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【インタビュー】コロナ禍とライブハウス、切り抜けた先の未来を考える Vol.3 下北沢MOSAiC

By星野

新型コロナの国内流行から約1年。今改めて、各ライブハウスがこの1年間で起こった変化を振り返り、読者と共にこの先の「未来」について考える連続企画。
最終回は、音楽が生活に深く根差す街のライブハウス・下北沢MOSAiCで店長を務める、佐々木拓也氏。

日々カルチャーが塗り替えられる街で運営を続ける音楽の宝庫--下北沢MOSAiC

この街に訪れたことがなくても、漫画や雑誌、映画などの情報から「下北沢」という街のイメージはおおよそ想像がつくのではないだろうか。

音楽やファッション、劇場に映画館。様々なカルチャーが交錯する街、それが下北沢だ。渋谷や新宿まで電車で1本、それも10分足らずで到着できるというアクセスの利便性においても申し分のないエリアながら、その街の印象はどこか懐かしさに似た安らぎがあり、初めて下北沢に降り立つ人も温かく迎え入れてくれる。

度々「音楽の街」と喩えられる下北沢だが、その名の通りライブハウスにおいては突出して箱数が多い。これまでに様々なイベンターが「シモキタならでは」のサーキットフェスを展開し、音楽というカルチャーの側面から街全体を盛り上げてきた。

第3回目は、白を基調にしたシックな内装が印象的な下北沢MOSAiCの店長・佐々木氏にインタビュー。音楽が絶えず生まれ続けるこの街で運営を続けるライブハウスが、コロナ前と後でどのように変化したのか。詳しく話を伺った。

取材/執筆=翳目
写真=おすしたべいこ

* * *

一番ダメージを受けたのは、ライブの開催に対するSNSでの批判だった

--まず始めに、下北沢MOSAiC(通称:モザイク)のプロフィールと、この箱のコンセプトについて教えてください。

下北沢MOSAiCは2004年にできたライブハウスです。ライブハウスにしては新しいのかな…。でも、下北のライブハウスってなぜかその時期にオープンした箱が多いんですよね。笑 今年の7月で17年目になります。

モザイクでは年2回『KNOCKOUT FES』っていうサーキットイベントを主催しているんですけど、それはただのサーキットじゃなくて、ネクストブレイクが期待されるアーティストにフォーカスしたフェスで。今年で10回目を迎えました。あとはチケットフリーで入れるフェス(『白フェス』)を開催したりとか。若手を積極的にプッシュする箱、という意味ではモザイクのコンセプトにあたる部分かなと思います。

よく出演しているのはレイラOrganic Call…少し前ならthe quiet roomとかも。歌物のギターロック・バンドが多いですね。

--佐々木さんが店長になったのはいつ頃ですか?

元々スタッフとして働いてたんですけど、昨年の1月にそれまで店長を務めていた森本(真一郎)さんが取締役になった関係で、僕がモザイクの店長を務めることになって。その直後にコロナが流行り始めたんで、もう当時は大変でしたね…。

--そうだったんですね…。2月、3月あたりから徐々に音楽業界もコロナの影響を受け始めたかと思うのですが、当時モザイクはどんな状況だったのでしょう。

そうですね…。もうあんまり覚えてないんですけど、2月3月っていうよりかは4月が一番キツかったかな。3月まではまだギリギリライブができてはいたんです。けど、4月に入ってKNOCKOUT FESも開催できなくなって…。でも一番自分の中で大きくダメージを受けたのは、「ライブやります」っていう告知を(SNSで)した時に結構お叱りの言葉を受けたことで。「ライブやりたいな」っていう気持ちと「やっぱりダメか…」っていう気持ちの間で悩んでました。

--無観客配信にはいつ頃から、またどのように切り替えていましたか?

(無観客配信に)切り替えたのは4月の半ば頃でした。その時は外部の人に撮影を依頼してたんですけど、この先もずっとお願いするわけにはいかないなと思ったので、最初に緊急事態宣言が出たあたりに色々機材を買いに行って…。僕もスタッフも全く素人だったので、「声はどうやって拾うの!?」とか色々話し合って。試行錯誤しながら準備していった感じでしたね。

--実際に無観客配信を行ってみて、最も強く感じた普段のライブとのギャップはなんですか?

(アコースティックの)弾き語りだと「まあ割とアリかもな」とは思うんですよ。もちろん映像越しだと生音とは全く違う聴こえ方にはなるんですけど、これもこれで良いかも、みたいな。でもバンドだとやっぱり物足りなさを感じでしまいますし、普段のライブに比べてトラブルも起こりやすいです。もちろんバンド側から「配信ライブやりたいです!」って言われたらいつでもできるように準備していますけど、僕から「配信やろうよ」とは基本言わないですね。

でもうちみたいにキャパが100-200ぐらいの比較的狭い箱にとっては、キャパ以上の人数に届けられるっていうメリットもあって。その可能性にはすごくワクワクしますね! 普段ライブに来られない地方の人にも見てもらえますから。

下北沢のライブハウスはなくならない。街の人にも『音楽』は必要とされている文化

--緊急事態宣言が出て、アーティストの動き方は佐々木さんから見てどんな印象でしたか?

うちに出演するバンドは学生も多いんですけど、「学校側からライブに出ることを止められた」って言って出演キャンセルするバンドが多かった印象です。個人的にはやってほしいとも思いますけど…その場合はもう「全然良いよ」って言ってますね。

あとはコロナ以降、アイドルの出演が増えました。というのも、モザイクぐらいの規模だとバンドだけでご飯食べてる人ってあんまりいないんですよね。みんなバイトしてたり、仕事があったりっていうパターンが多いので、ライブをしなくても最低限生活はできるんですよ。だからバンドにとっては(ライブハウスへの)フットワークが重かった印象がありました。

でもアイドルの運営の人たちは、やっぱりアイドル自身が活動してくれないと売上が作れないので…。箱としてもイベント制作するためにバンド以外も力を入れたいと思っていた部分もあったので、アイドルのブッキングを増やすようになりました。結果としてはやってよかったですよ! お客さんも来てくれますからね。

--なるほど。そこは少し盲点だったというか…驚きました。佐々木さんにとって、この1年間で最もネックに感じた点はなんでしょうか。

うーん……。ないかもしれないです。(ライブを)やるなって言われたらできないですけど、やってもいいよ、って言われたらやるだけなので。柔軟に対応してきたというよりかは、何も考えてなかっただけなんですけど。笑

--「難しく考えない」というのは皆さんおっしゃっていました。

難しく考えれば考えるほどバッドに入っちゃうんですよ。笑 もちろん必死に頑張ってましたけど…。考えないっていうのはすごく大事な点だと思いますね。

--現在モザイクではどのような営業形態をとっていますか?

お店は基本的に開けていて、スケジュールもおかげさまでほとんど毎日埋まっています。中には地方のバンドだと東京に来られないって理由でキャンセルになったり、それ以外にも延期になったりしますけど、半分以上はちゃんと予定通り実施できていますね。

コロナ対策としては、キャパ50%以下、受付・物販・ドリンクバーにビニールカーテンの設置、それから予約時にお客さんの連絡先を控えるようにしています。あとはドリンク購入の際も電子マネーでのやりとりを推奨したりだとか。PaypayもLINE payも使えるので、割と取扱豊富な方なんじゃないかと。

--本当ですね…! 感染対策に関して、ほかのライブハウスと連絡をとることなどもあったんでしょうか。

ありましたね。それこそ緊急事態宣言とか、まん防の時とかは「どうやって対応する?」「うちはこんな感じで対策するよ」っていうやりとりを結構してて。下北沢に限らず渋谷のライブハウスともよく連絡とってました。やっぱりみんなよく分かってないですからね…。お互いに確認しながら対策の方針を固めていった部分はあります。

--店長になった直後に新型コロナが蔓延し、佐々木さんにとっても苦しい1年だったかと思うのですが、今改めて振り返ってみて、今後も営業を続けていく上で最も必要だと感じることはなんですか?

「ときめき」ですかね。仕事でもプライベートで出掛ける時にしても、ときめきを感じるかどうかって一番大切じゃないですか? で、ライブハウスってそういうときめきを沢山得られる場所だと自分は思っているんですけど、そんな気持ちをお客さんに持って帰ってもらえるイベントを作っていけるような運営を日々心掛けています。

でもやっぱり、コロナ禍になって時代が変わったな、と感じる部分もあります。ライブをやったことがなくても、いつの間にかすごく人気になってるバンドもいたりして。初めてライブをやるって告知してすぐソールドアウトになったりとか。そういうバンドはちょこちょこ耳にするようになったかな。

うちは若手を積極的にプッシュする箱なので、そこに関しては箱としてまだまだ需要があるんじゃないかと。若くても良いバンドって今めっちゃ多くて。最近で言うとケプラ茉莉花、あとはリスキーシフト、mi mi re、Apesとか。こんな状況でも新しいバンドはどんどん生まれ続けてるな、と感じますね。

ライブハウス取材企画を終えて--musit編集部・翳目

3月下旬頃にこの企画を決め、2店舗のライブハウスにアポイントメントをとった。まん防、また緊急事態宣言下という状況もあり、実際の取材に至るまでは時間が掛かってしまったが、どのライブハウスもすぐに快諾の旨をご返信いただいたことは心から嬉しく思う(改めて、今回ご協力いただいた吉祥寺Planet K 田中様/KYARA NEXT 安藤様/下北沢MOSAiC 佐々木様 この場を借りて感謝申し上げます)。

2店舗のライブハウスを<取材>という形で回るにあたり、正直なところ最初は(暗い企画になるだろうな…)という懸念があった。だが、実際に行ってみると、ライブハウスは現在も強く根を張って運営を続けている。私が思っていたよりも二歩、三歩も先を行き、もう既に<未来>のことまで腰を据えて考えているではないか…。

ご存知の通り、ライブハウスは昨年、ありとあらゆる場面で対応に追われる苦しい日々が続いていた(そして現在もなお、緊急事態宣言下という状況から、出口の見えない日々を過ごしている最中である)。

しかしどの店舗も、どれだけ営業時間の変更を強いられようが、予定していたイベントの延期/中止が相次いでいようが、何度も新しいイベントを打ち続け、「音楽」という文化を必至に守ろうとしている。KYARA NEXT 安藤氏の「ライブハウスは強くなった」という言葉の本質は、各店舗がこの1年間で培った精神性を意味するものだろう。

本企画を通して、ライブハウス業界の状況が好転するわけではない。
だけど、私はコロナウイルス収束後の未来をあなたと迎えたい。「ライブハウス」という空間で、また以前と同じように音楽が与えてくれた未知なる体験を共有していたい。

音楽の灯火を消さないため、そして何より、あなたに忘れられないため。そんな思いを込めて、全3回の取材及び執筆に当たっていた。

文化産業において、また個人の生命活動において重要な意義を成す空間である「ライブハウス」が、この先も変わらず人々の心を潤すものとして在り続けるように。

下北沢MOSAiC

【インタビュー】ライブハウスの『未来』について考える Vol.3 下北沢MOSAiC

・所在地:〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-2-14モアイ茶沢1F.B1
・公式HP:http://mu-seum.co.jp/index.html
・Twitter:https://twitter.com/LiveHouseMOSAiC

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星野

ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

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Taku Tsushima/92年、札幌生まれ。『musit』編集/執筆、『ヨムキクノム』スタッフ/バイヤー。個人ではシューゲイザーに特化したメディア&プラットフォーム『Sleep like a pillow』主宰。イベント企画やZINE制作、“知識あるサケ”名義でDJなど。

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