【スクリーンで君が観たい Vol.1】ウブでキュートな名俳優、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
映画を好んで観ていると「私、この俳優好きかも」という気づきを得ることがある。そして彼ないし彼女から目が離せなくなり、いつの間にかチャームポイントを熱弁するまでになっている……。
単刀直入にいうと、彼らは私の「推し」である。ここにいるのは普段お堅い映画レビューを書いている「安藤エヌ」ではなく、誰かに彼らの魅力を知ってもらいたいと筆を執る、熱狂的な映画オタクである。
この連載ではそんな私が鼻息を荒げながら、愛する洋画俳優たちと彼らが出演している映画について語っていく。筆舌の限りを尽くしながら(時に、パッションに身を捧げて)彼らの魅力を伝えるので、気になる作品があったら是非配信などで観てもらいたい。
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さて、連載第1回目となる今回、ちょうどタイムリーにAmazon primeで配信の決まった映画がある。今年の1月に公開された映画『Coda コーダ あいのうた』だ。
ろう者の家族で1人だけ耳の聞こえる少女・ルビーを主人公にした作品で、第94回アカデミー賞の3部門にノミネートされ、うちルビーの父親を演じたトロイ・コッツァーが助演男優賞を受賞したことでも話題になった。
そして、何を隠そうこの映画には私の「推し」が出ているのである。主人公・ルビーと恋仲になる少年・マイルズを演じた、フェルディア・ウォルシュ=ピーロだ。

彼の出世作といえるのが、「青春音楽の名手」とされるジョン・カーニー監督作『SING STREET未来へのうた』。意中の女性・ラフィーナを振り向かせようとバンドを組み、音楽に没頭する少年・コナーを演じ、その初々しさと飾らないまっすぐな歌声が観客のハートを見事に射抜き、例に漏れず私も彼の子犬のような可愛らしさにメロメロになったのだった。

『Coda コーダ あいのうた』でもそのウブさは健在……というよりパワーアップしており、ルビーの家に行ってデュオを練習するシーンや、川で水遊びをするシーンなどはティーンのいじらしさが爆発していて、アラサーならぬサーな私は思わず顔を手で覆ってしまいそうになった。

こんな思春期を送ってみたかった、と思わせるフレッシュさを持っているがゆえに、どうか変わらないままでいてほしいという切実な願いを向けてしまう。フェルディアの頬はまるで桃のようにほんのり赤く、やわらかい。その桃をいつまでも私は頬張って(もちろん、想像上で)いたいのだ。フェルディアのあの赤いほっぺたほど平和を感じさせるものはないし、7歳でボーイソプラノとしてのキャリアをスタートさせた彼の歌声ほど耳心地が良く、まどろみを与えてくれるものはない。いつまでも歳を取らず、純粋なままでいてほしい。そんな風に思わせてしまうミルキーな魅力が、彼にはある。
だから、どうか今のままの姿でたくさん青春映画に出てほしいし、お馴染みのアコースティック・ギターを抱えた姿を見せてほしいし、女の子と恋をしてほしい。語りかけるように優しい声で歌ってほしいし、ピュアな心を持て余してほしい。フェルディアは私に青春時代の甘酸っぱさを思い出させてくれる、食べてしまいたいくらいキュートな名俳優なのだ。

安藤エヌ
