Gosekiのアメリカ徒然探訪録:Day 19

Gosekiのアメリカ徒然探訪録:Day 19

タカヒロの長年の夢が現実のものとなったり、お世話になったケイシーたちに日本の料理をご馳走したり、流行りのアックスダーツに挑戦したり。残り数日の滞在を楽しむ一行。帰国の時を思うと名残惜しさが募る。

主な登場人物

ゴセキ
Awesome &roid ベース、musitライター

タツル
Awesome &roid ヴォーカル/ギター

ショータロー
カメラマン

タカヒロ
Awsome &roid サポート・ギター

ケイシー・デイツ
The Velvet Teenのドラマー/Awsome &roidのアメリカ・ツアーのサポート・ドラマー

ルームメイトT
Aタウンにあるケイシー宅のルームメイト/台湾人

* * *

8月19日

アメリカでの旅も残り数日。終わりが見えてきた。

最初の頃は、まだ何十日もあると若干辟易した時もあったが、シバが帰国し、自分たちの帰国も近づいてくると名残惜しい気持ちになってくる。ようやく簡単な注文や買い物などができるようになり、車の運転も問題なく、もちろんガソリンも自分で入れられるようになったというのに。。残り数日、後悔のないように楽しみたいと思う。

今日はまずは《オレンジカウンティー》へ行く。ショータローが記念すべきファースト・タトゥーを入れるためだ。これが彼にとってアメリカに来た一番の理由と言っても過言ではないかもしれない。なぜなら、彼はこの日を7年も待ち望んでいたのだ。

なんと、彼は今回New Found Gloryのヴォーカル、ジョーダンにタトゥーを入れてもらう。そんな夢のようなことがあるのだろうか。彼は以前からファースト・タトゥーはアメリカでジョーダンに入れてもらうと決めていた。しかしジョーダンが多忙を極めているため、なかなか予定が合わず、ジョーダンと約束をしてから今日まで7年の歳月が経ったという。彼にとって念願の夢が叶う日になったわけだ。彼はジョーダンにNFGへの想いを身体に刻んでもらう。

ショータローが施術を受けている間、時間があったのでタツルとタカヒロと一緒にオレンジカウンティーのショッピングモールに隣接されている大型楽器店《ギター・センター》へ向かう。

実はアメリカでの楽器屋巡りも目的の1つだったのだが、毎日バタバタと忙しく行く暇がなかった。さらに、カリフォルニアの楽器屋はほとんどギター・センターなのではないかと思うほどのシェア率を誇っており、他の楽器屋を見かけることはほとんどなかった(ベンチュラに行った際に見つけたのだが入れなかった)。オレンジカウンティーのギター・センターには元々行く予定だったため、同じチェーンの店なら1ヶ所行けば十分と考えたのだ。

実際に店に入ると、巨大な倉庫のような店内の壁一面にギターが飾られている。この規模の楽器屋は日本にもなかなかないのではないか。店内を見て回ると、US産のギターの多さに驚く。ここはアメリカなのだから当たり前なのだが、楽器屋という馴染みのある環境ですら違うのだと改めて実感した。ちなみにメキシコ産のギターも多かった。比較的安価なものが多かったので、日本でいうフェンダー・ジャパン的な扱いなのだろう。

私はUS産のムスタングというベースに一目惚れし、ギリギリまで購入を悩み、すんでのところで諦めた。ただでさえアメリカの旅で貯金を使い果たす勢いなのに、ここで楽器を買ってしまったら破産してしまうと思ったからだ。実際、買わなかったおかげで助かった面もあるが、もうあのベースにはきっと出会えないと思うと、無理してでも買うべきだったとも思ってしまう。せめてもの記念に、ロック・アーティストの靴下をなぜか購入し店を後にした。

ちょうどショータローの施術も終わったので合流した。彼は太ももにあるメッセージを刻んでいた。New Found Glory によって人生を変えてもらったから、最初に入れるタトゥーは決まっていたそうだ。素敵だと思った。私はタトゥーは入れていないが、入れるとしたらなんて入れようかな。

今日は夜ご飯をケイシーと同居人Tと一緒に食べることになっていた。これまで何度も助けてもらったケイシーたちのために何かしてあげたいということになり、私たちで日本の料理を作ってご馳走しようということになった。すごくホームステイにありそうなイベントだ。ケイシーたちも喜んでくれた。

何が食べたいかと聞くと、日本のカレーとオムライスが食べたいという。カレーもオムライスも日本の食べ物なのかは少し疑問だったが、調べると確かに日本がオリジナルらしい。知らなかった。そもそもアメリカは米を使う料理が少ない。あってもタイ米のようなパサパサした米なので、やはり日本とは少し違うのだろう。それならば日本のお米でカレーオムライスを作ってやろうではないか。

私たちは日本の食材が手に入るスーパー《トーキョーセントラル》へ向かった。ロサンゼルスを中心に展開している日系スーパーで、日本のドン・キホーテの傘下らしく、店内にはドンキのマスコットキャラクター「ドンペン」が至る所に描かれており、日本を感じることができた。

だが商品価格は日本とは全く異なっており、バーモントカレーの素が1,400円だった。じゃがりこやカップヌードルも置いてあり、食べたい衝動に駆られたがどれも日本の定価の2〜3倍はするため、バカバカしくなり買うのをやめた。高すぎるし、何よりあと数日で帰国するのだ。帰ったら好きなだけ食べられる。これが滞在10日目とかだったら買っていたかもしれないとも思う。ちなみに日本産のお米は5,000円。2キロで。目玉が飛び出るかと思ったが、どうせやるなら本気のジャパニーズ・カレーを振る舞おうと思い購入。

トーキョーセントラルでは最低限の物しか買わないつもりだったが、今日はケイシーたちに日本の美味しいビールを飲んでほしいと思い、少し高かったがアサヒスーパードライも買った。アメリカのビールは不味くはないが、味が薄く泡も立っておらず、なぜかどこで飲んでも生ぬるかった。泡との割合が7:3のキンキンに冷えたビール、というのは日本独特の文化のようだ。今夜はケイシーたちに日本のビールの飲み方で飲んでもらう。

家に着き、すぐにカレー作りに取り掛かる。まずはお米を炊こうとしたところ、ケイシーが事前に家にあるお米を炊いてくれていた。5,000円のお米を買ったのに、、、、少し複雑な気持ちだったが、ケイシーの好意をありがたく受け止め、お米はケイシーたちにプレゼントした。日本産のお米を食べる機会はあまりないので喜んでくれた。

気を取り直してカレー作りを始める。カレーは私の得意料理だ。まずはシナモン、クミン、クローブ、カイエンペッパーという4種類のスパイスを炒める。スパイスに火が通ったら荒めのみじん切りにした玉ねぎを大量に追加。にんにく、しょうがを加えながら玉ねぎがきつね色になるまでひたすら炒め続ける。

私がカレー作りに集中している間にタツルとタカヒロは唐揚げを作っていた。唐揚げもまた、フライドチキンとは違う和風の味付けが特徴の日本発祥の料理だ。さっき買った醤油と料理酒で鶏肉に下味をつける。嗅ぎ慣れた和食料理の匂いにホッとする。

タカヒロはタツルのアシスタントをしていたが、彼自身、自炊の経験がないらしく、ほとんど役に立たずケイシーの飼い犬マルと一緒に右往左往していた。彼はギター以外の全ての才能を捨てたような男なので、特に誰も咎めず、床に落ちた食材を食べないかだけ心配した。

さて、カレー作りに戻る。玉ねぎがきつね色になったところでトマト缶を投入する。さらに炒めて水分がなくなった時点で他の野菜、肉を投入する。この時にジャガイモと人参を事前にレンジで温めておくと火が通りやすくなるのでおすすめだ。本来ならここでメインのスパイスを入れるのだが、今回はスパイスカレーではなく、日本の食卓にありそうなカレーを作るのが目的なので、さっき買ったバーモントカレーの素を入れる。水を入れて、あとは煮込みながら塩で味を整えれば完成だ。

今回は白飯のオムライスにカレーをかけた「オムライスカレー」でいただく。カレー、唐揚げ、アサヒスーパードライと全てが揃い、本日の晩餐の準備ができた。ケイシーとTのグラスにビールを注ぐ。もちろん7:3の泡の黄金比で。夏の夜、唐揚げとビールという、日本人なら誰もがよだれを垂らすであろうシチュエーションをカリフォルニアでできるとは。日本を離れてたかが19日なのに、何年も日本に帰っていないような気持ちになった。

カレーも好評で、自分としてもかなり美味しくできた気がする。ショータローはトーキョーセントラルで買ったであろう納豆をカレーに入れていた。スタンダードではないがよくある組み合わせだ。だが納豆自体にそこまでの親しみがないケイシーとTは驚愕していた。

ケイシーとTは私たちの手料理を喜んで食べてくれて、後片付けはみんなで手分けした。なんだか家族のような温かさがある。元々親交のあるショータローはともかく、初めましての私やタツル、タカヒロにも快く寝床を用意してくれて、ドラマーとして一緒にライブにも出てくれる。ケイシーとTにはいくら感謝しても足りないだろう。

片付けも一段落し、リビングでみんなでまったりしていると、Tからアックスダーツへ行こうという提案があった。手斧を数メートル先にある的に向かって投げるダーツのことで、最近流行っているらしい。日本にもあるらしいが誰もやったことはなく、斧を投げるなんてなかなか経験できるようなことでもないと思い、全員で行くことにした。

ロサンゼルスの近くにあるアックスダーツ場《LA AX》は1団体ごとに1人ずつ専属でプロのスタッフがついて、安全を守るためのレクチャーをしてくれる。斧は普通に凶器なので、細心の注意を払わなくてはいけないようだ。めちゃくちゃ丁寧に教えてくれているが、私とタカヒロは英語の意味が全く分からない。とりあえず気を付ければOKということだけ頭に入れた。

アックスダーツのルールもおおよそはダーツと同じなのだろう。的に向かって斧を3回投げ、合計点数で競う。点数の数え方やその他の細かいルールがあるのだが、よく分からなかったので割愛する。

まずは練習ということで、各々で順番に斧を投げる。当たり前だが斧を投げるのは初めてだ。そして思ったよりもずっと難しい。的に刺さるのは刃がついている部分のみなので、的に当たっても上手く刺さらない。1周目はだれもまともに斧を投げられる者はいなかった。

だが2周目で私の才能が開花する。スタッフから「嫌いなやつを思い浮かべて斧を投げるんだ!」的なアドバイスをもらった私は、数少ない嫌いな人リストのトップに君臨する前職の上司を的に重ねて斧を投げた。すると斧は綺麗に、そして豪快に的に突き刺さり、その瞬間なんとも言えないすっきりした感覚が私の手から脳へ駆け抜けた。当時、上司に受けていた嫌がらせで感じたストレスが少し和らいだ気がした。アックスダーツ恐るべし。

コツをいち早く掴んだ私は、その後も誰よりも斧を投げるのが上手くなった。おそらくこのスポーツは、抱えているストレス値の大きさが技術と比例しているのだろう。それならば私に敵う者はこの場に誰もいないと自負していた。しかし、練習したおかげでケイシーもかなり上達してきた。彼も相当なストレスの持ち主なのかもしれない。

その後、練習の成果もあって、ある程度みんな斧を投げられるようになったところで、トーナメント戦をやることになった。狙うは優勝と意気込み、タツル、タカヒロを難なく倒しあっさりと決勝戦。相手はもちろんTと、ショータローを倒したケイシーだ。2回投げた時点では、僅差で私が勝っていた。

そして3投目。ここからは少しルールが変わり、自分が狙う的を申告しなければならない。申告した的以外に当たっても0点。逆に申告した的に見事当たればボーナスをもらえる。そこで私は外してしまったのだ。だが申告した的に命中させるのはなかなか難しく、今日初めて斧を触ったケイシーも外してしまうだろうと高を括っていた。

それが間違いだった。ケイシーは見事に宣言した的に斧を命中させて、逆転勝利となった。かなり負けず嫌いの私は悔しがり、もう一度勝負を挑んだが、それ以降は全く的に当たらなくなってしまった。スランプか?と思ったが手が痙攣していた。ダーツと違い斧は3キロほどの重さがある。それを何度も投げているうちに私の腕は限界に達していたようだ。一方で、筋肉と体力のあるケイシーはまだまだ元気そうだったのが敗因だろう。私は納得し、万全なら優勝していただろうと思い込むことにした。

その後も各々でアックスダーツを楽しみ、深夜の1時頃に帰宅した。ちなみにアックスダーツの料金は1人40ドルと高額で、なかなか予想外の金額に私たちは目を丸くした。今思えば専属でスタッフが1人ついて教えてくれたのだから、それくらいはするのかもしれない。前職の上司への鬱憤を解消できたと考えれば安いと思うことにし、お金を支払った。

こうしてケイシーとTとご飯を食べて遊ぶのも、これで最後になる。寂しい気持ちもあり、家に着いてからもTとしばらく話をした。Tの言葉は分からないが、彼は生粋のアニメオタクだったため日本のアニメの話で盛り上がることができた。途中までは私がおすすめするアニメを紹介していたが、Tはそのほとんどのアニメを知っていたし、最後は私たちの方が逆にTからおすすめのアニメを教えられるほどだった。恐るべき情報網だ。次に来る時はもっと勉強せねばと思った。だが育ってきた国も言葉も違う人とここまでアニメの話で盛り上がれるのは、素直に嬉しく思った。まだまだ話したいことは尽きなかったが、私たちはTにおやすみと告げて眠ることにした。

明日はAwesome &roidにとって2回目のアメリカでのライブだ。このライブが終わればいよいよ旅も終わってしまう。寂しい気持ちを押し殺して、私たちは眠りについた。

* * *

Goseki