おすしたべいこのマンスリーレコメンド 【2020年6月+私的上半期ベスト】

おすしたべいこのマンスリーレコメンド 【2020年6月+私的上半期ベスト】

2020年もあっという間に上半期が終わりを迎えます。

決して穏やかではない半年間でした。じっと耐えているうちに時が過ぎ去ってしまったような感覚で、少し寂しくもあります。

下半期はどうなっていくのでしょうか。何か好転することはあるのでしょうか。

そんな淡い期待を込めて、マンスリーレコメンドの6月分を公開します。今回は記事の最後に「私的上半期ベスト」も掲載しました。2020年の半期決算です。

 

Khruangbin – Mordechai

テキサスのスリーピース・バンド、クルアンビンが2年ぶりとなる3rdアルバムをリリース。バンド名はタイ語で「空飛ぶエンジン=飛行機」を意味します。

これまで彼らはインスト・バンドとして活動してきましたが、今作では大部分の楽曲でヴォーカルを導入しています。その作風の変化の裏には、ベースのローラ・リー嬢の体験にあるそう。楽曲制作に行き詰まる中、彼女は「Mordechai(モルデカイ)」という名の父親がいる見知らぬ家族と共にハイキングに行ったことで悟りを開き、そこから生まれ書き留めておいた言葉をもとにアルバムを完成させたというのです。

いかにもクルアンビンらしいエピソードですが、それを踏まえて本作を聴くと、音楽が持つ「根源的な何か」と接触しようとするスピリチュアルな雰囲気を感じられるかもしれません。

ローラが紡ぐ言葉に加え、ツアーで訪れた西アフリカ、パキスタン、韓国など、様々な土地の音楽的要素が盛り込まれたサイケデリックかつグルーヴィーなサウンドは、まさに極上の一言。ダブのリズムと空間系の音作りがどこまでも心地良く、至極の飛行体験が約束されたアルバムです。

 

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EASTOKLAB – Fake Planets

名古屋を拠点に活動する4人組、EASTOKLAB(イーストオーケーラボ)の最新作。リリース当初はデジタル配信のみでしたが、CDが欲しいという要望を受け、7色展開の透明ケースが目を引くフィジカル・アイテムとしてもリリースされました。

シューゲイザーやドリーム・ポップ、ビート・ミュージックなどから影響を受けたサウンドを鳴らす彼らですが、今作ではこれまで以上に躍動感のあるギター・プレイを展開。そこへ日置逸人(Vo. Syn. G.)が紡ぐ言葉が加わることで、日常に潜む喪失感を浮き彫りにしながらも、その先にある希望からは決して目を逸らさない強さがどこまでも美しい作品です。

 

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MASS OF THE FERMENTING DREGS – You / うたを歌えば

スリーピース・バンド、「マスドレ」による2年ぶりのリリースとなった7インチ・シングル。宮本菜津子(Vo. Ba.)のソロ活動やメンバーチェンジを経て、明るく風通しの良いアルバムとなった復活作にして会心作『No New World』。その路線を踏襲し、宮本の伸びやかな「うた」が浮かび上がる2曲を収録しています。

鮮やかなジャケットのイメージ通りの開放感に加え、マスドレらしいタフなアンサンブルも健在。オルタナティヴ・ロック直球のギター・サウンドには痺れます。

 

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Sonic Boom – All Things Being Equal

Spacemen 3の創設メンバーであるピーター・ケンバーによるソロ・プロジェクト、ソニック・ブーム。同名義の作品としては『Spectrum』以来、実に30年ぶりとなります。

「自分が携わった全ての作品、アーティストから多くの事を学んだ。そしてそれらをこのアルバムに集約した」と彼が語る今作は、シンセサイザーの不可思議なサウンドやドローン・ミュージック、そしてひたすら繰り返されるフレーズや呪文のような歌詞に支配されており、聴けば聴くほど精神世界の魔宮から抜け出せなくなるような感覚に陥ります。サイケデリック・ミュージックを牽引してきたピーター・ケンバーがたどり着いた、まさに一つの「境地」。

 

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ハルカトミユキ – 最愛の不要品

ハルカとミユキによるユニット、EPとしては4枚目となる最新作。少し毒っ気のある歌詞やシリアスなギター・サウンドなど、彼女たちのこれまでの「らしさ」を感じさせつつ、その音像はイギリスでのインプットの旅を経てワールド・ワイドな視点が加わったことで、新たな到達点にたどり着いたことが確かに告げられています。

シューゲイザー的とも言えるギター・ノイズから始まり、スクラッチやエレクトロニックなビートなど、様々なアプローチから魅せる5曲を収録。「これをダサいと言われようがなんの後悔もない(ハルカ談)」という言葉通り、広い視野を手にしたことでとにかく好きだと思うことを自由に表現し、理想的なアウトプットに成功した充実作となっています。

 

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Maison book girl – Fiction

ニューエイジ・ポップ・ユニット、通称「ブクガ」がキャリア初のベスト・アルバムをリリース。本来であればリリースは4月の予定でしたが、コロナの影響で延期。6月になって無事リリースを迎えました。

代表曲を網羅するというベスト盤のマナーは守りつつ、その内容は初期の楽曲のリレコーディングとリアレンジ、ライブで披露していたマッシュアップ曲”river”の音源化、新曲となる”Fiction”と”non Fiction”の収録、そして全楽曲リマスタリング(新曲除く)という充実ぶり。

今作で初めてブクガの音楽に触れるリスナーからすれば困惑してしまうようなトリッキーな仕掛けもチラホラ忍ばせ、単なるベスト盤とは一線を画しているのは明らか。ブクガの「現在地」を彼女たちならではのこだわり方で提示した作品と言えるでしょう。

 

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2020年 私的上半期ベスト TOP16

さて、最後に僭越ながら、この場をお借りして「私的上半期ベスト」なるものを発表させていただきたいと思います。基本的に「邦楽」「洋楽」という言葉(区切り方)は好きではないのですが、今回は分かりやすく、あえて日本と海外からそれぞれ8枚ずつ順位をつけ、計16枚としてみました。皆様の上半期ベストはいかがでしたか?

2020年 私的上半期ベスト <JP>

1. サニーデイ・サービス – いいね!
2. tricot – 真っ黒
3. Base Ball Bear – C3
4. 羊文学 – ざわめき
5. downy – 第七作品集『無題』
6. 春ねむり – LOVETHEISM
7. sleepy.ab – fractal
8. THE NOVEMBERS – At The Beginning

2020年 私的上半期ベスト <Overseas>

1. Khruangbin – Mordechai
2. The Bilinda Butchers – Night and Blur
3. Tame Impala – The Slow Rush
4. Ringo Deathstarr – Ringo Deathstarr
5. Deserta – Black Aura My Sun
6. Peel Dream Magazine – Agitprop Alterna
7. Ellis – Born Again
8. Yawners – Just Calm Down

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