おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年1月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年1月】

今年から、月ごとに特に良かった作品をレコメンドする記事を執筆することになりました。完全に個人的なセレクトになりますが、よろしければお付き合いください。今回は2020年1月分。年明け早々素晴らしい作品が多く、この先2020年がどうなるのか本当に楽しみです。

 

Deserta – Black Aura My Sun

ペンシルヴァニア出身のポスト・ロック・バンド Saxon Shore(サクソン・ショア)の中心人物、マシュー・ドーティーによるソロ・プロジェクト Desertaが始動。バンドではダイナミックかつ繊細なアンサンブルを聴かせていましたが、このアルバムではバンドに通底していた美意識をより突き詰めたような印象。SlowdiveやCocteau Twinsが混ざり合ったような耽美的な音像は、極めて4AD的な儚さに満ちています。夢の深部へと誘われたいあなたへ。

 

Ringo Deathstarr – Ringo Deathstarr

言わずと知れた現行シューゲイザー・バンドの代表格 Ringo Deathstarrの5年ぶり、満を持してリリースされたセルフタイトル作。本来のリリースは2月5日ですが、1月末の来日に合わせてライブ会場で先行発売されるほど親日家の彼ら。今作も1曲目から彼らにとって思い入れのある土地を冠したその名も”Nagoya”から始まるなど、日本のファンにとっては特別に嬉しいポイントも。サウンドはこれまでのリンゴらしい力強さを感じながらも、全体的により耽美的な傾向に。彼らがシーンの寵児として華やかに登場してから久しいですが、今作は特に成熟したアンサンブルが詰まっており、自分たちを再定義するような気概に溢れた力作と言えるのでは。

 

sleepy.ab – fractal

北海道出身、20年以上の活動歴を誇るポスト・ロック・バンド sleepy.ab(スリーピー)の7年ぶりとなる最新アルバム。アート志向の強いサウンド・デザインが特徴の彼らですが、今作も独特なギター・ワーク、流麗なアレンジとメロディ、時に奇怪に暴れるアンサンブル、浮遊感のある美しいヴォーカルが展開され、そこへエレクトリックなビートが合わさることで高い中毒性を生み出しています。真っ白な雪景色の中で一人で佇んでいるような、あるいは一点の曇りもない星空に放り出されるような…そんな風景がありありと浮かんできます。傑作です。

 

Base Ball Bear – C3

私小説的な歌詞世界を展開したギター文学アルバム『C』(2006年)、時代に疑問を投げかけブラック・ミュージックに接近した『C2』(2015年)を経て、「Cシリーズ」は思いがけず3作目に突入。『C3』はギター・ドラム・ベースのみでベボベの現在地を描き切り、スリーピースとしての確固たる矜恃を鮮やかに浮かび上がらせています。さらに磨きがかかった詞作もさることながら、これまで以上に「自分語り」するドキュメンタリー的なアプローチなど新たな一面も。今やシンボル・マークである電波塔は3人を繋ぐ鉄壁の三角形に生まれ変わりました。常に「新しいポップ・ミュージック」を鳴らしてきた彼らの新たな出発点がここにあります。

 

 

GEZAN – 狂(KLUE)

いや本当に、凄まじい作品ですね。全曲BPM100で展開されるGEZANの最新作。このアルバムを正確に語ることができるのはもっと未来の話だと思うのでやめておきます。今言えることは、もしあなたが何かに悩んでいるとしたら、この作品の中に突破口となるヒントがあるのかもしれないし、もしあなたが日々何かの違和感を覚えているとしたら、その正体が分かるかもしれない、ということでしょうか。とにかく体感して欲しい。本当の意味で「オルタナティヴ」な音楽が閉じ込められた、正しく踊り狂うためのサウンド・トラック。

 

tricot – 真っ黒

まだメジャーじゃなかったの?!と純粋に驚いてしまう、そんな彼女たちのメジャー・デビュー・アルバム。インディーズの時点で既に確立されていた複雑なアンサンブルは健在。変わらないままメジャーへと躍り出る痛快さたるや。意味のあるような無いような歌詞も相変わらず。実はそのバランスが絶妙で、取っ付きにくそうに見えて実は日常にスッと溶け込むような柔軟さを持っているバンドだということを再認識できる。…とまあゴタゴタ言ってますが、とにかくかっこいいです。ここへ来てジャケットが「真っ黒」なのも、「何にも染まらず全てを飲み込んでいく」という彼女たちなりの意思表示のようにも思えるのは深読みが過ぎるでしょうか。

おすしたべいこ