お猪口からブラストビート〜音楽愛溢れる日本酒ラベル〜

お猪口からブラストビート〜音楽愛溢れる日本酒ラベル〜

musit読者の皆様、はじめまして。

縁あって記事を書くことになりました、仲川ドイツと申します。
普段は東京の下町で酒販店の店長をやっております。
鈴木酒販小売部(三ノ輪本店):http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/hosoi/4501

それとごく稀に「DJ樹液」という名前でフリースタイルDJのようなものを小さくやっております。
なぜ「ようなもの」を付けるかというと、日本で一般的な他人様の音源を使う形式ではなく半分くらいは自分で録り溜めた音素材を使うからですね。あとアナログシンセで現地生産したりね。DJブースを狭くしてほかのDJをよく困らせます。

それと仲川ドイツって名前は本名ではありません。もちろん、ドイツ人でもありません。
バンドをやっていた頃の、いわゆる「also known as」ってヤツです。大してknownされてないけど。

と、そんな感じの私がお酒と音楽の素敵な関係をメインに書いていこうと思います。

ちょっと強引な所もあるかも知れませんが、寛大な心と強靭な肝臓でお読みいただければ幸いです。

音楽愛溢れすぎてるラベル

お酒といってもビール、ワインなどと色々ありますが、今回は「日本酒」にスポットを当てます。

ところでミュージシャンというと、お酒好きのイメージはありませんか? だからという訳ではないですが、ミュージシャンとコラボしたラベルの日本酒も沢山あります。ただ今回はそっち側ではなく、お酒の造り手側の音楽愛が溢れすぎちゃったってヤツを紹介していきます。

まずはこちら。

完全に飲み会時の写真でスミマセン…

日本酒好きでは知らない人はいないであろう超絶人気銘柄・新政の「Colors」シリーズ。

プログレ好きならピンとくる、キング・クリムゾンの1981年発表のアルバム『Discipline』のオマージュですね。

蔵元である佐藤祐輔氏は、ファンの中ではプログレ好きとして知られていますが、以前とある雑誌に佐藤氏の部屋が載っており、CD置き場にはビートルズやディラン、マイルス、ボーズ・オブ・カナダなどエレクトロニカ、大友良英etc…。多種多様な音楽を聴いているようです。また、TwitterではあのV系の源流に当たるSADISTICAL PUNKバンド・D’ERLANGERのファンだとも公言していました。でもそれ分かる。

この「Colors」シリーズは、異なる酒米(酒造好適米といって日本酒の醸造用に作出された稲の品種)で造られたエクリュ、ラピス、ヴィリジアンなど数タイプありますが、共通するのは13%前後(多くの日本酒のアルコール度数は15~18%)と低めのアルコール度数による軽やかな口当たり。そして味わいは果実のような甘くて程良い酸味を持った、フルーティーなタイプ。普段日本酒を飲まない方にも飲みやすいタイプと言えるでしょう。

続いてはコチラ。

澤田酒造の「HAKUROU(白老) For Survivor」シリーズです。

これはディスチャージのアルバム『Hear Nothing Say Nothing』のオマージュラベル。

他にはダイナソーJr.のオマージュなど現時点で全10種類。六代目蔵元・澤田氏が大好きなバンドのジャケットアートワークをモチーフに、酒蔵や地元・常滑市の圃場などの風景を落とし込んだラベルデザインです。素晴らしい。職業柄、数多くのお酒のラベルやパッケージを見ますが、少なくとも日本酒においてはここまでコアな音楽趣味を反映したラベルはないんじゃないでしょうか。しかもHCなロゴの缶バッジまで付いてきます! 完璧ですね。

さらに澤田氏のInstagramを見ていると、たまに鋲ジャン着ちゃってる。最高。このラベルデザインは単純にカッコイイので、元ネタのバンドを知らなくても買いたくなりますよね。そして元ネタも聴いてみたくなる。

お酒の特徴はというと「あらばしり」といって、お酒のもろみを絞った最初の方の工程に流れ出る部分のみを使っています。そして槽場直汲(ふなばじかぐみ。通常のお酒はもろみから搾ると一旦タンク等に入れてしばらく貯蔵しますが、この場合は搾ったそのままを瓶詰しています。そのため炭酸ガスが残っている点が特徴)なので発酵によって生まれる炭酸ガスも一緒に瓶詰めされています。口に含むとほのかに舌に乗っかる、ぴちぴちとした泡の感触が心地良い。

味わいは比較的ボリューム感がありながら(ざっくり言うと味が濃いということ)、雑味なくバランスよく仕上がっている( 「バランスが良い」というのはこの場合はプラスポイントなんですが、味わいのどこかの部分、例えば香りがものすごく良い、酸が立っている、非常にコクがある…といった何かに特化しているお酒がダメな訳ではありません。何事も好み、そして状況。音楽だってそうでしょ?)ので飲み疲れせずグイグイ飲めちゃう。ほのかな甘みと清涼感ある飲み口が相まって、お酒業界でよく使われる「大人のサイダー」という形容詞がぴったりの万能タイプ。

お酒を持ち寄るホームパーティーや、プレゼントに1番重宝するタイプですね。

そして最後はコチラ。

田中酒造店の「シャムロック・純米原酒無濾過生」。

ラベルを見て「おっ!」となったあなたはきっとアイリッシュ・パンク好き。

そしてこのお酒は裏ラベルに造り手からのメッセージが書かれていて、しかも数種類あるのですが、左と真ん中はザ・ポーグスファンにはグッとくるメッセージです。あ、右は『仮面ライダー』ファンがグッときちゃいますね。

このお酒の造り手(=杜氏)は盛川泰敬さんという方。この方の作るお酒は旨み/酸味の使い方が素晴らしい。特にこの「シャムロック」という銘柄は出す所は出して引くところは引く、といった味のメリハリがある。透明感があるから冷酒も良し、旨みがあるから燗ならなお良し。しみじみ美味いタイプです。

そうだな、音楽で言うとニュー・エイジ・ステッパーズのアリ・アップが歌う「Fade Away」のように、まずは哀愁のあるメロディを歌う幼いアリの声とのミスマッチの不思議な魔力にヤラれつつ、いつの間にか鉄壁のリズムセクションと暴力的なダブ処理に身を委ねてしまう感じと言ったらいいのだろうか。少し心の擦り減った大人に呑んでほしいお酒だと私は思います。ちなみにステッパーズは盛川氏と私の共通のフェイバリット。

それから、「Fade Away」が収録されているステッパーズの1stアルバムの8曲目。ヴィヴィアン・ゴールドマンという雑誌ライターの女性がヴォーカルなのですが、このヴィヴィアン女史という方、ニューウェーヴ/ポストパンクの歴史を紐解いていくと、何やらすごい功績を残した方のようです。彼女がいなければ生まれなかった楽曲もあったことでしょう。ただし裏方のため、途切れ途切れの情報しかありません。

が、しかし! 彼女はソロ名義で1枚だけシングルを出しています。A面の「LAUNDERETTE」は「Fade Away」と並ぶフィメールUKダブの至宝。プロデュースはなんと、パブリック・イメージ・リミテッドのジョン・ライドンとキース・レヴィン!

と、注釈のはずが最終的には私自身の音楽愛が溢れすぎてしまいました、スミマセン。

スミマセンついでに告知! といっても私自身ではありませんが。

2019年11月9日(土)私の酒屋仲間である、ふくはら酒店の田島くんが主催するハードコアパンクのイベントがあります。2番目に紹介した「澤田酒造 白老」もSAKEブースを出すようですよ。ヤバい音楽に最高の日本酒。

気になったあなたは是非! 私も暴れにいきます。

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POSITIVE DRINKING ATTITUDE Vol.2
2019.11.09(sat) at 小岩BUSH BASH
open 17:00/start 17:30
ADV:¥2300/DAY:¥2800 (+1drink order)

BAND
・経血 (from 水戸)
・マンホール
・DIGRAPHIA
・UNEQUAL REALITY (from 元祖長浜屋)
・RAW DISTRACTIONS
・SUN CHILDREN SUN (from 鶯谷)
DJ
・卍リョウ卍 (from ANIPUNK)
・足立武之 (from Kriegshög)
EXTRA SAKE BOOTH
・HAKURAW (澤田酒造 from 愛知)

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それではまた。

仲川ドイツ