音楽ライターとして自由に企画屋をしている鹿野水月（しかの みづき）です。平成のJ-POPとカルチャーの接続性について語る本連載、第6回目は今年20周年記念ライブが話題になった、平成アイドルの代表格・AKB48を取り上げてみたいと思います。
まず前提として、平成ではガラケーやiPhoneなどのデバイスの普及により、CDは「聴くため」ではなく「コレクションするため」のアイテムになりました。TSUTAYAを中心として、CD/DVDにおいてはレンタル文化が主流になったのです。そんなCD不況の中で、握手券と販売を組み合わせてJ-POPのマネタイズを再定義したのがAKB48でした。
ここでは、AKB48が積み上げた“AKB商法”とも呼ばれる平成の音楽消費の集大成を捉え直してみます！
 
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<div id="toc_container" class="no_bullets">INDEX<ul class="toc_list"><li><a href="#AKB48">“会いに行けるアイドル”を掲げたAKB48</a></li><li><a href="#CD">CDを「音源」ではなく「参加券」に</a></li><li><a href="#i">応援の制度化と倫理的な学び</a></li></ul></div>
<h2>“会いに行けるアイドル”を掲げたAKB48</h2>
AKB48は、秋葉原の専用劇場（AKB48劇場）を拠点に活動を開始し、当時“会いに行けるアイドル”というキャッチコピーを前面に打ち出していました。それまでのアイドルが、テレビ／雑誌／コンサートという精神的にも物理的にも“距離のある舞台”に存在していたのに対し、AKB48は劇場ライブや握手会などの仕掛けにより、日常の中で定期的に「会える存在」として認識されていました。
ここで重要なのは、単なる親しみやすさなどの心理的な近さが、音楽体験や音楽消費システムの一部に組み込まれていたという点です。
楽曲を聴く→CDを買う→ライブに行く→握手会でメンバーに会う。これらが分断されることなく、ひとつの連続した体験ないし消費システムとして設計されていたことが、AKB48の大きな特徴でした。
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<h2>CDを「音源」ではなく「参加券」に</h2>
AKB48のCD販売戦略の核心は、CDを音源ではなく参加券として再定義した点にあります（ここではこれを‘‘AKB商法’’と呼びます）。CDに付属する握手券や投票券は、 　
・推しメンバーに会う 
・推しの順位を上げる 
・物語に介入するための参加権
として機能しました。
ここでCDは作品としての価値よりも、“推し活の根幹となる行為を起動させるトリガー”として機能することになります。音楽の価値が音そのものではなく、体験／関係性に関わるメディアになったということです。
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<h2>応援の制度化と倫理的な学び</h2>
AKB48以前にも、複数枚イベント参加券を購入することや、推しへの（恋愛に近い）感情投資は存在していました。しかしAKB48はそれを、総選挙という制度によって可視化／数値化／正当化しました。CDを買うことは、単なる嗜好の表明ではなく、応援の意思表示になります。
一方で、2014年に握手会に参加していたアイドルとスタッフが負傷する傷害事件も発生。この事件によって、音楽業界は音楽を“関係性ビジネス”として拡張したときに生じる限界と責任も感じることになったのではないかと思います。
ただし、握手会や総選挙など応援の制度化が、音楽レーベルが抱えていたメディアの価値の再定義にもつながり、アジア圏を席巻するエンタメとして巨額の金額を動かしたことは、平成の音楽消費の集大成だったと言えるでしょう。
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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

星野

【SNS前夜、平成J-POPの話 Vol.6】AKB48のCD販売戦略は平成の音楽消費の集大成だった

1995年生まれ、編集者／音楽ライター。サウンド＆レコーディングマガジン編集部に3年間在籍後、plug+（ぷらぷら）のプロデュースやボカロZINE（ドワンゴ）の監修などを行う。現在、月刊雑誌アニメージュにて『耳がきゅんとするラブソングの話』連載中。

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【SNS前夜、平成J-POPの話 Vol.6】AKB48のCD販売戦略は平成の音楽消費の集大成だった

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