おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年2月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年2月】

先月から始まったレコメンド連載、今回は2020年2月リリース分をお送りする。筆者は特に邦楽の新譜をチェックすることが多いのだが、一方で最近は海外のポストパンクが良作続きで、個人的にもテンションが上がっている。もちろん、今月もシューゲイザーは抜かりなく紹介していく。

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羊文学 – 『ざわめき』(EP)

Label – felicity
Release – 2020/02/05

昨年リリースの『きらめき』と対になる羊文学の最新EP。夏の光を受けて乱反射する輝きや儚さを閉じ込めたのが前作なら、今作は羊文学に元々あった「危うさ」をより先鋭化したような印象を受ける。

1stアルバム『若者たちへ』のジャケットでは前面に押し出していた「顔」が傘の影に隠れているのが、毒っ気やシリアスなマインドにベクトルが向けられていることを暗示しているかのようだ。『ざわめき』というタイトルも絶妙。存在感と求心力を作品ごとに増していく塩塚モエカのヴォーカルは、もはや芸術の域。

Spangle call Lilli line – 『SCLL』(BEST)

Label – felicity
Release – 2020/02/05

日本が誇る美メロ・ポストロック、Spangle call Lilli line(スパングル・コール・リリ・ライン)による活動20周年を記念したオールタイム・ベスト。収録曲は全てリマスタリングが施され、最新のサウンドで彼らの軌跡を堪能できる。また、新曲として収録された「長い愛」は、作詞に福岡晃子(チャットモンチー済)が参加し、そのMVとジャケットにはヤなことそっとミュートの間宮まにを起用。

彼らの独自性を改めて浮かび上がらせつつ、新たな側面も垣間見ることができる逸品と言えるだろう。

Yppah – 『Sunset in the Deep End』

Label – Future Archive Recordings
Release – 2020/02/07

シューゲイザーからブレイク・ビーツまで自由自在に行き来するJoe Corrales Jr.のプロジェクトによる最新作。今作はエレクトロ・シューゲイズに接近した端正なサウンドを聴かせている。

「体温を奪われたボーズ・オブ・カナダ」「制御されたエイフェックス・ツイン」など陳腐な例えが浮かんでは消えていくが、その冷ややかなサウンドとは裏腹に独特な心地良さを纏ったアルバム。幾何学的かつグロテスクなジャケットも、一聴しただけでは核心までは触れることができない作品の不可思議さを示しているかのよう。

Tame Impala – 『The Slow Rush』

Label – Modular Recordings / Island Records Australia
Release – 2020/02/14

テーム・インパラ、待望の新作。「現行サイケデリック・ロックの最高峰」という謳い文句通り--いや、そんな言葉では収まらないほど極上の心地良さが溢れたサウンドが詰まっている。

曲と曲の繋ぎ方がとにかく絶妙で、さながらケヴィン・パーカーという名のDJによるプレイリストのよう。砂が部屋になだれ込むジャケットが示すように、聴く者の身体にゆっくりと染み込んでいくような、クセになるトリップ感覚が味わえる。何も考えずに浸りたい。

Mush – 『3D Routine』

Label – Memphis Industries
Release – 2020/02/14

リーズを拠点に活動するポストパンク・バンドのデビュー・アルバム。ウキウキなベースとニューウェーブを通過した軽快なギター、そして素っ頓狂なヴォーカルに思わず笑顔になり、気づけば何周もしてしまう--そんな妙な中毒性を孕んでいる。

本作のプロデュースはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートなどを手がけたことでも知られるAndy Savoursであり、彼の仕事がいかに信頼できるか、ということが垣間見える1枚。

Bambara – 『Stray』

Label – Wharf Cat Records
Release – 2020/02/14

ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するポストパンク・バンドの最新作。シーンの暗黒面を担うのは彼らだろう。

聴く者の体温をも奪うかのような冷徹極まりない音像と男の色気に満ちたゴス風味のヴォーカルが、思わず身を捩ってしまうほどクール。ダークサイドを疾走する、ヒリヒリとしたスリリングなアルバムだ。

對馬拓