おすしたべいこ的マンスリーレコメンド 【2020年3月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド 【2020年3月】

東京はいよいよ春ですが、この所どうにも穏やかではない日々が続いております。皆様、元気にお過ごしでしょうか。

今、音楽業界が危機に晒されている中で、「自分に何が出来るのだろう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。僕も毎日のようにライブの延期や中止のニュースを目にしながらあれこれ考えるのですが、やはり「音楽を好きでい続けること」「音楽を聴き続けること」が大きな力に繋がっていくと僕は信じています。そして、僕の拙文もその助けになることがあれば幸いです。

 

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クマリデパート – サクラになっちゃうよ!

Maison book girlやZOCが所属していることでも知られるekomsが送り出すアイドルグループ、クマリデパートの最新シングル。表題曲”サクラになっちゃうよ!”はサクライケンタ氏が作詞・作曲・編曲全てを手掛けており、どこか初期の彼女たちを彷彿とさせる雰囲気のある正統派な楽曲ですが、4人の歌唱力は比べ物にならないほどグレードアップしていることをつくづく実感します。それにしても、ブクガの楽曲と同じ人が作っているとは信じ難い振り幅。

そして、今回特筆すべきなのはカップリングの”ネコちゃんになっちゃうよ〜”(まずタイトルのインパクトが強い)でしょうか。初期のアーバンギャルドを連想させるチップ・チューン風のイントロから始まり、EDMやK-POP、フューチャー・ベースなど様々な要素が詰め込まれ、「ネコちゃんになっちゃうよ〜」という掛け声でブレイクに突入するという仕上がりの1曲です。「笑顔と幸せを届ける」というグループのコンセプトをまさに十二分に体現しており、今後新たな代表曲となっていくのではないでしょうか。

2月のワンマンライブでは新メンバー2名がお披露目されるなど、今後もクマリデパートからますます目が離せません。

 

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Yawners – Just Calm Down

スペイン出身のギター・ポップ・バンド、ヨーナーズの最新作。作品のリリース自体は2019年ですが、国内盤の流通が3月からということで、今回ここで紹介します。このバンドの魅力を誤解を恐れずに一言で表すなら「頭を空っぽにして聴ける」でしょうか。90年代〜00年代のポップ・パンクやパワー・ポップを彷彿とさせる、どこか懐かしいサウンドと疾走感がたまらなく気持ちいい。春を通り越して気分は夏です。

余計なことを考えずにひたすら音楽に身を任せて踊りたくなる時だってある。そんな時にヨーナーズがいてくれるのは、とても嬉しいことであり、幸せなことでもあると思わずにはいられません。

 

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春ねむり – LOVETHEISM

ポエトリー・ラップで世界的な評価を得る春ねむり、2年ぶりの新作。全7曲30分未満という短尺ながら、その密度には目を見張るものがあり、全て聴き終えた時のカタルシスを何度も体験したくなる求心力があるアルバムです。ヒリついたギターのリフレインと切実な言葉たちが胸に迫り、聴き手に必ず何かしら爪跡を残す。それがきっと彼女なりの愛なのだろうと思います。「愛よりたしかなものなんてない」のだから。

 

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downy – 第七作品集『無題』

実に3年半ぶり、オリジナル・メンバーであるギタリスト・青木裕の逝去後初のリリースとなった最新アルバム。先行シングル”砂上、燃ユ。残像”をはじめ、青木裕が遺したギター・サウンドがフィーチャーされた楽曲を収録したという意味で、また新メンバー・SUNNOVAを迎えたという点においても、downyの大きなターニング・ポイントとなった作品と言えます。

徹底的に計算されパズルのように構築されたサウンド・プロダクションには一切の隙がなく、これはトラックメーカーとして確かな腕を持つSUNNOVAが大きく貢献したもの。フロントマンの青木ロビンは今作で「プログレ」的なサウンドを志向したそうですが、まさにそのヴィジョンを理想的な形で実現することに成功しています。とてつもない集中力の果てに繰り出される緊張感に溢れたバンド・アンサンブルに耳を傾けていると、いつの間にか輪廻の果てへと旅立ってしまいそう。震えて聴くべし。

 

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Las Kellies – Suck This Tangerine

アルゼンチンはブエノスアイレス出身のポスト・パンク・バンド、ラス・ケリーズの最新作。ジャキジャキ鳴らされるギターとダンサブルなビート、そして清楚な女性ヴォーカル。ニューウェイヴやポスト・パンク、サイケデリック・ロックなどの要素を良い塩梅で混ぜ込み、踊れる音楽として提示したアルバム。特にリズムの面で、どこかTalking Headsの『Remain in Light』に通ずるものもあるように感じます。

 

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サニーデイ・サービス – いいね!

彼らは今年の1月、深い悲しみを滲ませたシングル”雨が降りそう”をリリースしましたが、大工原幹雄を新メンバーとして迎えて発表された『いいね!』は一転してポジティブなパワーを振りまく作品に仕上がりました。切ないイントロで幕を開ける”心に雲を持つ少年”から始まり、”時間が止まって音楽が始まる”で静かにエンディングを迎える様は、さながら35分間のショート・ムービー。

どこまでも瑞々しく躍動感に溢れたサウンドは、再び「バンド」として出発する喜びに満ちています。季節としての「春」はさることながら、バンドとしての「春」をも余すことなく体現した快作であり傑作です。バンドは生き物であり、サニーデイは生まれ変わった。個人的に、2020年の大本命と言えるアルバム。

おすしたべいこ