独断と偏見のスピッツ10選

独断と偏見のスピッツ10選

祝! スピッツ16枚目のアルバム『見っけ』リリース!
そして、全流通音源の一挙サブスクリプション配信スタート!

…ということで、去る2019年10月9日は、列島がスピッツに湧いた日と言っても過言ではなかったでしょう。

かく言う僕自身、かねてよりスピッツの音楽は愛聴しており、既に全音源がウォークマンに入っておりますが、それでもやはりサブスクリプションの解禁は嬉しいものでした。Twitter上で歓喜するファンたちを見て、ここまで自分の気持ちが高まるとは思っていませんでした。
何よりこれで、iPhone上で好きなだけプレイリストが組めますし、誰かにオススメするのも随分気軽になりました。

そんなこんなで、僕としてもこれは一筆したためなければ…という気持ちで、個人的にスピッツの好きな曲を紹介する記事を書くことにしました。完全に独断と偏見でのチョイスとなりますが、特に歌詞の部分にフォーカスをあてて書き連ねていこうと思います。
スピッツをもっと深掘りしたいけど、何から聴けばいいか分からないという、そこのあなた! この記事が少しでも良いきっかけになれば、それ以上のことはありません。もちろん、ディープなファンの方々にも楽しんでいただけたら、さらに嬉しいです。

 

*  *  *

 

ありがとさん (2019 / from 『見っけ』)

まずは最新アルバムより、MVも公開された一曲。

『音楽と人』(2019年11月号)のインタビューによると、「自分が死んだイメージで描いた曲」とのこと。
スピッツを語る上で「死」というテーマは切っても切り離せません(後述参照)。かつては「相手が死んでしまった前提」で物語を描いていたのが、近年では死んでいるのが自分になり逆転したというのは、非常に興味深いです。

謎の不機嫌 それすら 今は愛しく
顧みれば 愚かで 恥ずかしいけど

この歌詞、本当に切ないですね…。

とは言え、別れを「悲しいもの」で終わらせず、乗り越えていく確かなしたたかさが、優しく胸に染み渡る一曲です。「ありがとう」ではなく「ありがとさん」というところも、非常にスピッツ的です。
スピッツを聴き始める「入口」としても、なかなか相応しいのではないかと思ったりします。

それにしても、アウトロのトレモロアームで浮遊するギターがとても心地良いですね。力強いベースも良い。

 

*  *  *

 

海とピンク (1991 / from 『スピッツ』)

僕にとって2019年は様々な理由から特別な意味を持った年なのですが、初めて行ったROCK IN JAPAN FESTIVALで初めてスピッツを観た経験は僕にとってとりわけ深い意味があると言えます。そしてこの”海とピンク”は、そのライブの一曲目に披露されたものでした。
※余談ですが、この時RADWIMPSの”前前前世”のカバーも披露され、ひたちなかは大盛り上がりでした。

先ほど、スピッツを語る上で「死」というテーマは切っても切り離せない、と書きましたが、特に初期のスピッツの歌詞は「死」か、もしくは「セックス」をテーマにしていることがほとんどです。そして、この1stアルバムに収録された曲は完全に後者です。

ノリが良くライブでもよく披露される曲なのですが、超絶怒涛のエロソングだという事実を踏まえると、あの国内最大級の邦楽ロックフェスの一発目にかましてくるのは、とてつもない爽快感があるというかなんというか…。これはスピッツの「反骨精神」だと、僕は勝手に捉えました。

この曲のどこがエロいのかというと、まあ、そういう前提で歌詞を一通り見てもらえば分かります。

ほらピンクのまんまる 空いっぱい広がる
キラキラが隠されてた
繰り返し遊んだら すぐそばで笑ってた
毒入りのケーキのカケラ

しんしんと花びらも
指先で冷たくふるえてる
小さな玉砂利が
足の裏くすぐる海岸で
ちょっと君を見て 海を見て
あくびして

あまりこの場での直接的な発言は避けますが、「ピンクのまんまる」とか「花びら」というのは女性のアレだというのが一般的な解釈です。となれば「玉砂利」もアレだし、もう完全に情事の歌。「海」というのも、そっち系の比喩なのではないでしょうか。「あくびして」なんて、事後の倦怠感としか考えられません。

こんな歌詞なのにポップだし、ギターソロは最高にかっこいいし、サビ(?)では「チュチュ〜〜〜」とか「アア〜〜〜」なんて適当(?)に歌っている。ド変態。

 

*  *  *

 

雪風 (2016 / from 『醒めない』)

スピッツ史上初の「冬ソング」。確かに「春」「夏」「秋」の曲はパッと思いつきますが、冬の曲は意外にも無かったですね。

この曲も、草野マサムネ曰く「自分が死んだイメージで描いた曲」だそうです。
それを踏まえると、大切な人と死別してしまった主人公が「君」を思う、とても切ない物語が浮かび上がってきます。

個人的に好きなのは、2番のサビの歌詞。

お願い夢醒めたら 少しでいいから
無敵の微笑み見せてくれ
君は生きてく 壊れそうでも
愚かな言葉を 誇れるように

ここは完全に涙腺崩壊ポイントです。だんだんと音程が上がっていくメロディと草野さんの切実な歌声に、これでもかというくらい胸を締め付けられます。スピッツ屈指の泣きメロソングですね。

にしても、草野さんは「愚か」という言葉が好きだな。

 

*  *  *

 

水色の街 (2002 / from 『三日月ロック』)

僕がスピッツで一番好きな曲を選ぶなら、迷わず”水色の街”を挙げます。

例に違わず「死」をテーマとしたであろう歌詞と、スピッツが持つ特有の青い透明感が合わさることで、聴く者の心にゆっくりと突き刺さる…。この冷ややかさと優しさが絶妙に入り混じった雰囲気は、草野マサムネにしか生み出せないと思います。

川を渡る 君が住む街へ
会いたくて 今すぐ 跳びはねる心で
水色のあの街へ

「入水自殺」の曲だというのが通説です。「川」というのも、三途の川を指していると捉えるのがしっくりきますね。
ちなみに、モチーフとなったのは神奈川県川崎市だとか。

そして、サビでは「ラララ」としか歌わない。そんな曲がシングルになっているところも含めて、僕が狂おしいほど愛してしまう一曲です。

 

*  *  *

 

あわ (1991 / from 『名前をつけてやる』)

僕がスピッツのアルバムの中で最も好きなのが『名前をつけてやる』なのですが、この”あわ”は収録曲の中でもとりわけ「ヘンテコ」で個人的に気に入っています。

でっかいお尻が大好きだ
ゆっくり歩こうよ

機関銃を持ち出して
飛行船を追いかけた
雨の朝

…????

歌詞をパッと読んだだけでは、もう本当に何のことやら…という感じです。この意味のあるような、あるいは全然ないようなつかみどころが分からない言葉たちは、オートマティスム(自動記述)っぽい感じもします。素っ頓狂に歌い上げる草野さんの声もまた、クセになりますね。

もはや意味というよりは、語感の良さを優先させていると捉えても良さそうですが、やはり「死」をイメージした曲なのか?と勘繰ってしまうのがスピッツファンです。「子どもを堕ろす曲」だと解釈している記事を読んで、僕は戦慄しました。良い意味で。マサムネワールドは奥が深すぎる。

 

*  *  *

 

オパビニア (2013 / from 『小さな生き物』)

「オパビニア」とは何のことやら、と思う方が大半かもしれませんが、僕がこの曲の存在を知った時はとにかく感動してしまいました。

オパビニアというのは、カンブリア紀(約5億500万年前)の海に生息していた古生物の名前です。5つの眼と、象の鼻のように長い口を持った奇妙な生物として知られています。体長は4〜7cmと、まさに「小さな生き物」。
僕は物心がついた頃から恐竜やその前後の時代の古生物が大好きで、オパビニアの存在も知っていました。まさかスピッツと古生物が出会うとは。

スピッツという超国民的なバンドが「オパビニア」という曲を歌うことについて、ちょっと冷静に考えてみてください。そう、それはつまりオパビニアを世間に知らしめることと同義なのです。

誇り高きあの オパビニアの子孫
俺は生きていた 妄想から覚めてここにいた

この歌詞、最高じゃないですか? 「誇り高き」って、はっきり言ってますから。アンモナイトや三葉虫やアノマロカリスに比べれば知名度に欠ける存在が、こうして脚光を浴びることが、僕にとっては嬉しくて仕方がない。
いや、お前が冷静になれよ。

 

*  *  *

 

ワタリ (2005 / from 『スーベニア』)

熱狂的なスピッツファンとしても知られる川谷絵音も好きだと公言する一曲。
※indigo la Endの「indigo」は、スピッツのアルバム『インディゴ地平線』から取られたとか。

アルバムの中でもとりわけロック色が強く、スピッツ随一と言ってもいいほどの疾走感がある曲ですが、そんなサウンドとは裏腹に何とも自虐的な歌詞が印象的です。

誰のせいでもねえ すべて俺のせい
可笑しいほど白い花を手に持って
誰のせいでもねえ すべて俺のせい
マジメ過ぎただけ 君が見た夢

冒頭からこれですからね。

「可笑しいほど白い花を手に持って」というフレーズは特に秀逸で、「可笑しいほど白い花」とも言えるし、「花を手に持っていること」自体が「可笑しい」とも読み取れます。
こうして考えると、この曲の疾走感は惨めで愚かな自分を振り切っていくような、そんなイメージに繋がるかもしれません。

 

*  *  *

 

甘い手 (2000 / from 『ハヤブサ』)

激しめなスピッツを堪能できる『ハヤブサ』より。この曲は全体的に落ち着きのある方ですが、とにかくサビの高音が神がかってます。草野さんの歌声に聴き惚れること間違いなし。その後ろで歪むギターも文句なしでかっこいいです。
そんなサビで歌われる歌詞がこちら。

はじめから はじめから 何もない
だから今 甘い手で僕に触れて

何とも意味深ですね。「甘い手」という絶妙な表現も、やはりエロな方向に考えられなくもなかったりします。

遠くから君を見ていた
反射する光にまぎれた

愛されることをしらない
まっすぐな犬になりたい

この辺とか、考えることを放棄してとにかく「君」のものになりたいと願うような、歪んだ愛情が見え隠れしてますね。男女のドロドロにもつれた、救いようのない偏愛の物語…とでも言いましょうか。

 

*  *  *

 

僕の天使マリ (1992 / from 『惑星のかけら』)

僕が生まれた年にリリースされたアルバムから。まあ、そんなことはいいとして。
この曲、かわいくて結構好きなんですよね。

僕の心のブドウ酒を
毒になる前に吸い出しておくれよ

ここの歌詞とか、妙に印象的です。「マリ」という女性へのほとばしる想いをひたすら歌い上げるラブソング、だとは思うのですが…。

みなさんは1961年に三重県で起こった「名張毒ぶどう酒事件」をご存じでしょうか。
この事件の被害者の中に、犯人(冤罪との指摘もある)の妻と愛人がいたのですが、それを絡めてるのではないか…?と思ったり、思わなかったり。ちょっと深読みが過ぎますかね。

ちなみに、これは超絶個人的な話なのですが、この曲を聴くとエヴァンゲリオンの新劇場版に出てくる「真希波・マリ・イラストリアス」を思い浮かべます。名前だけなんですけど。
僕の天使 真希波・マリ・イラストリアス(CV:坂本真綾)。
…なんでもないです。

 

*  *  *

 

運命の人 (1998 / from 『フェイクファー』)

『フェイクファー』をスピッツのアルバムのベストに挙げるファンはかなり多い気がします。そしてこの”運命の人”も人気が高い印象ですね。

バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日

愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ

あえて無料のユートピアも 汚れた靴で通り過ぎるのさ

スピッツ屈指の名フレーズの嵐。「自分の人生は自分で決める」という強い意志が感じられます。

そのままポジティブなラブソングと捉えるか、お決まりの「死」の歌なのか、というところは解釈が分かれるようですが、そうやって複数の意味で聴くことができるのは、やはり草野マサムネが書く歌詞のすごさ故であり、真骨頂なのだと思わされるばかりです。

 

*  *  *

 

ここまで書き上げて思うのはただ一つ、「全然足りねえ」ということです。10曲で収まるわけがない。

スピッツの歌詞が難解で様々な解釈が存在するということは、ファンにとっては周知の事実であり、レビューや分析を書いた記事は無数に存在すると言っていいでしょう。実を言うと、もう語り尽くされたスピッツというトピックを今更自分が扱う必要もないだろうと、これまでは今回のような記事を書くことについては二の足を踏んでいました。

しかし、新譜リリースとサブスク解禁が重なって盛り上がる中、やはりいてもたってもいられなくなりました。こうして記事を書かせていただける場があるなら、もうやるしかないだろうと、自分の言葉で書き残すしかないだろうと、そういう使命感に似たものを抱き、突き動かされるようにキーボードを打った結果が、これです。

僕のスピッツ愛は伝わったでしょうか。さらに深く語りたいという気持ちもありますが、今回はこの辺で。また別の機会に自分なりの考察を書くかもしれません。

ああ、明日スピッツがいなきゃ、困る。

おすしたべいこ