おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年11月】

おすしたべいこ的マンスリーレコメンド【2020年11月】

時期外れの暖かさに心が弾んだ矢先、急激な寒気に襲われたりなど、例年以上の寒暖差に身体が悲鳴を上げそうな今日この頃。ウイルスの猛威は留まることを知らず、何かと翻弄される日々が続いている。この状況下において、音楽は私たちに寄り添ったり、苦難を逆手に取ったりもする。11月は特に、そんなことを考えさせられた。

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polly – 『Four For Fourteen』

Label – 14HOUSE.
Release – 2020/11/04

宇都宮出身の4人組ロック・バンド、polly(ポーリー)の2ndアルバム。自主レーベル《14HOUSE.》の設立後、初となるフィジカル作品。

前作『FLOWERS』でTHE NOVEMBERSの小林祐介と制作を共にし、バンドとして成長したという彼ら。さらに過去曲のリアレンジなども通して改めて自身を見つめ直し、ありのままの感情を赤裸々にさらけ出せるようになった。それは越雲龍馬(Vo. Gt. Pg.)の柔らかいヴォーカルや言葉にも現れており、「ヒカリ」や「点と線」といった楽曲は、これまでのpollyでは生み出せなかった渾身の作品といえるのではないだろうか。

偽りのない鋭い言葉で切り込むダウナーな「残火」、性急なビートで掻き立てる「CREA」など、インダストリアル・ロック〜ポストパンクあたりのサウンドを大胆に取り入れているのも新しく、閉塞感のあるこの時代ともマッチしている。まさに、2020年におけるドキュメンタリーのようなアルバムだ。

※筆者がSleep like a pillowで行ったインタビュー記事も公開中。
pollyが『Four For Fourteen』で鳴らす、本来の音楽 越雲龍馬インタビュー

Le Volume Courbe – 『Fourteen Years』(EP)

Label – Honest Jon’s
Release – 2020/11/13

フランス人フィメール・シンガー、シャルロット・マリオンヌことル・ヴォリューム・クールブの新作EP。フィジカルは10インチでのリリース。

過去の作品ではマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズやコルム・オコーサク、プライマル・スクリームのマーティン・ダフィなど、錚々たる顔ぶれが名を連ねてきたが、今作では近年彼女が参加しているハイ・フライング・バーズからノエル・ギャラガーとのコラボレーションが実現し、ダニエル・ジョンストンの「Mind Contorted」をカバーしている。

基本的にアンビエント色の強い音響フォークを鳴らしていた前作のカラーを受け継いでおり、癌の化学療法中にレコーディングしたという「MRI Song」からピアノの旋律が印象的な「Planet Ping Pong」の流れは思わず呼吸を忘れるほど美しい。闘病を乗り越えた生々しい痕跡さえも感じ取れるようだ。Maison book girlの『yume』にも通ずるような、どこまでも深遠な音響世界が広がっている。

Dry Cleaning – 『Scratchcard Lanyard』(SINGLE)

Label – 4AD
Release – 2020/11/19

サウス・ロンドン出身のポストパンク・バンド、ドライ・クリーニングによる最新シングル。これまで2枚のEPをリリースしてきたが、満を持して《4AD》と契約し、本作は移籍後初のリリースとなる。

ポストパンクの風を受けてカラカラに乾いたギターとベース、ポエトリーリーディングようなヴォーカル。そして前衛的なMV。軽率だと分かっていても、「Sonic Youthの再来」という謳い文句にも頷ける。

コクトー・ツインズやラッシュなどの耽美的なイメージが根強い4ADだが、近年のグライムスやベッキー・アンド・ザ・バーズらと共にレーベル・カラーを刷新する重要な存在として、今後も注目すべきだろう。いよいよアルバムへの期待も高まる。

クレナズム – 『eyes on you』

Label – MMM Records
Release – 2020/11/18

福岡出身の4人組ロック・バンド、クレナズムの新作ミニアルバム。これまで通りシューゲイザーからの影響を感じさせるギター・サウンドは随所に残しつつ、解放感の中に毒を忍ばせた「ひとり残らず睨みつけて」や、サビでうねるシンセ・サウンドが印象的なエレクトロ・シューゲイザー「眩しくて」など、新境地的なアプローチも楽しい。

しかし本作のハイライトは、やはりラスト2曲だろうか。アフター・コロナへの切実な祈りを込めた「エピローグまで」。これまでの楽曲の中で最も制作に時間を費やしたという「365」。折れそうになりながらも不確かな未来への確かな眼差しを逸らさないその姿に、1人でも多くの誰かが勇気づけられることを願いたい。

アーバンギャルド – 『アバンデミック』

Label – 前衛都市
Release – 2020/11/25

トラウマテクノポップ・バンドこと、アーバンギャルドによる10thアルバム。マスクを前面に押し出したアートワークや『アバンデミック』というタイトルが示すように、新型コロナウイルスのパンデミックをモチーフとしながら、「マスクデリック」「映えるな」「バンクシーの恋人」など、シニカルな言葉で世相を捉えた楽曲が並ぶ。

アーバンギャルドはこれまでも一貫して「病的な現代社会」に少女を通した視点で切り込んできたが、よもや本当の病気が世界を変えるほど蔓延することになるとは、当の本人たちも想像していなかっただろう。しかし、混迷を極める社会が人間の汚点を暴きつつある今こそ、彼らのウィットに富んだ音楽の存在意義はより強固なものになった。コロナ禍において、むしろアーバンギャルドが奏でるニューウェーブ・サウンドは気温の低下と乾燥を味方につけて感染力を高めたウイルスのように、実に生き生きとしているようにさえ感じるのだから--。

なお、収録曲『神ングアウト』のMVには、Maison book girlの矢川葵(筆者の推し、ここ重要)も出演。彼女がアーバンギャルドのMVに出演するのは「平成死亡遊戯」以来2度目となる。どう考えても観るべし。

死んだ僕の彼女 – 『shaman’s daughter』

Label – n_ingen record
Release – 2020/11/11

ノイズポップ・シューゲイザー・バンド、死んだ僕の彼女の新作ミニアルバム。2021年公開予定の映画『シャーマンの娘』のコンセプト・アルバムとして制作され、同映画の劇中歌とエンディング・テーマも収録されている。

新作のリリースとしては『hades(the nine stages of change at the deceased remains)』以来、実に5年ぶり。バンド初の劇伴という意味において、キャリアの中でも特に重要な位置を占める作品と言えそうだが、ノイジーなシューゲイズ・サウンドと極度に低体温なヴォーカルはそのままで、変わらぬ存在感を見せつけている(それもそのはず、監督からは「自然体で作ってほしい」という意向があったというのだ)。

また、Moon In June、My Lucky Day、kiwiなど、今年リリースされた国内シューゲイザー・バンドの作品を数多く手掛けているKensei Ogataが、本作のエンジニアとして参加。かねてより彼が死んだ僕の彼女のファンだったことを踏まえると、その感慨深さは想像に難くない。こうした世代を超えた繋がりが5年ぶりのカムバックを支えたと知れば、より胸が熱くなるというものだ。

「rebirth and karma」のMVも是非観ていただきたい。終盤でバッドを振り回すシーンは、バンドの狂気的なイメージを端的に表現している。

※musitではインタビュー記事も公開中。こちらも是非。
死んだ僕の彼女、5年振りの新作『shaman’s daughter』リリースで見えたバンドの在り方

對馬拓