期待のニューカマー・レトロな少女が展開する、歯痒くも痛烈なポップ・ミュージック

期待のニューカマー・レトロな少女が展開する、歯痒くも痛烈なポップ・ミュージック

2人組の男女音楽ユニット、レトロな少女が巷で話題になっている。
福岡在住の成山まことが作詞/作曲を手掛け、東京在住の佐藤餓死がヴォーカルを担当。高校時代から楽曲制作をしていたという成山の楽曲は、捻くれていながらも節々にオリエンタルな要素が組み込まれている点が特徴的だ。

また、アイドル活動を経て成山からスカウトを受けた、という佐藤の歌声も、成山が制作する楽曲と相性良く聴こえる。相対性理論、ラブリーサマーちゃん、カラスは真っ白などからインスパイアされているようにも感じるウィスパーボイスの持ち主だが、女子特有の感情の機微を上手く表現している点で彼女のプロ意識を感じる。

レトロな少女は、昨年2月に活動を開始したばかりのニューカマーだ。自作のMVをYouTubeに載せていたところ、段々と早耳のインターネット民から支持されるようになり、先日8月5日にタワーレコード限定CD『タワレ娘』を発売。9月には満を辞して1stアルバム『1限目モダン』をリリースする。

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‘‘ぐるぐるして くるくるしてグズグズする晴れ間に くらくらするグラグラする 肩を寄せていいよね”

少しずつ文字を入れ替えながら展開されていく部分に成山の遊び心を感じる「私の大統領」は、片想いの相手と距離を縮めたいと思う反面、自信のなさから躊躇ってしまう--といった内容が綴られているラブソング。

等身大ではなく、ありのまま自分のままで近寄りたいと願う歌詞に、佐藤の着飾らない歌声がよく似合う。だからこそ不思議と耳に残るのではないだろうか。例えるならば、減量中の誘惑を「甘いものは別腹」と潔く負けを認める女子にでもなった気分である。それほどまでに、彼女の歌声は聴き手の心を狙い撃ちにする。

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‘‘新宿駅のホーム 揺れる改札前の私は
300円で買った雑誌を見て
六時半過ぎのパン屋 デート帰りのあの娘みたいだ
ラッシュな夜の京王線の ベルが鳴っていた’’

”新宿経由で三千回は 君の心に触れた
新宿経由で三万回は 乗り過ごしても関係ない”

「新宿経由で三千回」はリアリティのある恋愛体験が描かれた甘酸っぱくもほろ苦いナンバーだ。恋は新宿駅車内のように、いくつもの行手が絡み合って思うように先へ進めない。3000回とまではいかないかもしれないが、数多くの‘‘君の心’’に触れる瞬間が訪れては過ぎて行った。レトロな少女の<レトロ>とは、聴き手各々が思い起こす回想にあたるようにも感じる。

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そんな彼女たちが発表した最新作「さんすうのこたえ」だが、MVには辻 友貴(cinema staff)、是永 亮祐(雨のパレード)、有島 コレスケ(arko lemming)が出演しており、早くも注目を集めている。

今回も成山視点での恋愛観が存分に盛り込まれた、無邪気かつ痛烈なポップな仕上がりになっている点が印象的だ。未だ実態の掴めない彼女たちだが、今後の国内ポップ・ミュージック界隈において見逃すことのできない存在になるのではないだろうか。2人の未来に胸を弾ませながら、我々は彼女たちの織り成す音楽に恋のごとく翻弄されていたい。

PROFILE

ヴォーカル:佐藤餓死
作詞/作曲:成山まこと

翳目