おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年1月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年1月】

今年から、月ごとに作品をレコメンドする記事を執筆する運びとなった。完全に個人的なセレクトにはなるが、しばしお付き合いいただければと思う。今回は2020年1月分。年明け早々素晴らしい作品が多く、この先2020年がどうなるのか本当に楽しみだ。

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Deserta – 『Black Aura My Sun』

Label – felte
Release – 2020/01/17

ペンシルヴァニア出身のポストロック・バンド、サクソン・ショアの中心人物として知られるマシュー・ドーティーによるソロ・デビュー作。バンドではダイナミックかつ繊細なアンサンブルを展開していたが、今作はバンドに通底していた美意識をより突き詰めたような印象。

スロウダイヴやコクトー・ツインズが混ざり合ったような耽美的な音像は、違うレーベルながら極めて《4AD》的な儚さに満ちている。夢の深部へと誘われたいあなたへ。

Ringo Deathstarr – 『Ringo Deathstarr』

Label – Club AC30 / Vinyl Junkie Recordings
Release – 2020/01/29

いわずと知れた現行シューゲイザー・バンドの代表格、リンゴ・デススターの5年ぶり、満を持してリリースされたセルフタイトル作。本来のリリースは2月5日だが、1月末の来日に合わせてライブ会場で先行発売されるほど親日家の彼ら。今作も1曲目から彼らにとって思い入れのある土地を冠したその名も「Nagoya」から始まるなど、日本のファンにとっては特に嬉しいポイントも。

サウンドはこれまでの彼ららしい力強さを感じながらも、全体としては耽美的な傾向に。彼らがシーンの寵児として華やかに登場してから久しいが、今作は特に成熟したアンサンブルが詰まっており、自分たちを再定義するような気概に溢れた力作と言えそうだ。

sleepy.ab – 『fractal』

Label – Chameleon Label/nem records
Release – 2020/01/29

北海道出身、20年以上の活動歴を誇るロック・バンド、sleepy.ab(スリーピー)の7年ぶりとなる最新アルバム。アート志向の強いサウンド・デザインが特徴の彼らだが、今作も独特なギター・ワーク、流麗なアレンジとメロディ、時に奇怪に暴れるアンサンブル、浮遊感のある美しいヴォーカルが展開され、そこへエレクトリックなビートが合わさることで高い中毒性を生み出している。

真っ白な雪景色の中に1人で佇んでいるような、あるいは一点の曇りもない星空に放り出されるような--そんな風景がありありと浮かんでくる作品。

Base Ball Bear – 『C3』

Label – DGP RECORDS
Release – 2020/01/22

私小説的な歌詞世界を展開したギター文学アルバム『C』(2006)、時代に疑問を投げかけブラック・ミュージックに接近した『C2』(2015)を経て、<Cシリーズ>は3作目に突入。

『C3』はギター、ドラム、ベースのみでベボベの現在地を描き切り、スリーピースとしての確固たる矜恃を鮮やかに浮かび上がらせる。さらに磨きをかけた詞作もさることながら、これまで以上に「自分語り」するドキュメンタリー的なアプローチなど新たな一面も。今やシンボルマークである電波塔は、3人を繋ぐ鉄壁の三角形に生まれ変わった。常に「新しいポップ・ミュージック」を鳴らしてきた彼らの新たな出発点が、ここにある。

GEZAN – 『狂(KLUE)』

Label – 十三月
Release – 2020/01/29

本当に凄まじい作品だ。このアルバムを正確に捉えることができるのは、もっと未来の話なのだろう。今言えることは、もしあなたが何かに悩んでいるとしたら、この作品の中に突破口となるヒントがあるのかもしれないし、もしあなたが日々何かの違和感を覚えているとしたら、その正体が分かるかもしれない、ということだ。

とにかく体感してほしい。全曲BPM100で展開され、本当の意味で「オルタナティヴ」な音楽が閉じ込められた、正しく踊り狂うためのサウンド・トラックを。

tricot – 『真っ黒』

Label – cutting edge/8902 RECORDS
Release – 2020/01/29

まだメジャーではなかったのか…?と純粋に驚いてしまう、そんな彼女たちのメジャー・デビュー作。インディーズの時点で既に確立されていた複雑なアンサンブルは健在で、変わらないままメジャーへと躍り出る痛快さたるや。

メッセージ性とナンセンスを行き来する歌詞も相変わらず。そのバランスが絶妙で、取っ付きにくそうに見えて実は日常にスッと溶け込むような柔軟さを持っているバンドだということを再認識できる。ここへ来てジャケットが「真っ黒」なのも「何にも染まらず全てを飲み込んでいく」という、彼女たちの意思表示のようにも思えるのは深読みが過ぎるだろうか。

對馬拓