おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年2月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年2月】

先月から始まったレコメンド記事、今回は2020年2月リリース分をお送りします。僕は邦楽の新譜をチェックすることが多いのですが、最近は海外のポスト・パンクが良作続きで個人的にテンションが上がっております。もちろん今月もシューゲイザーは抜かりなく紹介します。

 

羊文学 – ざわめき

昨年リリースの『きらめき』と対になる羊文学の最新EP。夏の光を受けて乱反射する輝きや儚さを閉じ込めたのが前作なら、今作は毒っ気やシリアスなマインドにベクトルが向けられた作品でしょうか。そういった羊文学に元々あった「危うさ」をより先鋭化したような感触があり、1stアルバム『若者たちへ』のジャケットでは前面に押し出していた顔が今回は傘の影に隠れているのもどこか暗示的で、『ざわめき』というタイトルも絶妙。存在感と求心力を作品ごとに増していく塩塚モエカのヴォーカルは、もはや芸術の域です。

 

Spangle call Lilli line – SCLL

日本が誇る美メロ・ポスト・ロック、スパングル・コール・リリ・ラインによる活動20周年を記念したオール・タイム・ベスト。収録曲は全てリマスタリングが施され、最新のサウンドで彼らの軌跡を堪能できる逸品です。こんなバンドはスパングル以外に存在しない、という事実を再確認できることでしょう。新曲として収録された”長い愛”は、作詞に福岡晃子(チャットモンチー済)が参加し、そのMVとジャケットにはヤなことそっとミュートの間宮まにが起用されるなど、バンドの新たな側面を垣間見ることもできます。

 

Yppah – Sunset in the Deep End

シューゲイザーからブレイク・ビーツまで自由自在に行き来するJoe Corrales Jr.のプロジェクトによる最新作。今作はエレクトロ・シューゲイズに接近した端正なサウンドを聴かせています。「体温を奪われたBoards of Canada」「制御されたAphex Twin」などと陳腐な例えが浮かんでは消えていきますが、その冷ややかなサウンドとは裏腹に独特な心地良さを纏ったアルバムです。幾何学的かつグロテスクなジャケットも、一聴しただけでは核心までは触れることができない作品の不可思議さを示しているかのよう。

 

Tame Impala – The Slow Rush

テーム・インパラ、待望の新作。「現行サイケデリック・ロックの最高峰」というメディアの謳い文句通り…いや、そんな言葉では収まらないほどの極上のサウンドが詰まっています。曲と曲の繋ぎ方がとにかく絶妙で、さながらケヴィン・パーカーという名のDJによるプレイリスト。砂が部屋になだれ込むジャケットが示すように、聴く者の身体にゆっくりと染み込んでいくような、クセになるトリップ感覚が味わえます。何も考えずに浸りたい。未来のAOR(※注1)が、ここにもあった。

 

Mush – 3D Routine

リーズを拠点に活動するポスト・パンク・バンドのデビュー・アルバム。ウキウキなベースとニュー・ウェイヴを通過した軽快なギター、そして素っ頓狂なヴォーカルに思わず笑顔になり、気づけば何周もしてしまう…そんな妙な中毒性を孕んでいます。本作のプロデュースはMy Bloody ValentineやThe Pains of Being Pure at Heartなどを手がけたことでも知られるAndy Savoursであり、彼の仕事がいかに信頼できるかということがよく分かります。

 

Bambara – Stray

ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するポスト・パンク・バンドの最新作。聴く者の体温をも奪うかのような冷徹極まりない音像と男の色気に満ちたゴス風味のヴォーカルが、思わず身を捩ってしまうほどクールです。ダーク・サイドを疾走するヒリヒリとしたスリリングなアルバム。

 

※注1:FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』の帯コメント「(前略)神だらけの世に放つ、未来のAOR」から引用

おすしたべいこ