おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年4月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年4月】

早いもので4月も終わる。このご時世、どこかへ気軽に出かけることもできず、今ひとつ春の訪れを実感できない。

しかし、巣ごもりせざるを得ないこの状況は、決してマイナス面ばかりではないだろう。家にいる時間が格段に長くなった今、新しい音楽を見つけることがこれまで以上に大きな楽しみになっている方もおられるはずだ。今月も心躍るような新譜が多々リリースされたが、今回はその中からシューゲイザー、ドリームポップ周辺を中心に紹介していく。

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Peel Dream Magazine – 『Agitprop Alterna』

Label – Slumberland Records / Tough Love Records
Release – 2020/04/03

NY出身のインディーロック・バンド、ピール・ドリーム・マガジンの2ndアルバム。先行シングル「Pill」ではマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン直系の浮遊感を提示してきたかと思えば、ロケットシップや初期ステレオラブの再解釈的サウンド、あるいはクラウト・ロックの要素を織り交ぜた音像なども展開し、彼らの実験的な姿勢が垣間見える作品に仕上がっている。

とはいえ、ジャングリーなサウンドを聴かせていた1stアルバムを受け継ぐような、ポップなエッセンスも忘れない。微睡む昼下がりに合いそうな、なんとも気怠げなムードも最高。

RAY – 『Pink』

Label – DISTORTED RECORDS
Release – 2020/04/24
(※フィジカルでのリリースは5月23日)

「圧倒的ソロ性」と「“アイドル×????”による異分野融合」をコンセプトに活動するRAYの1stアルバム。彼女たちの代名詞ともいえるシューゲイザーを中心に、エモやメロディック・パンク、激情ハードコアといった90年代を彷彿とさせるサウンドが詰め込まれた作品だ。ジャケットもライドの『Nowhere』へのオマージュだろう。

作家陣にはお馴染みの夏bot(For Tracy Hyde)、ハタユウスケ(cruyff in the bedroom)をはじめ、エリオット・フレイザー(Ringo Deathstarr)、今村寛之(The Florist)など豪華な顔ぶれが参加し、粒揃いの楽曲を収録。アイドルがシューゲイザーを歌うことの必然性を改めて感じることのできる作品となっている。

Hazel English – 『Wake UP!』

Label – Polyvinyl / P-VINE
Release – 2020/04/24

カリフォルニアを拠点に活動するシンガーソングライター、ヘイゼル・イングリッシュの1stアルバム。2017年リリースの『Just Give In / Never Going Home』は2枚のEPをコンパイルしたものであり、完全なフルレングスとしては今作が初。

ベッドルーム・ポップだった『Just Give In〜』に対して、今作はレコーディング・スタジオでセッション・ミュージシャンと共に制作された。これまでのドリームポップの感触は残しつつ、ルーツとなる60年代の要素を織り交ぜ、彩度を増したサウンドを展開。その変化は、鮮やかなヴィジュアル・イメージにも端的に現われている。

Kensei Ogata – 『Things I Know About Her』

Label – Self Released
Release – 2020/04/16

ケーブル製作やレコーディング・エンジニアとしても活躍するKensei Ogataの2ndアルバム。2012年リリースの宅録アルバム『Her Paperback』以来となる本作は、バンド・アレンジで再構築された『Her Twinkle Eyes』に代表されるように、多彩なゲストを迎えたことで肉体性を増した楽曲郡を収録。曇り空も吹き飛ばすような、眩しい音像に溢れたギターポップ・アルバムに仕上がった。

初期スピッツのような無邪気さもそこかしこに見え隠れする。アナログを意識した、淡く儚げな色彩のジャケットのデザインも素晴らしい。

Ellis – 『Born Again』

Label – Fat Possum Records
Release – 2020/04/03

オンタリオ州ハミルトンを拠点に活動するシンガーソングライター、Linnea Siggelkowによるソロ・プロジェクト、エリスのデビュー・アルバム。プロデューサーにスネイル・メイルやソランジュなども手掛けるJake Aronを起用した本作は、『Born Again』というタイトルが示している通り、音楽を通して自己を見つめる内省的な作品となっている。

いわゆるドリームポップをサウンドの基調としながらも、あくまで中心にあるのは彼女の歌声。その美しいヴォーカルとメロディから、Linnea Siggelkowという1人の人物の内面が浮かび上がってくるかのようだ。

Ferri-Chrome – 『from a window』

Label – TESTCARD RECORDS
Release – 2020/04/02

Mica FlakesやShortcut Miffy!などの活動でも知られるクロゴメ率いる新バンド、Ferri-Chrome(フェリ・クローム)のデビュー作。マスタリングはKensei Ogataが担当。RideやTeenage Fanclubといった90年代のシューゲイザー/ギターポップを想起させる、青空に吸い込まれていくようなサウンドが心を掴んで離さない。

たった5曲ながら透き通る歌声と疾走感に撃ち抜かれる、あまりにもエヴァーグリーンな作品。ちなみに、本作レコーディング後にはeureka(For Tracy Hyde)が加入している。

對馬拓