初心者のためのシューゲイズ講座 【Slowdive 前編】

初心者のためのシューゲイズ講座 【Slowdive 前編】

こんにちは。三度の飯より靴を見る、おすしたべいこです。

シーンの主要バンドを紹介し、シューゲイザーの魅力をお伝えする不定期連載「初心者のためのシューゲイズ講座」。
これまでMy Bloody ValentineとRideを紹介してきましたが、今回はいよいよSlowdiveについてです。例によって前後編に分けてお送りします。

 

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神秘性をまとった『Just For A Day』(1991)

『Just For A Day』ジャケット

1989年、イングランドのレディングにて、友人だったニール・ハルステッド(Vo. G.)とレイチェル・ゴスウェル(Vo. G.)が中心となりSlowdiveが結成されました。ニック・チャップリン(Ba.)、クリスチャン・セイヴィル(G.)、サイモン・スコット(Dr.)と現在の顔ぶれが揃った1990年にデビュー。解散までに3枚のアルバムをリリースしますが、1991年にリリースした1stアルバムが本作です。

My Bloody ValentineやRideなど、同時代にクリエイション(当時隆盛を極めたインディー・レーベル)からデビューしたシューゲイザー・バンドたちと比べると、その違いは歴然でした。彼らはやがてアンビエントなサウンドを志向するようになりますが、その傾向はこの頃から既に見られました。幾重にも重ねられたギターは妖しげなうねりを生み出し、ヴォーカルは揺蕩うように流れていく。その様は、まさにバンド名をそのまま表しており、非常に神秘的です。全体的に物悲しい雰囲気がアルバムを支配しており、長い雨季の中に閉じ込められているかのようです。

初期の代表曲”Catch The Breeze”。
これは当時の公開収録の映像(だと思われるもの)。キスをするカップルの映像を随所に挿入する謎演出はさておき、ダイナミックな演奏の様子を楽しめます。終盤のギターの轟音は圧巻。

 

シューゲイザーとアンビエントの中間地点『Souvlaki』(1993)

『Souvlaki』ジャケット

2ndアルバム『Souvlaki』(スーヴラク)は数曲にブライアン・イーノをプロデューサーとして迎えて制作されました。その影響もあり、随所にアンビエントの要素が感じられます。とは言え、シューゲイザー特有の幻想的な部分もしっかり提示し、解散前の3作の中では最も「バランスの取れた」作品と言えるのではないでしょうか。伸びやかなレイチェルのヴォーカルは目眩がするほど美しく、まるで楽器の一部かのよう。

アルバムの冒頭を飾る”Alison”のMV。
アンビエント由来のアブストラクトとシューゲイザー由来のサイケデリアが見事に融合した名曲。彼ら特有の寂寥感に満ちた音像には更に磨きがかかっています。

 

ミニマルかつアンビエントな『Pygmalion』(1995)

『Pygmalion』ジャケット

3rdアルバムとなる本作では、前作でブライアン・イーノから受けた影響がダイレクトに表面化し、完全なアンビエント・サウンドへとシフトしました。ギターの轟音は完全に鳴りを潜め、単純なフレーズを反復するミニマルかつ浮遊感溢れるサウンドを展開。その音像は、シューゲイザーが持つ幻想性を極限まで突き詰めたものとも言えます。アルバム全体を覆う虚無感からは、ある種の諦念の境地のような趣さえも感じます。

収録曲”Crazy For You”。
2018年のKEXPでのライブ映像ですが、原曲よりもかなりシューゲイザー寄りのアレンジになっています(個人的にはかなり好きです)。繊細かつダイナミックなパフォーマンスは必見。

 

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『Pygmalion』リリース後、バンドは解散します。ニールとレイチェルはMojave 3を結成するなど、メンバーはそれぞれの場で活動を継続していくことになりました。それから長い時を経て、2014年に再結成。後編では、2017年にリリースした22年ぶりとなるアルバム『Slowdive』に迫ります。

おすしたべいこ