初心者のためのシューゲイズ講座【My Bloody Valentine 後編】

初心者のためのシューゲイズ講座【My Bloody Valentine 後編】

こんにちは。三度の飯より靴を見る、おすしたべいこです。

みなさんにシューゲイザーの魅力をお伝えするべく筆をとる今回の連載。
前回は、My Bloody Valentineの『Loveless』について語りました。

 

ただ!!! マイブラは『Loveless』だけじゃないんです。その完成度の高さや唯一無二のサウンドデザインから「シューゲイザー」の総本山的な位置付けにある『Loveless』ですが、マイブラは他に2枚アルバムをリリースしています。あの真っ赤なジャケットに埋れがちなその2枚に、今回は焦点を当てていこうと思うわけです。

今こそ再評価の流れを…!ということで、早速行きましょう。

 

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『Isn’t Anything』(1988)が描き出した白昼夢

『Isn’t Anything』ジャケット

マイブラの記念すべき1stアルバムである本作。それまでは、基本的にギター・ポップ路線だった彼らでしたが、シングル『You Made Me Realise』(1988)で覚醒、前のめりに疾走していくノイジーなギター・サウンドを展開しました。当時ケヴィン・シールズ(Vo. G.)はSonic YouthやDinosaur Jr.から強く影響を受けており、独自にチューニングや奏法を研究した成果は、同年の『Isn’t Anything』で見事結実することとなりました。

“You Made Me Realise”はアルバム未収録ですが、マイブラに取っての新時代の訪れを宣言する爆裂ナンバー。多少荒削りながら、卒倒しそうなくらいノイジーなギターがとにかく鮮烈です。特に中盤のノイズ・パートはライブでは大幅に延長されることが多く、2008年のフジロックでは17分ほど続いたとか。

それにしても、このアルバムを『Loveless』への序章と捉えて終わるのはあまりにも短絡的だと思います。全体を覆う不穏で不安定な空気感、退廃的かつ官能的な詞世界と音像、堕落した酩酊感を誘いながらも時折牙を剝くギター、ドラム、ベース…。何を言っているのか分からないかもしれませんが、『Isn’t Anything』を文字で表すなら、そういった言葉が当てはまります。暴れ回る狂気や深淵なる絶望を必死に押さえつけるような危うさが、このアルバムからは感じられます。『Loveless』とは異なるベクトルでオリジナリティを確立していることは明らかです。

シングルにもなっている”Feed Me With Your Kiss”。強烈なノイズと疾走感、そこに乗る男女ツイン・ボーカル。タイトルも相まって、あまりにも官能的なナンバーです。この甘美さと毒気が共存した作風が後進のミュージシャンに与えた影響の大きさは見過ごせません。

怖いもの見たさ(聴きたさ)で思わず首を突っ込んで後悔するような、強烈なトリップ感。その白昼夢のような世界にいつしか心地良さを覚え、病みつきになってしまう恐ろしいドラッグのようなアルバムです。

 

『m b v』(2013)が示した新たな地平

『m b v』ジャケット

1991年に2ndアルバムである『Loveless』をリリースして以降、マイブラはあまりにも長い沈黙期間に突入します。あのアルバムは、彼らからクリエイティビティを奪うには十分すぎる完成度を誇っていたと言えるでしょう。その後、2008年に再始動を果たし、2013年にようやく待望の3rdアルバムとなる『m b v』をリリースしました。

既に国内外でマイブラフォロワーのバンドが活躍する中で本家が提示したのは、その一歩先、いや二歩先…。いやいや、もはや誰にも到達不可能な域にあるものでした。ミドルテンポな曲が多く、ひたすら同じようなリズムが続くミニマルさからは一種の「悟り」のようなものを感じます。轟音ギターと囁くような歌声は健在で打ち込みの要素もあり、”Soon”からの地続きであることも垣間見れますが、後半のトランス状態に陥ったような性急なビートや歪んだサウンドからは、『Loveless』の呪縛から解放され自由になり、新たな地平へとたどり着いたことが告げられています。アルバム名にバンドの頭文字を冠しているのも象徴的です。マイブラはマイブラでしかないことを示した快作と言っていいでしょう。

※本作からはMVが一曲も制作されておらず、サブスクリプションの配信もないため(そもそも現在マイブラの全音源がなぜか配信停止中)、リンクは貼りません。一応YouTubeに上がっていますが、それをオススメするのはレコ屋店員としてのプライドが許さないため、是非CDを手に取ってその前人未到のサウンドを楽しんでいただきたいです…。

 

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前後編に渡り、アルバムを通してMy Bloody Valentineの魅力に迫って参りましたが、いかがだったでしょうか。

まだまだ語りたいところではありますが、この記事の趣旨はあくまで「入門」なのでこのくらいにしておきます。より詳しく知りたい方は、僕が運営するシューゲイザー専門サイト「Sleep like a pillow」をチェックしていただけると幸いです。ディスクレビューやコラムなどを順次展開していく予定でございます。

 

…ここぞとばかりに盛大に宣伝しました。

さて、マイブラ編は今回で終了し、次回はRideについて書いていく予定です。どうぞお楽しみに。それでは!

おすしたべいこ