松永天馬(アーバンギャルド)楽曲提供、アップデートを繰り返す新時代のアイドル・twinpaleが掲げる少女性

松永天馬(アーバンギャルド)楽曲提供、アップデートを繰り返す新時代のアイドル・twinpaleが掲げる少女性

2022年2月9日、Spotify O-EASTにてtwinpale(ツインペイル)初の試みとなるワンマンライブ『Fate or Destiny』が開催される。昨年4月に解散した、彼女たちの前身グループである悲撃のヒロイン症候群(通称:ヒロシン)は、アイドルファンの垣根を超えて広く世間で話題となり、メンバーたちのひたむきな姿が注目を集めた。

個性豊かなメンバーたちがハイクオリティなパフォーマンスを繰り広げる中、特に人気を集めたのが現twinpaleの蒼井叶と白雪姫乃だ。今回はtwinpaleの始動から約4ヶ月、記念すべきワンマンライブに先駆けて、令和のアイドル界に新たな風を吹き込む彼女たちの魅力に迫る。

アイドルの枠を超えた、圧倒的な「可愛い」を生み出すプロフェッショナル

筆者は前身のアイドルグループ・悲撃のヒロイン症候群(2021年4月に現体制解散)のお披露目、いわゆる初ライブに足を運んでいる。

悲撃のヒロイン症候群

そこで目にした光景は今でもよく覚えている。お披露目ライブであるにも関わらず、ほぼ鮨詰状態のライブハウスの中で、色とりどりに光るペンライト。一般的にアイドルのお披露目ライブというのは、ほかのアイドルとの共演によって集客をするスタイルが一般的だが、それでも初舞台から多くのファンが集う場になることは珍しい。

そして、さらに驚いたことにはそのファンの半数以上が10代〜20代の女性だった。もちろん、近年アイドル現場における女性の割合は増えてはいるが、それでもまだライブハウスを拠点に活動する地下アイドルの規模で見ると、依然として男性のファンが多く見受けられる。しかしその後も同じ運営の姉妹グループを含め「女性限定ライブ」がかなりの頻度で行われていることも踏まえ、現在の地下アイドルシーンにおける女性ファンとアイドルの関係性の第一線を築いた存在であるとも言えるだろう。

その中でも、お披露目の時点で圧倒的に各自のカラーのペンライトに照らされ、ファンからの黄色い歓声を浴びていたのが蒼井叶と白雪姫乃だった。なぜ彼女たちは、お披露目の段階で既に「有名」だったのか。この理由に当たるのは、登録者数約20万人にも及ぶYouTubeチャンネル『叶と姫乃【twinpale】』の存在だ。

『叶と姫乃【twinpale】』で見せる2人の表情には、ステージ上で見せる一面とはまた違った柔らかさがある。ファンからの質問に雑談を交えながらざっくばらんに回答したり、時にはすっぴんの状態からフルメイクのやり方を解説したりと、YouTubeというコンテンツの特性を活かして彼女たちの思う「可愛い」を発信し続けている。蒼井叶と白雪姫乃がそれぞれ異なる系統のファッションを楽しんでいるにも関わらず、並ぶと2人はどこまでもセットに感じられるのも不思議だ。

twinpaleはアイドルである以前にインフルエンサーなのだ。そしてそれ以前に、乙女心を持つ誰もが1度は抱いたことのある「自分の可愛いを更新し続けたい気持ち」が画面の向こうからひしひしと伝わってくる。フリルスカートを纏ったアイドルとしての完璧な姿だけでなく、最高の自分でいるためのひたむきな努力が垣間見える様子もファンの心を掴んで離さない。

アーバンギャルド・松永天馬が提供する少女的楽曲

「ショートケーカーズ」「ぼくたちは失敗」他、twinpaleの楽曲は、「トラウマ・テクノポップ・バンド」ことアーバンギャルドのフロントマン・松永天馬が手掛けている。twinpaleのYouTubeチャンネルにて公開されている、アーバンギャルドの楽曲「ワンピース心中」のダンス動画を観ると、2人の対となる世界観を持った少女のアイコニックな存在感は、彼らの楽曲にピッタリとハマることが窺えるだろう。

またtwinpaleの公式MVのうちの1つ、「ショートケーカーズ」はぜひ歌詞と合わせて1度観てほしい。

‘‘わたしはお菓子工場勤務の
 様子のおかしなアルバイト
ショートケーキにいちごをのせて

ショートショートの夢見るガールあなたはチェキ工場
期間工の
態度のおかしなアドバルーン

ショートケーキはいちご最初派?
 ショートカットの夢売るボーイ’’

一部の歌詞を抜粋しただけでは一見深い意味を持たない、単なる言葉遊びに感じられるかもしれないが、実はこの歌詞こそが、twinpaleとアーバンギャルドを繋ぐヒントを隠し持っている。

チェキを生む現場で働く「あなた」と、それを応援しながらアルバイトでお金を稼ぐ「わたし」。あらゆる楽曲の中で、アーバンギャルドはいつも「少女」をテーマにしてきた。しかし、その「少女」というのはあくまで聴き手が抱くフィクションの少女像であることを松永は指摘している。この歌詞はまさに「推しに推しごと」をする少女を描き出し、これを聴く行為もまた「推し(twinpale)に推しごと」をしている少女を想定しているかのように感じる。もちろん、実際は老若男女あらゆる層からの愛が注がれていることは承知の上である。

‘‘ショートケーカーズ
 ショートケーカーズ

目を閉じていればね
 ちいさな痛みも
忘れて笑えるから
それはさておき
 明日も仕事
だけど そのあと
推しに推しごと’’

テクノ・ポップの軽やかなテンポに乗るサビのメロディにどこか聴き覚えがあったのだが、これはメイドカフェ・メイドりーみんの公式ソング「どりーみんパスポート」のオマージュだろう。目を閉じて(自分の世界に浸って)いれば、小さな痛みも
忘れて笑えるというのも、アイドルやメイドを始めとした推しへの偶像崇拝によって乗り越えられる日々の現実を象徴しているように思う。

夢の世界のメイドとして働く少女たちを重ね、「虚構で壊れやすい」からこそ真の意味で光り輝く、概念としての繊細なその姿を、松永はtwinpaleと共に手をとって表現しようとしているのではないだろうか。

日常を大好きな友人と過ごす普通の「少女」と、ある種フィクションとも言える完璧なアイドルとしての「少女」。この鏡合わせのように向かい合った2つの側面を知ったあとだと「あなたの太陽にはなれませんが、あなたの月になれますように。」というキャッチコピーも、意味の捉え方に奥行きが増す。

TikTokやその他SNSも含めた配信者の活動が活発化し、誰もがアイドルになれる時代で、一際異彩を放つtwinpale。新境地で2人が描くアイドル像に、我々はこの先何度も驚かされるはずだ。純粋な少女性を保ちながらアップデートを繰り返すその姿は、どこまでも我々を照らす「月」として光り輝き、今日もステージの上に立ち続けている。

すなくじら