【Branch Vol.1:Playback】Cwondo / Jan flu / Pot-pourri / butohes @新宿NINE SPICES

【Branch Vol.1:Playback】Cwondo / Jan flu / Pot-pourri / butohes @新宿NINE SPICES

昨年12月、musitが主催するライブイベント『Branch』が新宿NINE SPICESにて行われた。出演はCwondo / Jan flu / Pot-pourri / butohesの計4組に加え、動画コンテンツ『musitTV』で司会を務める仲川ドイツと高橋まりな(ふつかよいのタカハッピー)が本公演でも各組の演奏後にマイクを持ちステージに登場。2人は各出演者の音楽的ルーツに迫るほか、4組とも2022年に作品をリリースしていることから各々の制作背景を掘り下げフロアを沸かし、アーティスト、観客と共に他のライブイベントでは類を見ない奇跡的な一夜を作り上げた。ここではmusit編集部によるアーティストのプロフィールと共に当日のライブ写真を掲載し、本イベントの模様を振り返っていきたい。

文=musit編集部
写真=井上恵美梨

* * *

1. Cwondo

文=星野

No Busesのフロントマン・近藤大彗のソロ・プロジェクト=Cwondo(読み:コンドウ)。No Busesで展開される楽曲とは対照的に揺蕩うようなアンビエント調やエレクトロニックを主体とし、異国の情緒を纏う繊細な音楽世界を独自の手法で表現。その背景にはmusitで公開したメールインタビューでも明かされている通り、自身の根底にある「飽くなき音楽愛」が詰め込まれており、2021年のソロ活動開始以降は驚異的な創作スピードで次々音源を発表。また現在も新たなアルバムの制作只中で、昨年末にはリリース前の最新作から「Baby Kasutera」「Minuma No Yujin」を先行解禁した。

昨年秋に実施したメールインタビューをきっかけにコンタクトをとるようになったCwondo。2022年の彼の活動はバンド/ソロ共に目まぐるしく、5人体制のNo Busesとして果たしたフジロック出演は今改めて振り返っても感動的な光景だったと思うし、幾多のライブ活動の中でもフジロックのおよそ一週間前、渋谷WWWで行われたCwondo / MINAKEKEE / Luby Sparksの対バンイベントは三者三様に時代を象徴するミュージシャンとしての矜恃がうかがえる身体性に富んだライブパフォーマンスだったと記憶している(実は編集部で観覧していた)。

本イベントでも2022年にリリースした楽曲を中心に奇想天外なセットリストで観客を沸かす。踊るように、跳ねるようにDJセットを弄りながら確かな高揚感の先へと連れていくパフォーマンスに息を呑む反面、最小限に声量を抑えたMCには彼自身の人間らしさも垣間見るようでついクスリと笑ってしまう場面もあったが、おそらく彼の中では音楽の中に他者との会話が含まれているのだろうと思った。

中でも奥行きのあるビートが心地好く感じる「Twwen」〜古風でフォーキーなメロディが耳に優しい「Kochi」へと繋ぐ流れは秀逸で、トップバッターとしての役割を十二分に果たしてくれた。

演奏後のトークではハイテンションなMC2人を前に若干緊張した面持ちを浮かべつつも「常に曲は頭の中でも作り続けている」と明言。次作も程遠くない未来でのリリースとなることを示唆し、ステージをあとにした。

Setlist

01. Hoyoy
02. Sarasara
03. Humidii
04. Twwen
05. Kochi
06. Baby Kasutera
07. Visiting Grandma
08. Windo
09. Somewhere
10. 1500
11. Midori

Twitter:@cwondo_
Instagram:@cwondo_

3rdアルバム『Coloriyo』:https://tugboat.lnk.to/Cwondo3rdAL

2. Jan flu

P.Nekobayashi(Vo. Gt.)
Kubo(Gt.)
Junya(Ba.)
Takuro(Dr.)
ヤマガタユウダイ(from Looisbos)※Support

文=星野

4人組サーフポップ・バンド、Jan flu。Beach Fossils直系のサイケ、ドリームポップ、ポストパンクとジャンルを縦横無尽に行き交う多彩な音楽性は、例え初見であってもすぐさまステップを踏みたくなるような内側に秘めた衝動を呼び醒ます。昨年8月には2枚目となるフル・アルバム『Discoveri ch.』をリリースし、昼夜問わずコンスタントにライブ活動を展開、また1月には下北沢THREEにて初のワンマンも実施。アルバムごとに憑依する役柄を変えるユニークなセンスも相俟って、タフネスに富んだ気鋭の存在に本年もさらなる期待が高まる。

動画コンテンツ『musitTV』Vol.3にも出演した時の演奏風景に魅了され、収録日以降星野が個人的にライブハウスへ遊びに行っていたJan flu。ある日のBASEMENT BARでのイベント時、中抜けして煙草休憩をとっていたところを捕まえ本企画へさらっとオファー。すると、フロントマンのP.Nekobayashi(Vo. Gt.)から即座に「行けますよ!」と二つ返事で承諾され思わず拍子抜けした。なんてフットワークの軽いバンドなんだ…信頼しかない。

この日は途中からサポートメンバーの「ガッタマン」ことヤマガタユウダイ(Looisbos / Dr. Vo.)を迎え、4人が織り成すアンサンブルにシンセとタンバリンで応戦。musitTVでは動画の構成上2曲のみの演奏だったが、今回は40分間の長尺セット。緻密に作り込まれたストーリーラインで観る側が飽きないよう工夫を凝らしながら、エッジの効いたトラックを次々に放ち広野を駆ける犬の如くステージを駆け回る。

序盤ではJan流のローファイ・サウンドが一際目立つ「Fishing」や「Invisible beach, and the skying」で観客の身体をゆったりと揺らし、前作『Sports』からリード曲の「Lacrosse」を披露。既に汗が滴るメンバーらの熱気はやがて会場全体にも漂い充満し、会場は常夏のビーチスポットに。

まるで彼らのパフォーマンス姿を比喩するような「Doggg runnn」以降はお得意のアッパー・チューンへと雪崩れ込み、最後まで観客の心をガッチリと掴んだ。

Setlist

01. Fishing
02. Invisible beach, and the skying
03. Lacrosse
04. Doggg runnn
05. Cheetah king
06. Red smoke
07. Koala club
08. Beaver creek
09. Peacock dance
10. Hedgehog spin

Twitter:@Jan_flu
Instagram:@jan_flu_official

2ndアルバム『Discoveri ch.』:https://friendship.lnk.to/DiscoveriCh

3. Pot-pourri

Sawawo(Vo. Gt.)
Shibasaki(Ba.)
Taro(Dr.)
Ryo Nagai(Programming)

文=對馬拓

アブストラクト・ポストパンクを標榜する4人組、Pot-pourri(ポプリ)。バンド・サウンドの大胆な解体と、緻密かつ繊細なエディット感覚で心象風景を描き出す。2022年5月には、スーパーカーの『HIGHVISION』などを手掛けた益子樹(ROVO)がマスタリングを担当した2ndアルバム『Diary』をリリース。歴史的文脈へのリスペクトとその再編集力によって、プログレ、ポストロック、アシッド・フォーク、エレクトロニカなど様々な音楽的素養が、整然としたコラージュのように提示される。

少し内部事情を説明すると、先に3組の出演が確定し、あと1組の調整で難航していたのだが、「Cwondo / Jan flu / butohesと組み合わせると面白そうなバンド」という観点からPot-pourriの名前が浮上。加えて、對馬の個人的な希望(2022年の上半期ベスト・アルバムに『Diary』を入れていたのだ)もあってオファーに至り、快諾いただいた。

結果、出演者の中では唯一、musitとは直接関わりのなかったバンドとなったが、フロアに良い作用をもたらしてくれたことは疑いようがないだろう。ヴォーカル/アコースティック・ギター、ベース、ドラム、そしてライブ・エレクトロニクスという特殊な編成で、特にリアルタイムで音が加工され出力されるライブ・エレクトロニクスの存在によって、彼らのアンサンブルには緊張感があった。それも寄与してPot-pourriは本イベントにおけるフックになったと共に、会場にいた我々の上司をも虜にした。

視覚的にはShibasakiの挙動が印象的で、演奏するでもなくベースを頭上高く持ち上げてそのまま静止したり、ヘッドをフロア側に向けてポーズを決めたりなどしており、Pot-pourriのカッティング・エッジなサウンドに華を添えていた。

2月にはDJまほうつかいこと漫画家・西島大介氏と、批評家・伏見瞬氏と共にトークを交えたイベントも開催。ジャンルやフィールドを軽々と超えていくようなバンドの姿勢が改めて窺えるが、ここからさらに飛躍するであろう彼らの次なる作品が今から楽しみで仕方がない。

Setlist

01. Diary
02. Papillon
03. Astra
04. Comic
05. Vertigo
06. Cerulean
07. 未発表曲
08. In Profile

HP:https://pot-pourri-official.tumblr.com/

Twitter:@potpourrijpn
Instagram:@pot_pourri_jpn

2ndアルバム『Diary』:https://songwhip.com/potpourri/diary

4. butohes

Michiro Inatsug(Vo. Gt.)
Kanju Inatsug(Gt. Cho.)
Naoto Fg(Ba.)
Kate Yonnesz(Dr.)

文=對馬拓

暗黒舞踏をバンド名の由来とする4人組、butohes(ブトース)。2021年6月にリリースされた1st EP『Lost in Watercycle』で、どこか低体温な音像と相反するようにテクニカルかつアグレッシヴなアンサンブルを聴かせ、たった1枚ながらシーンに躍り出た。昨年12月には久々の音源となったシングル「Pluto」をリリースしたことも記憶に新しい。生音ではリフレインの快楽と轟音の心地良さが際立ち、ライブ・バンドと化す一面も。メンバーで作詞も手掛けるFg(Ba.)は、musitでレビューや小説を執筆するほか、『バンドマン短歌』に参加するなど文芸方面でも活動している。

編集部2名が強く推しているバンドでもあったので、butohesへのオファーは『Branch』の企画段階から決定しており、イベントの準備もbutohesありきで進んでいった。出演順としてもトリを飾ってもらったが、まるで前3組のパフォーマンスと余韻を一手に引き受けたかのような熱のこもった演奏で疾走、その大役を堂々と果たしてくれたように思う。Michiroは序盤のMCで既に息を切らしていたが、そのことだけでもこの日の熱狂ぶりが伝わるかもしれない(ライブとは直接関係ないが、終演後にはMichiroのiPhoneが不慮の事故で大破損した)。

実は、この前日にもbutohesは新宿でSubsonic Eyeの来日ツアー・サポートとしてライブに出演していたが、『Branch』では初披露を含む未音源化の新曲を4曲も披露。おそらく年内にはリリースされるであろう新作が、より待ち遠しくなった。

チューニングの関係でセットリストから外されがちな「T.O.L」が1発目に演奏されたのもブチ上がった(少なくとも私は初めてライブで聴いた)。この楽曲に関するエピソードがなかなか面白いので、そういった解説が載ったセルフライナーノーツも是非読んでいただきたいところだ。

全45分のロングセット。フロアを熱狂させるには十分すぎた。むしろ、この音の波動にいつまでも揺られていたい、まだまだ足りないと強く渇望してしまう自分がいた。バンドの制作期間でセーブ気味だったライブも2023年は活発化するようで、既にいくつも出演が決まっている。今年はどんな景色を見せてくれるのだろう。というかbutohes、マジで売れてくれ!

Setlist

01. T.O.L
02. 新曲
03. 新曲
04. 新曲
05. 新曲(初披露)
06. Pluto
07. Aquarium
08. zero gravity
09. Hyperblue

Twitter:@butohes_japan
Instagram:@butohesgram

シングル「Pluto」:https://friendship.lnk.to/Pluto

Playlist

『Branch』で披露された楽曲を含む、全出演者(4組)のプレイリストも是非。

musit編集部