【スクリーンで君が観たい Vol.8】屈託なき笑顔に愛を見つめる真摯な眼差し──フィン・オシェイ

【スクリーンで君が観たい Vol.8】屈託なき笑顔に愛を見つめる真摯な眼差し──フィン・オシェイ

フィン・オシェイ──彼を見ていると、脳裏にエサを口いっぱいに頬張るリスが浮かぶ。これ以上ないほど完璧に、愛らしい小動物の顔をしているのだ。くりくりとした瞳、大きな耳、栗毛の髪。中でも、耳の形には覚えがある。私が愛するクィア映画『ゴッズ・オウン・カントリー』(2017)に出演しているジョシュ・オコナーもこんな耳の形をしている。彼らの耳についてなら小一時間語れる私だが、そう言ったら引かれてしまうだろうか。

愛嬌たっぷりなルックスのフィンだが、出演作がまだ少なく、かつ日本公開されたりDVD化されていない作品がほとんどなせいで日本での認知はまだまだ広いとは言えない。しかし、満を持して今、彼を推す時が来た。そう、フィンの主演作『恋人はアンバー(原題:Dating Amber)』(2020)の日本公開がついに決定したのだ。昨年の『第29回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~』で上映され、続いて今年のEUフィルムデーズでも回数を限定し上映された本作。知る人ぞ知る映画としての位置を脱さずにいたが、ようやく日本各地で公開されることが決定して、私はガッツポーズを挙げた。

何を隠そう、とにかくこの映画は素晴らしいのだ。フィン演じるエディとローラ・ペティクルー演じるアンバーは互いがクィアなセクシュアリティを持つ男女同士。1960年代のアイルランドを舞台とし、同性愛者への差別や偏見が色濃いスクールコミュニティの中で、2人は付き合うことを名目に自分たちのセクシュアリティをカモフラージュしようとする。

フィンは以前、Netflixで配信していたアイルランド発の映画『ぼくたちのチーム』(2016)でもゲイの学生役を演じていた。そこでこの連載コラムでも紹介したニコラス・ガリツィンと共演し、彼との最高のフレンドシップを見せてくれたわけだが、本作でもその若さから来る愛おしさと良い意味での「どこにでもいそうな男子学生らしさ」は健在。気が強く、自らのアイデンティティに誇りを持って行動するアンバーとは違って、少し引っ込み思案だがそれでも人を想う優しさと愛情深さを合わせ持ったキャラクターを等身大に演じ、思わず映画を観ながら愛おしさに胸がぎゅっと掴まれてしまった。

フィンを見ていると、悩み多き年頃に感じた苦しさと相反して湧き上がってくる楽しさ、その両方がフラッシュバックのように思い出される。それだけ彼が自然体で、「役を演じているが、そう感じさせないほどキャラクターに溶け込んで」自分のストーリーを物語ってくれるからなのだと思う。そういった点で、フィンは私イチオシの期待の新星なのである。

欲を言えば、もっと彼の演じる色んなクィア・キャラクターが見てみたい。苦悩し、悩み、立ち止まって、それでも生きる喜びを感じたり愛を知ったりして、前に進んでいく姿をもっと見てみたい。 

「私にとってあんたは最高の『彼氏』」

そうアンバーが言ったように、最高の「愛」を見せてくれたエディと、彼を演じたフィンに温かな拍手を贈りながら、これからの活躍に目を輝かせていたい。

安藤エヌ