薔薇園アヴが託すのは「アーティストとしての真心」──佳境を迎える『0年0組-アヴちゃんの教室-』

薔薇園アヴが託すのは「アーティストとしての真心」──佳境を迎える『0年0組-アヴちゃんの教室-』

「表現の仕事は辛いです。地獄の仕事です。」

教壇に立ってそう語るのは、実力派ロックバンド、女王蜂のヴォーカリスト・アヴちゃん。彼女の目の前に並ぶのは、端正な顔立ちをした16人の少年たちだ。現在日本テレビにて放送中の『0年0組 – アヴちゃんの教室 – 』では、少年たちが「アヴちゃん先生」の指導のもと、スクール型オーディションに挑むことになる。オーディションに勝ち残ったメンバーは、アヴちゃんが自らプロデュースする「オルタナティブ歌謡舞踊集団」をコンセプトとした新しいグループとして活動することが約束される。

16名の少年たちと対峙して生まれる、光×闇の化学反応

集められた少年たちは、新進気鋭の若手のイケメンパフォーマーたちだ。本番組は日本テレビ、スターダストプロモーション、ソニーミュージックのコラボレーションということもあって、有名雑誌のモデルから2.5次元俳優まで、10代の中高生をメインに才能溢れるメンバーが私立裏島音楽学院の座席に座る。

正直に言うと、女王蜂の一ファンである筆者がまず最初に思ったのは「この子たちとアヴちゃん先生の相性はあまり良くないのではないか」ということだ。女王蜂のパフォーマンスの魅力は、猟奇的かつ蠱惑的な楽曲と、暗闇に漂う妖艶さを纏った世界観にある。しかし集まったのは、いわゆる「アイドル向き」な可愛らしく爽やかな少年たち。しかし第一話の中盤、観ているこちらの不安を見透かしたように、少年たちに向かって、アヴちゃんがある言葉を放つ。

「世の中ぶっ壊したいとか、許さないとか、絶対気に入らないと思って組んだのが女王蜂というバンドです」

女王蜂が歌い上げるのは、世の中に蔓延る理不尽な出来事への叫びや、心の澱として溜まった醜い欲望だ。学校という光の場所でも、0年0組はまさにアヴちゃんの教室。言葉を選ばずに言うなら、光の世界だけで生きてきた生徒の底の浅さを見逃さない。生徒たちは正しく自分と向き合い、教師であるアヴちゃんもまた、彼らがパフォーマーとして化けるための課題を容赦なく突きつけていく。

さらに「綺麗なだけのものって興味ないんですよね」という言葉に続けて、「ヤバイ人」を求めていると語るアヴちゃん。平成歌謡グループ試験やビジュアル試験、さらにはミュージカル楽曲試験など、生徒の音楽性を多角的に磨くための個性的な試験内容も、本オーディションの本質を垣間見せながら観る側を飽きさせない工夫を凝らしている。

選抜中間試験では、アヴちゃんが0年0組の生徒の為に書き下ろしたオリジナル曲「Mr.FORTUNE」を披露。アヴちゃんの好きな『ジョジョの奇妙な冒険』にインスパイアされた「だが断る」「オラオラオラオラ!」のフレーズが取り入れられており、まさに女王蜂ワールド全開な本楽曲。振り付けは、世界的ダンス・アーティスト「GANMI」のSota Kawashimaが担当している。豪華すぎるタッグが提供する楽曲に、課題として向き合う生徒たちの成長を楽しむことができるのも番組の面白さの一つだ。

生徒たちが目の当たりにする「薔薇園アヴ」の人生

アヴちゃんは生徒たちに難題を課し、時に厳しいアドバイスを送る。番組参加前から充分に輝かしいキャリアを持つ生徒たちに対しても、一切甘やかすことはない。それは1人のアーティストとして彼らに敬意を払っているからだろう。初回の授業で、「パフォーマンスのあとには必ず拍手をすること」「意地悪は絶対にしないこと」を生徒たちに約束させる。アヴちゃんの持つ魅力と言うと、ド派手な見た目と多彩な音域を操る声につい気を奪われてしまうが、彼女が教えるのはアーティストとしてのハートの持ちようなのだ。教室では技術の高さではなく、本当の意味で観客の心を掴む音楽を生み出したいという想いが、何よりも試されている。

さらにはアヴちゃんが女王蜂として活動する中で、独裁者として歩みを進め、メンバーの心を壊してしまったことを生徒に語りながら省みるシーンも。実際に女王蜂は、2013年2月から10か月間、バンド活動を休止している。0年0組は、普段はヴェールに隠された「薔薇園アヴ」という1人のアーティストのパーソナリティを垣間見ることができる、貴重な場所としても機能している。

本稿の最後に、アヴちゃんが生徒たちに託した「歌」についての言葉を紹介させて欲しい。

「歌は訴えるということ。自己表現であり、自己証明。」

まだあどけなさが残るスターの卵たちは、この先0年0組の教室で何を証明しようとするのか。ステージという地獄の地で、少年たちが自分だけの炎の色を見つける日を楽しみに待ちたい。

* * *

『0年0組 -アヴちゃんの教室 – 』

毎週土曜日25:25〜日本テレビ、毎週日曜日23:30〜日テレプラスで放送中

・Twitter:@0nen0kumi
・YouTube:https://www.youtube.com/@0nen0kumi
・TikTok:https://www.tiktok.com/@0nen0kumi

すなくじら