/

翳目