GRAPEVINEやThe Birthdayまで──On-U Sound総帥、Adrian Sherwood(エイドリアン・シャーウッド)が手掛けた日本のアーティスト4選

GRAPEVINEやThe Birthdayまで──On-U Sound総帥、Adrian Sherwood(エイドリアン・シャーウッド)が手掛けた日本のアーティスト4選

レーベル設立から40周年を迎えてもなお、新鮮な感動を私たちに届けてくれるUKのレゲエ/ダブ・レーベル、On-U Sound。去る4月8日にはジャマイカのレジェンド的レゲエ・シンガー、Horace Andyの新作『Midnight Rocker』がリリースされたほか、5月20日には故Lee “Scratch” Perryの未発表曲「The Many Names Of God」も収録されたコンピレーション盤『Pay It All Back Vol.8』がリリースされる。

On-U Soundの魅力を挙げるなら、まずはレーベル総帥、Adrian Sherwood(エイドリアン・シャーウッド)によるミックスの手腕だろう。ある時は過激に、またある時はオーセンティックに。ジャマイカのルーツ・レゲエとは異なる、都会的でスタイリッシュな音響が構築されている。

Adrian Sherwood
photo by Ishida Masataka

また、レゲエ/ダブを芯に据えながら、The SlitsのAri Upも参加したNew Age SteppersやThe Pop Group解散後のMark Stewartのソロ作品、エクスペリメンタル・プロジェクト、The Missing Braziliansなど、ポストパンクやインダストリアル、ヒップホップやノイズさえも取り込んだウイルス進化説的リリースで、ポップ・ミュージックの前進に大きく貢献してきた。

こうしたOn-U Sound/Adrian Sherwoodのスタンスは世界中のミュージシャンから支持され、彼はレーベル以外でもプロデュースやリミックスを手掛けてきた。いくつか例を挙げてみる。

Primal Scream『Echo Dek』(アルバム全曲をミックス&プロデュース)
Nine Inch Nails「Down in It」(プロデュース)
Einstürzende Neubauten「Yü-gung -Adrian Sherwood Remix-」
Blur「Death of a Party – 7″Remix」
Gogol Bordello「Lifers – Adrian Sherwood Remix」

以上はあくまで彼の仕事のごく一部分だが、これだけでもAdrian Sherwoodがいかにミュージシャンから信頼され、影響を与え続けているか分かるだろう。そして、もちろんそれは日本のミュージシャンも例外ではない。そこで、本稿ではAdrian Sherwoodが携わった日本のミュージシャンの作品を紹介する。

Audio Active『Audio Active Sound Crash』

On-U Sound / Beat Records
2006/03/25
筆者提供

まずはOn-U Sound/Adrian Sherwoodを語るうえで外せないであろう、レーベル初の日本人アーティスト(※1)となったダブ・バンド、Audio Active。このアルバムは、彼らがOn-U Soundに残した音源をAdrian SherwoodがDJミックスした作品。

地を這って唸りを上げる超絶低音ベース。SFチックな世界観をイメージさせる宇宙空間的エフェクト。ジャマイカなのかロンドンなのか、はたまた日本なのか──過去か未来かさえも分からない、壮絶異次元サウンド。インナースリーヴには元ネタとなったトラックが収録されたアルバム名も載っているので、Audio Active入門としてもオススメだ。

※1:ただし、日本人のキシ・ヤマモト氏がフォトグラファー/キーボーディストとしてレーベル始動当初から携わっている。

ACO『material』

Ki/oon Records(現:Ki/oon Music)
2001/05/23
筆者提供

トリップホップのダウナーさ、Kate Bushやmúmを想わせる繊細さ、音響の凶暴さ。ACOの豊かなイマジネーションの一端に触れられる、J-POP史上に残る超絶名盤。

全13曲のうち、9曲をAdrian Sherwoodがプロデュースやミックスで携わっている。ロンドンのAdrianの自宅で作曲を行っていたり、ほぼ共作とも言える内容。レコーディング時のエピソードはSony Musicのサイト内でも公開されているので、そちらをご参照あれ。

GRAPEVINE『Divetime』

ポニーキャニオン
1999/08/18
筆者提供

同年5月にリリースされた『Lifetime』のリミックス・アルバム。Adrian Sherwoodは「Slow(スロウ)」「Hikari Ni Tsuite(光について)」の2曲をリミックス(※2)。Adrianの他にもはMad ProfessorやZAKなどダブに携わるリミキサーが多く参加しているが、全体としては純粋なダブ・アルバムというよりはPrimal Scream『Screamadelica』に近い印象(似ているわけではない)。『Lifetime』の端々に垣間見えるサイケデリックの蕾をリミキサー各々の手法で開花させている。

本当に申し訳ない話なのだが、GRAPEVINEは畑違いだと思ってほとんど聴いてこなかった。この盤を聴いたあとに、元になった『Lifetime』と近年の幾つかの作品を聴いてみると、普段から演奏や音響面で面白いアプローチをしていることを知った。リミックス・アルバムは評価を受けにくい面もあるが、個人的にはもっと日本でもリリースされてほしいと思っている。

※2:「Slow」は、CDと配信では「On the Pipeline mix」、LPではよりダイナミックなエフェクトが施された「Fast and Furious Virsion」という、それぞれ別のバージョンが収録されている。

The Birthday『The Birthday meets Love Grocer at On-U Sound Mixed by Adrian Sherwood』

UNIVERSAL SIGMA
2009/05/13
筆者提供

ロック・バンド、The Birthdayのダブ・リミックス盤。全5曲のうち4曲のミックスを手掛けている。Amazonのレビューでは彼らのファンからの評価は散々だが、Love Grocerの極上なホーンアレンジとAdrian Sherwoodのキレッキレの過激なダブ・ミックスを堪能できる、ダブ史上に残る名盤だ。

まずThe Birthdayの曲が、そしてチバユウスケのしゃがれた低音ヴォイスが、ダブと相性抜群だということに素直に驚く。ディレイとリヴァーブによって、まるで溶けたアイスクリームのようにホーン・セクションとドロドロに絡み合い、唯一無二の音像を構築している。

それにしても、「NAMIDA GA KOBORESOU(涙がこぼれそう)」の“アスファルトからロンドン・パンク聞こえてた”というリリックがかなりエモい。The Clashのメンバーやセディショナリーズに身を包んだJohnny Rottonがレコード屋でレゲエの盤をディグり、Don Lettsがパンクス相手にRoxy ClubでDJしていたあの時代のロンドンを夢想させてくれる、このアルバムの世界観を象徴するようなフレーズだ。

その他のミックス/プロデュース・ワークス

今回紹介した以外にも、古くはスネークマンショーやタモリ、SET(劇団スーパーエキセントリックシアター)、近年ではにせんねんもんだいまで、様々な音源のミックスやプロデュースを手掛けている。

Adrian Sherwood
photo by Ishida Masataka

また、単品だと以下のリミックス曲もストリーミングで聴くことが可能だ。

The Mad Capsule Markets「WALK! -Adrian Sherwood Remix CD Version-」

SOFT BALLET「(Trip The)NEEDLE parts 1 and 2 remixed by Adrian Sherwood」

特にSOFT BALLETは、疾走するマシン・ビートとアジテート・ヴォイスがひたすらかっこいいので是非聴いてみてほしい。

日本との親交が深いAdrian Sherwoodのことなので、今回名前を挙げた以外にも彼が携わった日本人ミュージシャンの作品が存在するかもしれない。もし情報をお持ちだったら、是非musit編集部までお寄せいただきたい。

* * *

V.A.『Pay It All Back Vol. 8』

レーベル:On-U Sound / Beat Records
リリース:2022/05/20(CD)・2022/08/05(LP)

CD トラックリスト:
01. MAD 45 – You’ll Own Nothing
02. Lee “Scratch” Perry ft. LSK – Many Names Of God
03. Tackhead ft. LSK – Rulers & Foolers
04. Rita Morar – Meri Awaaz Suno (Hear My Voice)
05. African Head Charge – Asalatua
06. Horace Andy – Watch Over Them
07. Mark Stewart – Storm Crow
08. Creation Rebel – Stonebridge Warrior
09. Jeb Loy Nichols – What Does A Man Do All Day?
10. Denise Sherwood – This Road
11. Sherwood & Pinch ft. Daddy Freddy, Ghetto Priest and Jen Jen – We No Normal (Anger Management)
12. Andy Fairley – Your Best Tune
13. Lesson 7 & Scott Crow ft. Doug Wimbish – andthe (Arise) Adrian Sherwood Remix
14. Hebden’s HiFi – Segue 8
15. Tackhead ft. MAD 45 – I Don’t Wanna Work A Fake Job
16. Sherwood & Pinch – Excessive Drinking
17. Ital Horns – Metropolis
18. LSK – Money Masters
19. Andy Fairley – Deranged Man

CD 商品ページ:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12750

LP トラックリスト:
A1. MAD 45 – You’ll Own Nothing
A2. Lee “Scratch” Perry ft. LSK – Many Names Of God
A3. Tackhead ft. LSK – Rulers and Foolers
A4. Rita Morar Meri Awaaz Suno (Hear My Voice)
A5. African Head Charge – Asalatua
A6. Horace Andy – Watch Over Them
B1. Mark Stewart – Storm Crow
B2. Creation Rebel – Stonebridge Warrior
B3. Jeb Loy Nichols – What Does A Man Do All Day?
B4. Denise Sherwood – This Road
B5. Sherwood & Pinch ft. Daddy Freddy, Ghetto Priest and Jen Jen – We No Normal (Anger Management)
B6. Andy Fairley – Your Best Tune

LP 商品ページ:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12751

仲川ドイツ