夜光性アミューズが挑む、既存のアイドル像を超えたアイデンティティの探求

夜光性アミューズが挑む、既存のアイドル像を超えたアイデンティティの探求

SNS最盛期においてデビュー前から話題となり、その勢いは衰えを知らぬまま現代のアイドル・シーンに名を馳せる5人組次世代アイドルグループ、夜光性アミューズ(通称:よるあみ)。メンバー個人の活躍や経歴を切り取ってもYouTuberやTikToker、国民的アイドルグループからの参入など、華々しいデビューから続く人気は止まるところを知らない。


キャッチコピーは「夜に煌めくテーマパーク 眠れぬアナタをご招待」。夜光性アミューズの「アミューズ」はアミューズメント(遊園地)という意味と、「楽しませる」「おもてなし」の意味を込めたダブルミーニングだ。

昨年4月のデビューから約1年。26日に控えた単独公演に先駆けて、アイドルが飽和している現代でなお人々の心を掴んでやまない新時代のアイドル、夜光性アミューズの魅力を紐解いていく。

SNS最盛期だからこそ、ファンと日常を共存できるアイドルの形

夜光性アミューズを語るにあたり、前提として押さえておきたいのは、SNSを活用したプロモーション活動である。中にはアイドル活動を始める前からYouTubeを中心に若い世代から支持を得ていたメンバーも在籍していることもあり、夜光性アミューズの活躍の場はいわゆる「現場」でのライブシーンに止まらない。グループでのライブ動画やダンス動画はもちろんであるが、ASMRや日常のルーティン動画、はたまた恋愛相談まで、メンバーによって内容の異なる動画コンテンツから、配信者としての彼女たちの一面が見られることも大きな魅力だろう。

またメンバーによっては個人チャンネルにて「歌ってみた」動画を公開し再生回数を伸ばしていたりと、個人での活動の場においても音楽と深く向き合う姿勢が窺える。

そして何より、この夜光性アミューズのSNSプロモーション活動の中でも特徴的なのはファンがアイドルの舞台裏を知ることができる点だ。例えばみぽたぽたの『みぽたぽたのアイドルデビュー日に1日密着【夜光性アミューズ】)』や『舞台裏のふてこってこんなん【アイドル】』は編集も本人が手掛けているだけあって、ライブという大舞台までのアイドルの等身大の日常を時系列を追って知ることができる。

‘‘何千回何万回のスワイプで出会えた この奇跡に感謝しよう
何億回何兆回スキって言われるより いいねが欲しいのです
何はともあれ Follow me いつも通り Thumbs up
いいね稼ぎの Selfie 今日も可愛いでしょ?’’

上記はトラックメイカー・ユニット、Neko Hackerが作曲を務めたことで話題になった「エキゾチックテレパシー」の歌詞の一部だ。ちなみにYouTubeで公開されている、本楽曲曲のMVのコメント欄では神楽ひなこが「私たちだからこそ歌える曲」と称しているが、歌詞を見て納得である。

この曲は、YouTuber/インフルエンサーの視点からファンに対する愛情とSNS活動への心情を語る曲なのだ。近年の情勢もあり、在宅の時間が増えた現代においてファンとアイドルの最初の接点が現場からSNSへと移行しつつあることは言うまでもないが、だからこそファンは多くのアイドルを始めとした「推し」に出会うチャンスがある。オーディションを通さずとも、誰もが発信する側として様々な形で注目を得るチャンスに恵まれたアイドル戦国時代の中で、自分だけの大切な推しに「何千回何万回のスワイプで出会えた」ことはまさに奇跡としか言いようがないだろう。辛い夜も、スマホを開けばすぐそこにいてくれる、彼女たちのコンセプトである「夜に煌くテーマパーク」とはまさにぴったりの呼び名だと思った。

また「エキゾチックテレパシー」はサビ部分ではポップでキャッチーな色を見せるが、中盤のラップ・パートでは炎上や編集の悩みを含めたプロモーション商法としてのSNSの苦悩が描かれており、表舞台に立つアイドルが綺麗な「サビ」だけでできあがっているだけでない、といったリアリティを聴き手へ想像させる点においても優れた楽曲であると言えよう。可愛いだけの置物としてのアイドルではなく、いいねを始めとした注目を集めるための努力があってこそ、彼女たちの今の輝きがあることを我々はこの楽曲で再認識するのだろう。

更に、Kawaii Futurebassを主軸にサウンドを展開するDJ/トラックメイカーのKOTONOHOUSEが作曲を務めた「ネオンライトセンセーション」では

‘‘画面の向こうへと繋がっているドアを開けて踏み込む勇気を神様下さい
予防線とか妥協とか画面外にスワイプしてスリリングな旅の始まりでしょ’’

と歌われるが、我々が開けるべき画面の向こうへと繋がっているドアこそが、まさに夜光性アミューズの動画の数々であり、非日常へと繋がる動線はいつだってすぐ目の前にあることを教えてくれているように思う。

「個性」で片付けられない芯のあるパフォーマンス

以前彼女たちのライブを現場で観て、「良い意味で箱推ししたくなるアイドルだな」と思ったことがある。アイドルといえば基本的にそれぞれにカラーが与えられて、コンセプトを元に個性的なメンバーが協力して1つのパフォーマンスを作り上げるため、自分好みのキャラクターを持ったメンバーを推す、というのが定石だろう。

しかし、夜光性アミューズに至っては、コンセプトに頼るというよりは既に一人ひとりのパフォーマンスの完成度が非常に高い印象を受けた。もちろん、白空こあいのハイトーンでよく伸びる歌唱力や、ふてこの力強くキレのあるダンスなど、個々に得意分野を持っているため技術的な精度の高さが関与しているとは思うが、「アイドル力」という意味での総合的な高さが印象に残った。みんな違ってみんな良い、全員合わされば最強。まさに、かの有名な美少女戦士のようである。

過去には炎谷莉奈(元NMB48)が‘‘「1からグループを作り上げていくって事をしたことがないので、5人でたくさんの経験をしながら成長して大きなステージに立ってみんなで嬉し泣きしたいです!」’’(引用:https://mdpr.jp/interview/detail/2531174と話しているが、このパワー・バランスにムラのない、全員がアイドルとして同じ方向を向いて向上し続ける姿が「足し算」ではなく「掛け算」でのステージ作りを可能にしているように感じた。

そしてこのアイドルとしての個性に紐付く部分として言えば、夜光性アミューズで現在公開されている8本のリリック・ビデオは本人出演のものではなく、イラストを用いてキャラクター化した映像だ。併せて顔出しのライブ動画も公開しているので、特に顔出しをしないことをビジュアルの売りにしている訳では全くない。しかし、(近年ボカロ文化やニコニコ動画シーンが再び盛り上がっている背景にも言えることだが)、あえて二次元のキャラクターのような音楽配信の形を取ることで、よりそれぞれの持つアイデンティティや世界観を確固たるものとして構築することに成功しているのではないだろうか。

特に、生誕祭で発表されるオリジナル楽曲はメンバーの特徴やカラーを基調とした、よるあみワールド全開の動画となっているので、未視聴の方は是非1度見てほしい。

この二次元の存在のような完成度の高い各個人のアイドルとしての世界観と並行して、先程のより本人の内面が垣間見えるようなSNSのプロモーションに触れた時、我々は夢の世界のエントランスへ招待されてしまっている、という訳だ。

音楽シーンにおける「在宅ファン」の在り方

アイドルの楽しみ方は三者三様であるが、ライブ現場へ足を運ばずにアイドルを応援する人を揶揄するスラングとして用いられる「在宅オタク」という言葉がある。繰り返しにはなるが、アイドルの楽しみ方は人それぞれであるため、その可否はここで議題に挙げるべきではないと思っている。しかし、この情勢の中での成功を掴む鍵を握っているのは、実は「在宅オタク」なのではないかと最近思い始めている。新型コロナウイルスが蔓延する時代で音楽、特にライブシーンの在り方もかなり変化したように思う。夜光性アミューズがここまでの人気を得たのはもちろん彼女たちの努力あってのことだが、デビュー前からの注目度を鑑みても、動画の再生回数やコメント、いいねを始めとした家にいてもできるアクションをすることでアーティストを応援する姿勢の重要さを、ひしひしと感じた。

気軽にライブハウスに足を運べるようになった時代に、もう1度「初めまして」をする機会に繋げるべく、今はインターネットの向こう側でグループを支援する在宅ファンを増やしていく。夜光性アミューズの持つ最強の武器は、まさに現代の荒波を乗り越えるための、そして彼女たちをアイドル界の頂点へと運んでいくための方舟となることだろう。

すなくじら