Gosekiのアメリカ徒然探訪録:Day 1
2022年8月。Awesome &roidのベーシストであり、musitで音楽レビューや映画コラムの執筆も行うGosekiが、人生初の海外、そして人生初のアメリカを訪れた。それも、バンド・メンバーでヴォーカル/ギターのタツルと、カメラマンのショータロー(NEW FAT GLORY)と共に、約22日間というまさかの長期滞在。彼にとっては何もかもが初めて尽くしの体験となった。──ここに綴られるのは、Gosekiがその目で見て、その耳で聞いて、その手で触れたものたちの、大いなる記録である。
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8月1日
飛行機は8月1日午前9時頃、ロサンゼルスに到着した。
今回、Awesome &roidのヴォーカルのタツルと、カメラマンのショータロー(NEW FAT GLORY)と旅をする。ライブツアーやバンドのプロモーションなども兼ねているが、最初の1週間はほとんど観光だ。私にとっては初めての海外であったが、他の2人は何度もアメリカを訪れており、着いて早々「あー、アメリカの匂いがする」とテンションを上げていた。なんだアメリカの匂いって。この旅で私もその匂いの意味が分かるようになるのだろうか。

空港からバスで《ユニオンステーション》へ。
左ハンドル、右車線、家の雰囲気、通り過ぎる全ての景色が日本と違い、だんだんと異国に来たのだという実感が湧いてくる。その中でマクドナルド、吉野家、ユニクロなど、馴染みのある店を見つけてはテンションを上げる私に、2人は怪訝な顔をしていた。右も左も分からない私にとって見慣れた風景があるということは喜ばしいことだった。

ユニオンステーションからサンディエゴに向かうため電車を待つ。1本電車を逃してしまったがすぐに来るだろうと特に調べずにいたら次の電車は3時間後だった(s**t)。だが今日の目標は無事に宿に着くということだけだったので慌てず、ゆっくり行こう。
ここでおそらくアメリカに来て初めてのトラブルが発生した。ショータローの持ってきたカメラのレンズが壊れていたのだ。何があっても動揺しなさそうな彼だが、これには相当凹んでいた。飛行機での機材の取り扱いの難しさを再認識した。幸い、他のレンズは無事だったため一同はほっと胸を撫で下ろした。あまり知らなかったのだがレンズというのはとても高いらしい。ちゃんと修理できるといいな。
徐々にアメリカに慣れていこうということになり、駅のコンビニで軽めの昼食を取ることにした。ゴセキ、初めての買い物。
レジでホットドックを注文するも全く聞き取ってもらえない。何度も「ホットドック!」と言うがレジの店員は「は?」と顔をしかめる。まあ発音が良くない私も悪いが、店員も察しが悪すぎではないか。他にそれっぽい発音のメニューもないんだから雰囲気で分かってくれよ。早々に洗礼を浴びる。多分ただの意地悪だ。でっかい棒にがっつくようなアクションをしてやっと伝わる。この店員にはチップは払わなかった。人に優しくできない者に幸運は訪れないのだ。

その後スターバックスに行きカフェラテを注文。それはなんとか買えた。やはり天下のスタバはアメリカでもナイスな接客だ。ただしカップに書かれた名前は「Yuta(ユウタ)」ではなく、「Yuda(ユダ)」になっていた。裏切り者の烙印を押されたような気持ちになるが気にしない。とにかく買い物ができたということが大切だ。
ホットドックとカフェラテを食べながら駅で電車を待っていると、だんだんとアメリカという国がどんな所なのか見えてくる。
まず実感したのはホームレスの多さ。そして彼らの図々しさだ。駅というまあまあ治安の悪い場所ということもあったが、それでもユニオンステーションという日本で言えば東京駅のような場所でも多くのホームレスが徘徊していた。そして彼らは容赦なく人に話しかけてくる、私も持っていたカフェラテをくれないかと打診された。さらにセキュリティーのスタッフとマジ喧嘩をしてる。大声で「f**k」と怒鳴る者もいてここがどんな所なのか肌で伝わってくる。
一度目のホームシック。
日本という国がどんなに良い国なのか、今回の旅はそれを再確認する旅にもなりそうだ。もちろん日本にも多くのホームレスがいる。私たちはそれを今まで見て見ぬふりをし続けていたんだな。


午後3時。電車が到着する。アメリカはなんでも大きいが電車も例外ではない。2階建ての列車のBOX席でひとしきり『世界の車窓から』ごっこを楽しんだあと、私にとって初めてのトラブルが襲いかかった。あらかじめ用意していた海外用のフリーSIMカードが認証されなかったのだ。
どうやら3年以上前に買った携帯はSIMロックを解除しなくてはならなかったのだ。しかもその解除もできず、「あ、これは詰んだわ」となった。家族にだけどうにか無事を伝えて残りの日数は携帯なしの生活が続くのか、と諦めかけたその時、日本に住む兄がauに問い合わせてくれて無事に快適な電波を手に入れることができた。感謝、兄よ。
無事にサンディエゴに着くことができた我々は、最初の宿泊先《モーテル6》にたどり着いた。
モーテルに泊まるというのもこの旅の醍醐味の1つだと思っている。例えば家族と旅行に行くという時に、寂れたモーテルで1泊することはないだろう。それに私の性格上、1人でアメリカに来ることもないはずだ。怖いから。友人、仲間と一緒だからこそできる経験というものが今回の旅は多そうだ。

よく見る映画の薄汚れた廃墟のようなモーテルを想像していたが、実際にはかなり小綺麗でベッドの寝心地は世界共通なのかと驚いた。ひとまずベッドで身体を休めると一気に疲れが身体中を巡り、重力で瞼が閉じかける。
このままでは1日目が終わってしまう。。。。
そして私たちはあることに気がついた。まだアメリカに来て一度もハンバーガーを食べていないということを。慌てて私たちは部屋を飛び出した。
アメリカは日本よりも治安が良くない。夜はなるべく出歩かない方がいいに決まっている。この時、既に夜の20時を超えていた。しかし外はまだ明るく、自分たちがそんな時間に出歩いていることにも気付いていなかった(それは私だけで他のアメリカ慣れしている2人は平気な顔で深夜も出歩いていた、危ない)。

アメリカはハンバーガー大国だ。日本人が米を食べるようにバーガーを食し、味噌汁を飲むようにコーラを飲む。そのため道を歩けばバーガー屋がある。「犬も歩けば棒に当たる」の米国版は「アメリカ人も歩けばバーガー屋に辿り着く」かな、などと考えていると、ショータローおすすめのハンバーガー屋さんにたどり着いた。
《Habbit》というお店は、ローカルチェーンながら多くの人に支持される名店だ。正直、ハンバーガーにそれほどの違いを期待していなかったのだが、なるほどこれは美味い。アボカドチーズバーガーを頼んだのだが、全ての食材が程良くお互いを邪魔せずに調和が取れている。ただパンに肉と多少の野菜を挟んだだけの単純な料理の割に、なかなか奥が深いなと学びがある。

その後、深夜のサンディエゴを徘徊した。コンビニで酒を買おうとしたら夜にはお酒は売ってもらえないそうだ。外で飲んでいても捕まると聞いて、「自由の国」と言われているギャップに驚いた。
そういえば治安の悪いモーテルの周りだが外で酒を飲んでいる人はいなかった。そういったルールの上で成り立っている分、日本よりも治安がいいのかな、と思っていたら半裸の男にタバコをくれと話しかけられた。焦点は合っておらず会話もたどたどしい。誰が見てもまともじゃないと分かるその男は、おそらく違法薬物使用者なのだろうとのことだ。いや怖。酒の前にそっちを取り締まってくれよと切に思う。
そんなプチハプニングもありながら、部屋に帰り、ベッドに横になると気を失うように寝てしまった。成田空港を出発してから約24時間経過していた。私のアメリカ旅行の長い1日目がようやく終わったのだ。
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Goseki

