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【インタビュー】CRAFTROCK BREWPUB&LIVE──音楽とクラフトビールのカルチャーを繋げる

By仲川ドイツ

「クラフトビール×LIVE」をコンセプトに掲げるCRAFTROCK BREWPUB&LIVE。

CRAFTROCK BREWPUB&LIVEはその名の通り、ビールと音楽に特化したビアパブ。フロアに醸造所が併設されているため、できたてのビールをその場で味わうことができます。

運営元である株式会社ステディワークスはこのほかにも、全国主要都市に店舗を持つCRAFT BEER MARKET、ポップでおしゃれな居酒屋業態・ビールボーイ、そしてインディー・ロック好きに愛されるイベント『CRAFTROCK CIRCUIT』など、様々な視点からビールと音楽の親和性をアプローチしている企業。今回は、株式会社ステディワークスの社長・田中さんと、CRAFTROCK BREWPUB&LIVEで店長を務める田村さんにお話を伺いながら、CRAFTROCK BREWPUB&LIVEの魅力に迫ります。

取材/執筆=仲川ドイツ
編集=翳目
写真=musit編集部

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「BEER×LIVE=CRAFTROCK!!」

──CRAFTROCKがブルーパブをオープンすると聞いてワクワクした音楽ファン/ビールファンは多かったと思いますし、私自身もその1人です。まずはサーキットイベント『CRAFTROCK CIRCUIT』の前身である『CRAFTROCK FESTIVAL』がスタートした経緯、そしてビアパブオープンの経緯について教えてください。

田中:当時はクラフトビールが徐々に普及し始めていた頃でしたが、まだクラフトビールを知らない人たちへもっとクラフトビールの魅力を伝えたいと思っていました。私自身が元々バンドマンで、かつ大の音楽好きという背景もあり「音楽×クラフトビール」のフェスを開催しようと計画を進めていったんです。

また、その中で、音楽好きに好まれるビールメーカー・CRAFTROCK BREWINGの構想が同時に生まれ、ビアパブとして2019年の9月にCRAFTROCK BREWPUB&LIVEがオープンしました。

パーテーションを設置するなど新型コロナウイルスの感染防止対策も万全!

──お店が掲げているコンセプトの1つに「音楽とクラフトビールのカルチャーを繋げ、 ミュージシャンをサポートするビールメーカー」とあります。「音楽との繋がり」という点でまず注目するのが、やはり店内でライブイベントができるというところですよね。店内の設計や、音響面などでこだわった点を教えてください。

田村:やはりスピーカーですね! 店内に置かれているのはTaguchiスピーカーという国産ハンドメイドのスピーカーを採用しています。高齢の方が1人で作られているんですが、本当に良い音が鳴るんです! そこは特にこだわった点ですね。

内観に関しては、去年、一昨年とアメリカのブルーパブに研修で行っていたので、現地の内装を手本にして作っています。天井は高くし、テーブルは大きく、全体的にゆったりとした作りにしました。

(店内入ってすぐの)着席のエリアとライブができる店内奥のエリアがあり、ライブがない日は奥のエリアで立ち飲みができる作りになっています。なので「ゆったりと食事とビールを楽しみたい人」と「サクッとビールだけ楽しみたい人」、どちらもその日の気分に合わせて自由に楽しむことができます。

豚肉を柔らかく煮込んだ「プルドポーク」など様々な具材が乗ったポテトフライに、マスタードなどのソースがかかったローデッドフライ。その名も「PUNK ROCK」!!

テックス・メックス料理が多いのがCRAFTROCKの魅力の1つ。これも研修で訪れたアメリカのブルーパブで気に入って取り入れたとのこと。気軽につまめる軽めのメニューだけでなく、しっかりとお腹に溜まる食事が多いのも嬉しい。もちろんビールが進む!

──着席のエリアにいてもスピーカーでライブの音は聴こえるんでしょうか?

田村:はい、店内のどこにいてもライブの音声は聴こえるようになっていますよ。

──飲食目的で来店したとしても、思わずライブを見たくなってしまいそうですね!

田村:そうですね。笑 ゆくゆくは毎日ライブができたらいいな、と思っています。

──これまでも国内外問わずバンドや楽曲にインスパイアされたビールはありましたが、それを前面に出したブルワリーというのはとても興味深く感じました。楽曲のセレクトと、ビールのスタイルやレシピはどのように決めていくのでしょうか?

田村:5割くらいを社長が決めて、ヘッドブルワー(醸造責任者の鈴木氏)もすごく音楽が好きなので、残りを彼が決めているようです。できあがったビールを飲んで「このビールはこの曲だな」と名付けることもあれば、曲を先に決めてビールを作るパターンもあるようです。

──作詞作曲で言うところの「曲が先か、歌詞が先か」のようですね。笑 インスパイアされた楽曲はロックが中心ではありますが、フライング・ロータスの「Dance of the Pseudo Nymph」やザ・エックスエックスなど、ジャンルを超えた幅の広さも魅力ですね。

田村:基本的にはロックが多いのですが、過去には小沢健二とスチャダラパーの「今夜はブギーバック」をモチーフに「Boogie Back」というブラックエール・IPAもありましたし、宇多田ヒカルなんかの邦楽もラインナップに並ぶこともあります(「SAKURA Blossom」)。店内BGMも、基本的に社長が自らプレイリストを作って流しています。

こちらもCRAFTROCKの魅力の1つであるサービングタンク。醸造・貯蔵したビールを樽詰めせずに直接このタンクに移すことで空気に触れる回数を少なくし、よりフレッシュな状態のビールをお客様へ提供できる。サービングタンクが5台も常設されているのは国内唯一!

ミュージシャンをサポートするビールメーカー

──CRAFTROCKは積極的にミュージシャンの雇用をしています。ミュージシャンの雇用待遇や働くメリットなどはあるのでしょうか? 

田村:福利厚生として、バンドマンのスタジオ代を会社で負担しているというのが一番大きいですね。それがオープン当時はバンドマン界隈で話題になり、それがきっかけで応募してきてくれた人もいました。現在CRAFTROCKでは5人のバンドマンが働いてくれています。

──バンドマンの場合、例えば一週間ツアーに行くため休まなければいけない…といった状況もあるかと思いますが。

田村:あくまでバンド活動を最優先にしてもらいながら、バランスをとってシフトを組んでもらっています。

──お互い持ちつ持たれつ、という関係性でもあるんですね。

田村:スタッフのバンドにライブ出演をオファーしたり、(会社で支給している)スタッフの名刺にバンド名を入れて、お客様にスタッフのバンドを宣伝できるような工夫もしていますよ。

──なるほど、インディーズバンドが成長するには最適の場所なんですね!

田村:そうですね! ビールを飲みに来て音楽を好きになって帰ってくれる場合もあるし、ライブ目的で来てクラフトビールを好きになって帰ってくれることもある。その両方のパターンが発生することがCRAFTROCKとしては理想の形ですね。

コロナ禍で行われた『CRAFTROCK ONLINE CIRCUIT OSAKA』

──緊急事態宣言が出された期間はお店としてどのように対応していましたか?

田村:4月に緊急事態宣言が出て営業ができない…となった時は、まず既存のビールをどうにかしないといけなくて。なので、自粛期間中はECサイト上でクラウラー販売(ブルワリーやビアパブでお好みのビールを即席で缶詰にしてくれる販売方法。CRAFTROCK BREWPUB&LIVEでは1Lの缶に詰めて販売)を行っていました。皆さんが外に出られないこともあり、通販の需要も大きく、4月5月はECサイトの売り上げに助けられましたね。

特に、3月に某パンクバンドの来日公演に合わせて作ったビールと4月に中止になったサーキット(イベント)用に作った分が大量にあり、とにかく売らなければいけない状態だったのですが、「通販」という手段をとったことで無事に全て販売することができました。

発酵タンクは1000Lが4基、2000Lが1基と東京23区内では最大クラス。週2本ペースで仕込むとのこと。

──軒並み完売という状況でしたよね、すごいと思います。この販売方法は今後も継続していきますか?

田村:クラウラーでのテイクアウト販売は常に行っていますし、ECサイトも今現在は継続中です!

こちらは「‘‘富士紅サーモン”のグレイズダッチ」。量もたっぷりで大満足! アメリカンホップの利いたビールによく合うのです。

──11月8日には『CRAFTROCK ONELINE CIRCUIT OSAKA』がオンラインと有観客で行われました。こちらの開催の経緯について聞かせてください。

田中:2014年から2016年、野外フェス形式で3年連続でイベントを開催して、2017年は規模を拡大しての開催計画に取り組みましたが、ブッキングが上手くいかず開催を断念しました。その経験から、もっと多くのアーティストからの認知や信頼を高めたうえで再度野外フェスに挑戦しようと思い、2018年から比較的開催リスクが低く、演者数の多いサーキットイベントの形式をとっています。

大阪は今年4月から計画を進めていて、当初は4会場を周遊してもらう予定でした。しかし、コロナウイルスの事態収束とはならなかったため、代わりに少人数限定の1会場限定入場の形を取り、採算がとれるよう配信も実施しました。 出演アーティストは、ビール好き(お酒好き)のアーティスト、またライブでお酒と一緒に楽しみやすい音楽を演奏するアーティストをブッキングの基準としています。

ビールと音楽のカルチャーを繋げるために

──先ほどもお話に出ましたが、Instagramでレポートしていた2019年のアメリカ/ヨーロッパの醸造所視察をとても楽しく拝見していました。クラフトビールがカルチャーとして根付いているという点では、やはり欧米は先進的であると思われますが、「音楽とクラフトビールのカルチャーを繋げる」という点で今後の課題や展望があれば教えてください。

田村:今特に力を入れているのは、バンドとコラボレーションしたビールですね。例えばバンドとコラボでビールを作った時にオリジナルのコースターも作って、その裏に描かれているQRコードで楽曲をダウンロードできるようにしています。そういった部分はCRAFTROCKらしいのではないかと。

とにかく音楽好きの人とクラフトビール好きの人が、一緒に繋がるような場所になればいいなと思っています。

取材日にはメタルコアバンド Crystal Lakeとのコラボビール『Watch Me Burn』がラインナップに

それと、今後は主にアジア圏などを中心にビールの輸出もしたいと考えてます。そのためも、まずは国内に販路を広げないといけないと思っていて。クラウラーだと容量が大きいので、もう少し気軽に楽しんでもらえる350ml缶などのサイズでの流通も視野に入れていますよ。

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田村店長からmusit読者へメッセージ

CRAFTROCK BREWPUB&LIVE

・所在地:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町三丁目2番1号 COREDO室町テラス 1階
・公式HP:https://craftrock.jp/brewpub/
・オンラインストア:https://craftrockbrewing.stores.jp
・Instagram:https://www.instagram.com/craftrock_brewing/?hl=ja

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仲川ドイツ

musitが運営するショップ&カフェバー『ヨムキクノム』店長。燗酒と缶詰にはうるさい。趣味は釣具を中心とした古物収集。Bruce Gilbertアイシテル。

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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

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