【インタビュー】どうしようもないものと戦い続ける──the scentedが描く「言葉にできない何か」

【インタビュー】どうしようもないものと戦い続ける──the scentedが描く「言葉にできない何か」

シンガーソングライターとして活動していたミヤ(Vo. Gt.)によるバンド形態のソロ・プロジェクト、the scented(ザ・センテッド)。2021年に始動、「芳しい」「香りがする」といった意味を持つ形容詞“scented”を掲げ、同年『sent』『scene』と2枚のEPをリリース。ほぼ固定のサポート・メンバーと共に精力的なライブ活動を展開している。

抽象的な歌詞と、耳に残る特徴的なヴォーカルが描き出す景色は、確かに聴覚以外の部分にも訴えるものだ。そしてパンデミックやSNSでのいざこざなど、何かと生きづらさを感じる我々にとっては一筋の光のようにも感じるかもしれない。轟音と、その中に宿った切実さ、誠実さを鳴らすようなthe scentedのパフォーマンスを観ていただければ、きっとその意味が分かるだろう。

musitとthe scentedの関係も丸2年が経過しようとしている。始まりは2021年の初め頃、ミヤから送られてきた1通のメールだった。当時はthe scentedが動き出して間もない頃で、筆者もその名を知らなかったのだが、「今度リリースする1st EPの記事を掲載してほしい」という旨が丁寧な文面で綴られており、試しに音源を聴いてみると──途端に惹き込まれてしまった。以降、記事の執筆だけでなく、個人的にライブへ足を運んだりもしていたのだが、2022年より『musitTV』が始動。「the scentedにも出演してほしい」と想い続け、Vol.4にして実現するに至った。

本稿は、その『musitTV』収録前に実施したメールインタビューとなる。既に一部は動画配信時に「出演アーティスト紹介」と題して公開していたが、今回は未公開部分と当日のライブ写真も含めたフルバージョン。是非、動画と併せてチェックしていただきたい(ほか2組も順次公開)。そして、今回の写真や映像で何か感じるものがあれば、生のライブも目撃してほしい。「痛み」をアーカイヴし、この時代に足跡を刻もうとするthe scentedの旅は、まだ始まったばかりだ。

インタビュー/文=對馬拓
写真=井上恵美梨

musitTV サポート・メンバー

佐々木理久(Gt.) – the pullovers
鴨下支音(Ba.) – asayake no ato / さよなら眼乱こりぃ
あべゆうま(Dr.) – nhomme / YKCM

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1. the scentedは、2021年1月というコロナ禍の真っ只中で活動を開始しました。元々ミヤさん自身はミュージシャンとして活動されていたかと思いますが、the scentedとしてサポート・メンバーを迎えて活動を始めた経緯を教えてください。

20歳という節目を迎えた時、「ミヤとして何がしたいか分からない」と言われたことがあったんです。それまで、なんとなくSSWだから「音源出して企画して定期的にライブして」といった固定概念に囚われていて。いざ自分が今何がしたいのか考えた時に出た答えがバンドだったんです。でもバンドを組みたかったわけではなかったのでサポートという形を取りました。

2. “the scented”というプロジェクト名が意味するように、“匂いのように記憶に残る音楽”、つまり“聴覚以外の部分にも訴えかけるような楽曲制作”をポリシーとしているのが、とても素敵だなと感じています。このようなコンセプトになったきっかけをお聞きしたいです。

私の尊敬するアーティストの楽曲に匂いと記憶について歌ってる曲があって、そこからインスピレーションを受けました。私自身単純にそう体験して今でも覚えてる部分があるので、the scentedの楽曲でもそうなってくれたら嬉しいなという単純な理由です。

3. 2021年3月にリリースされた1st EP『sent』は、コロナ禍やSNSで殺伐とした、まさにこの時代をきっかけに感じた/生まれた「痛み」を、ミヤさんなりに音楽としてパッケージした作品だと感じました。制作はどのように進んだのでしょうか。

楽曲は私の弾き語りから生まれました。そこからメンバーで集まって、各々考えてきた音を合わせて完成させていった感じです。サポートメンバーそれぞれ自分の色を持ってるし今でも進化し続けているので、今ライブでやってる『sent』の楽曲たちは音源とは全然違うかもです。

4. 「明滅」はthe scentedとして初めて世に放たれた楽曲でした。〈指を咥えたまま ただ観ていた 今はどうしようもないことばかり〉というフレーズは、一見後ろ向きに思えて、「観ていた」という過去形や「今は」という前置きから、「これからの未来はどうしようもないことをどうにかしていきたい/していける」という自らを取り巻く状況を変えたい強い気持ちを感じます。この楽曲に込めた思いについて教えてください。

musitさんは私より楽曲のこと理解してて本当にすごいですw その通りですね。やっぱりどうしようもないことって世の中にはたくさんあって、それは子供だとか大人だとかそういう理由のものではなくて。それぞれ自分の位置で感じることがある。でもそれを考えて終わらせるのか、ただ諦めるのか。どうしようもないことをどうするか、そこを考えるのが大切なんじゃないかと思います。そうもがく様子が点滅する光のようで、「明滅」と名付けました。

実は一度だけミヤ名義の時にthe scentedのメンバーで「明滅」をライブでやったことがあったんです。その時にこのメンバーでthe scentedをやりたいと思って、Gt.りくとエド(カメラマン)に朝までその話をしました(Ba.鴨下もいたけど酔い潰れていた)。なので本当の意味でthe scentedの始まりの曲でもあります。

5. どちらかと言えば内省的だった1st EPに対し、2nd EP『scene』は一歩、二歩進み、より先を見据えたような作品となっている印象です。1stを経て2ndへ向かった際のマインド、及び制作の経緯を教えてください。

2作目はthe scentedの違った側面をただ見せたかった。「過ぎる」とかは、Gt.りくが持ってきてくれたコードからできた曲だし、制作の部分でも新たな側面がある作品になったなという。でも根底は変わらず、聴いてる人たちと一緒に考えていけるようなEPになったと思います。

6. 初めて「海」を聴いた時、1サビ終わりのギター・ソロ、2番Aメロの性急なドラムなどいくつも聴きどころがあり、ライブ映えもするキラーチューンだと感じました。疾走感も相まって〈ただひたすら走る 淘汰される 前に〉というラストのフレーズにもグッときます。ミヤさんにとって、この楽曲はどういった存在でしょうか。

先の見えない未来にただ漠然とした不安と恐怖、言葉にできない何か。そういうものが常に付き纏っていて、私自身もどうしようもないものと戦い続けてます。その中でも少しでも進めるように、何か吹っ切れるきっかけになるように、バンドにとっても自分にとっても一歩踏み出した楽曲になってると思います。

7. 活動開始からもう少しで2年が経過します。musitでは活動初期から追いかけていますが、とがる、downt、kurayamisaka、國、colormalなど、インディー・シーンで頭角を現すバンドとの対バンも数多く重ね、着実に実力をつけてきている印象です。サポート・メンバーもほぼ固定ということもあり、馴染みのメンバーと場数を踏んできたことで、制作面やパフォーマンス面で何か変化などはありましたか。

パフォーマンス面では、最近自分たちを客観的に見てくれる人が増えて、ライブを見つめ直すきっかけができました。ライブを楽しむのが私たちのモットーですが、何よりお客さんに一番伝わる形で楽しみたいので、お客さんにどう聴こえてるか、音響の部分を再構築してます。

制作面では、新たに挑戦していることがありますが、私がなかなか上手くいかず、、もう少し様子見です。

8. the scentedとして活動を続けていく上で、特に大切にしていることはありますか。何か信念や信条のようなものがあればお聞きしたいです。

先程もお伝えした通り、ライブを楽しむことです。そして、ライブに関わる全ての人に感謝を忘れず活動していきたいと思ってます。

9. 『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。

the scentedの始動ワンマンですかね。the scentedを始めるにあたって何かインパクトがあることをしたくて、配信は無料でワンマンをやりました。初めてのライブなので観客なんて集まるのか、ほぼ賭けだったので一周回って楽しめた記憶があります。

10. 『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。

私はアニメや漫画ですかね。この二つは日課です。そこから出会う音楽もあるし、誰かが創造してそこに感動がある。単純にそれが好きなんだと思います。

昔、漫画家さんにCDのジャケットを描いてもらったことがあって、念願だったので今でも忘れられません。音楽と様々なカルチャーを掛け合わすという点は、私にも通じるものがあるなと感じます。

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RELEASE

the scented『scene』

リリース:2021/11/21
レーベル:Self Released

トラックリスト:
01. 海
02. 残像
03. 過ぎる
04. 終焉

*配信リンク:https://linkk.la/thescented_scene

對馬拓